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第178話 魔力循環不全症の情報提供を行った

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今日は通常の勤務だが、午前中にヴェルドレイク様に会いに行く予定だ。魔道具作成の進捗を確認するのもそうだが、明後日にセントラカレン領の巡回助言を行うので、情報収集をする為だ。


ということで魔道具課の作業場を訪れると、ヴェルドレイク様がいた。図面をじっと見ている。


「セントラカレン様?今お時間宜しいでしょうか」


「……ああ、導師様ではありませんか!今年も宜しくお願いします。何用でしょうか」


「今年も宜しくお願いしますわ。実は、今度セントラカレン領に巡回助言に伺いますので、参考になることがないか伺おうと思いまして。やはり、事前に情報があると、助言の内容も正確性が高まりますので」


「なるほど。それは是非知って頂かねばなりませんね」


それから暫く、私とヴェルドレイク様はセントラカレン領の特性などについて話した。とりあえず私が知っていることをかいつまんで話し、そこにヴェルドレイク様が補足していった。基本的に、王都に隣接しているセントラカレン領は交通の要所で、国道が3本通っている。その関係上、流通が活発で、また、文化も最先端だ。王都は政治中枢だが、セントラカレンは経済中枢と言って過言ではない。


また、農作物の生産も盛んで、王都にも小麦や輸送できる野菜の多くを卸している。公府は馬車で朝出発すれば夕方には王都に到着するくらいの距離で、領内は魔物なども殆ど出ないと聞いている。アルカドール領とは違い、かなり都会な感じだ。


そこから、ヴェルドレイク様からは補足として、領内の作物の生産の状況や、主要な町や分領などの話を伺った。分領は3つあり、3つの街道をそれぞれ守るように配置されているそうだ。あと、精霊術士は1人いて、行政官夫人として公府に住んでいるそうだ。風属性らしい。会えるかどうかは解らないけど。


「非常に役立つ情報を教えて頂き、有難うございます」


「いえ、この程度、大したことはございません。そういえば、私も伺いたい事がございまして」


それから、護身用魔道具の話や、計算機に関する話などをした。楽しい一時を過ごさせて貰った。




午後には少々思う所があって、魔法研究所に顔を出した。とりあえず、所長に会いに行く。


「所長殿、今年も宜しくお願いしますわ」


「導師様、今年も宜しくお願いします。ところで、ご用向きは如何様なものでしょうか」


「ええ、実は魔力循環不全症という病気について伺いたいと思いまして」


「ほう、その病気であれば、専門家が共通研究室におります。ご案内しましょう」


所長に案内され、共通研究室に向かった。室長のアンダラット先生に挨拶して、専門家の室員に会わせて貰う。挨拶をして、話を聞いて貰うことにする。


「実は、私の知人が魔力循環不全症でして、詳細を伺いに来たのですわ」


「……ロイドステア内であれば……確か、アルカドール領では、アプトリウム子爵令嬢が患者の筈ですね」


「把握されているとは、流石ですわ。患者の特徴などはどのようになっているのでしょうか」


そこから、専門家の説明を受けた。基本的には貴族子女に見られ、現在患者は国内に10人いるそうだ。患者は魔力が殆ど循環せず、魔力操作を教えても循環の状態が変化しないばかりか、活性化させることも難しく、魔法が使えないらしい。


また、すぐに体調を崩し、幼少のうちに亡くなる人も多いため、まともに貴族として生きる事は難しいようだ。体調を崩す理由は、魔力量に比して循環する魔力が少なすぎるため、全身に魔力の滞留が起こっているのと同様の状態になり、強い倦怠感や抵抗力の低下が起こるからだそうだ。


根本的には、何らかの理由で魔力循環が妨げられているからであると予想されているものの、改善の方向性が見えず、対症療法として体力を付ける事、魔力操作を少しでも行わせる事を推奨しているというのが現状だそうだ。


「ご説明頂き、有難うございます。それで、ここからは相談させて頂きたい事なのですが……実は、先日アルカドール領に帰省した際、アプトリウム子爵令嬢の状態を見て、深く考えずに魔力循環を一旦正常な状態に戻したところ、それ以降は本人の魔力操作により、少しずつ魔力循環が正常化しているのです」


