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第173話 水晶像の品評会に参加した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今日からドミナス分領に行く。水晶像の品評会に特別審査員として参加するためだ。お父様とお母様も特別審査員になっている。お兄様は審査員ではないが、勉強のため、視察に同行している。


ドミナスまでは、プトラムと同じくらい、約2日かかる。前回よりも使用人や護衛が多くなり、結構大所帯になっているが、まあ仕方がないだろう。万が一にも襲撃などがあってはならないので、私も精霊に頼んで警戒して貰っているし、結節では、お兄様も遠視を使って状況を確認しているようだ。


幸い、危険なことは無く、無事にドミナスまで到着した。今日と明日はドミナス分領太守であるオペラミナー子爵邸に宿泊する。こちらには子爵夫人やルカ達も年始と言うことで帰省しているのだが、ルカについては帰りに私達と一緒にセイクル市に戻り、私と一緒に王都に移動することになっている。


今日の所は、夕食を取って、休むことになった。そういえば、ルカの光魔法の習得状況はどうなっているだろうか……と考えていると、当のルカが私の使っている部屋に訪ねて来た。


「フィリス様、今宜しいでしょうか」


「あら、ルカ様、丁度私もお話ししたいと思っておりましたのよ」


「有難うございます。実は、光魔法について質問をしたいと思い、参ったのです」


その後、私はルカから光魔法の質問を受けた。どうやら火属性のエネルギーが、赤外線として放射されているから周囲が温かいのであって、熱そのものを伝えているわけではない、という理屈が今一つ理解できていなかったようだ。


「ルカ様、日の光を思い浮かべて下さい。当たると温かくなるでしょう?あれは光が当たることで力を吸収するから温かくなるのですわ。火属性の力から発する光も、同様なのです」


「……確かにそうですわね。そう考えれば何も不思議はありませんわ」


そう言って、ルカは光魔法を使ってみた。当然二人とも、サングラスを掛けてから試した。見た感じ、赤外線から可視光に、少し変える事が出来たようだ。その分光が強くなった。


「フィリス様、有難うございます。この調子で練習し、必ずや光魔法を使いこなして見せますわ」


この調子で頑張ってね。




朝食の後、品評会の会場である中央広場にやって来た。屋根が一時的に地魔法などを使って設置されており、雨が降っても大丈夫になっている。本日審査を行い、明日から3日間、一般公開され、併せて商談や出店なども設置される。新年のお祭りが引き続いたような感じかな。品評会の応募は、工房単位で行われ、最低1作品を出品する。複数作品の出品も可能だ。特に今回は初の品評会なので、多めに出品して貰う方針だったようだ。現在工房は15あるそうで、どこも2~3作品を出品していた。


「どれも素晴らしい作品で、選ぶのに苦労しますわね」


私が教え始めた頃に比べると、別次元の進化だ。今や、芸術家の一部がドミナスに移住し始めているという話は聞いているが、確かにこういう像を自分達で作れるなら、面白そうだ。


今回、お父様、お母様と私は特別審査員で、審査長はオペラミナー子爵、審査員は行政官の一人、商工組合ドミナス支部から3人、それと、王都などで水晶を取り扱っているネストイル商会の若旦那であるクライドさんもいた。クライドさんは、以前私付メイドだったメイリースの旦那さんだ。彼の尽力もあって、王都などでも水晶像は人気を博し、今では工房と直接取引を行う商会や貴族も増えているという。


さて、何人も審査員がいるから、私の場合は、芸術面は考慮せず、純粋に技術的な面のみで評価させて頂こう。お父様やお母様は、審査員として各作品を評価するのに集中している。お兄様は、作品を見るだけでなく、品評会の運営のやり方を聞いたり、工房にも足を運ぶ予定だそうだ。ルカが案内すると言って張り切っていたので、お任せしよう。




一旦全ての像をじっくり見て、全体のレベルを把握してから、それぞれの像の評価を始めた。私が見たところでは、2つの工房の技術は特に高く、他はさほど変わらないようだった。技術が高い工房のうち1つは、大きさが他より一回り大きいのに、それでいてしっかり作品として作り込んでいる。これは工房内の連携がとれ、特に火属性の魔法士がしっかりしていないと作れない。もう一つの工房は、大きさは他とほぼ同じだが、繊細な作り込みが、圧倒的だった。恐らく地属性の魔法士の技術が非常に高かったのだろう。その2つの工房の一番良い作品に最高評価である5点を付け、それ以外の同工房の作品に4点、他工房には3点を付け、集計係に提出した。


昼食の際、審査員の方々と会食をした。皆集計係に評価用紙を渡し、それぞれ感想を言っていたが、私が注目した2つの工房は、他の方も注目しているようだ。ちなみに、この時クライドさんから私に挨拶があった。メイリースが第2子を身籠ったらしいので、無事生まれたらまた会いに行ってみよう。幸せなようで良かったよ。




午後は集計と、表彰の準備が終わるまでは暇だ。表彰の際は、審査員毎に一言感想を述べる場があるらしいので、何を言うか考えておこう。どうせなら、為になることでも言ってみようかな。それなら、実物もあった方がいいだろう。時間もあるので、ちょっと工房を借りて、サンプルを作ってみよう。


サンプルを作り、異空間に収納して待機室に行き、暫く休んでいると、表彰式の案内係が来たので、お父様達とともに、入場した。工房の人達は既に入場し、整列していた。


特別審査員席に座って暫くすると、品評会運営責任者である商工組合ドミナス支部長から開式の辞があり、表彰式が開始された。団体部門上位3工房と、個人部門上位3作品が表彰される。まずは団体部門が発表された。上位の2工房は、あの工房だった。大きい作品を作った所が団体部門の最優秀だ。次に個人部門が発表された。2位、3位は先程の工房だったが、最優秀はあの素晴らしく作り込まれた像だった。

審査長であるオペラミナー子爵が表彰を行い、会場は大きな拍手に包まれた。


その後、審査員毎に感想が伝えられた。やはりそれぞれ独自の視点をもって評価していたようで、お母様などは、宝石としての観点……というか、光り具合だけで評価したらしい。確かに、そういった観点も必要か。ということで、私の番が回って来たので、拡声用の魔道具を持って話した。


『本日このような場にお招き頂き、大変光栄に思いますわ。まずは各作品を作られた方々、精霊杯作品審査長でありますオペラミナー子爵、運営責任者であります商工組合ドミナス支部長をはじめとした、この場を準備・運営された方々の努力と情熱に、敬意を表します。今回私は、技術面のみを考慮して評価