「何ですと?!一体どうやってそのようなことが?」


「私の魔力量は人より多いですし、全属性ですから、アプトリウム子爵令嬢の魔力と同調させた後、私の意志で体内の魔力を操作したのですわ」


「何と……確かに、魔力量に圧倒的な差があれば、そのようなことも理屈では可能でしょうが……して、アプトリウム子爵令嬢は、現在どのような状態でしょうか?」


「お聞きした限りでは、体調を崩す頻度は下がっているようですわ。魔力循環も、徐々に本来の魔力量に応じたものに戻りつつありますし」


「なるほど……一度正常な魔力循環に戻すことが、快方に向かう処方の可能性が高いですね」


「ええ、私もそのように見立てて施術を行ったのですが、後から病気であったという話を聞き、結果的には良い方向に進んでいるようですが、軽率だったと反省している所ですの」


「まあ、そういう見方もあるでしょうが、これまで誰も改善策を見出せなかったわけですから、専門家の端くれとしては、複雑な所ですな。ところで導師様。導師様はどのようにして、他人の魔力循環を確認したのでしょうか?通常は魔道具を使って測定するのですが」


「私は魔力の流れを、見えているかのように感じることが出来ますの。先生はご存知でしたわよね」


「ええ、魔法の授業の時に「魔力が見える」と言われた時は驚きましたよ。魔力の大きさを感じる者は魔導師には多いですが、流れが見えるとまで言う方は珍しいですからね。記録には残っておりますので、全くいないという訳ではありませんが……幼少時には既に見えていた、という方はいないと思いますよ」


「なるほど。導師様と我々では、見える世界が多少異なっている、ということでしょうな……。室長、アプトリウム子爵令嬢にお会いして、様子を確認させて頂きたいのですが、宜しいでしょうか」


「そうだな……あちらと連絡を取り、調整がつき次第アルカドール領に向かってくれ」


まあ、実際にリーズの状態を見て貰うのが早いだろうからね……。


「あと、導師様については、今後も魔力循環不全症の治療に、ご協力頂く可能性がございますが、宜しいでしょうか?」


「承りましたわ。ただ、現状ですと私用となりますので、可能であれば公務にして頂きたいですわね」


「承知致しました。私が大臣から許可を頂きましょう」


所長がそう言って、こちらでの話を終えた。他にもリーズのように苦しんでいる人がいるそうだし、手助けできるならしたいものだ。後は、地属性研究室などに顔を出した後、魔法省に戻った。




次の日、早速魔法研究所長が大臣の所に説明に来たので、私も一緒に大臣室に入った。大臣は私達にソファに座る様指示し、自身も向かいに座った。


「……また新しい発見でもしたのかね」


「発見……とは少し違いますが、重要な話ではあります」


そして、魔力循環不全症が、私の施術によって改善する可能性を報告した。


「何?それは本当ですか、導師殿」


「現在、私が施術した知人については、快方に向かっておりますわ。ただ、一度専門家に診て頂いて判断して頂くことになっております」


「そうですか……実は、我が領の部下にも、子息が魔力循環不全症の者がおりましてな。その話が本当であるならば、部下に確認してからになるとは思いますが、施術を依頼したいのです」


「私でお役に立てるのであれば、いつでもお受けいたしますわ」


「大臣、その件ですが、魔法研究所から導師様に正式に支援要請を出したいと考えております」


「なるほど。それならば公務として扱えるな。業務中でも問題なく施術できるわけだな」


「その通りでございます。また、万が一施術に失敗した場合でも、扱いが全く異なります故」


「確かに。導師殿に全ての責を負わせる類の話ではないからな」


そういえばそこまで考えていなかった。人の命を扱うのだ。慎重を期さねばならない。


「ところで所長、どのくらいで判断できそうなのだ」


「アルカドール領は遠いですからな。概ね1か月強、といったところでしょう」


「では、私が転移門でお送り致しましょうか?それならば、2週間もあれば結果が出るのでは?」


「おお、それは非常に助かります!大臣、宜しいでしょうか?」


「導師殿、申し訳ありませんが、宜しくお願いします」


このようにして、とんとん拍子で進んで行った。アプトリウム子爵やリーズと調整が出来次第、魔法研究所員数名を領に送ることになった。一応お父様に手紙で知らせておこう。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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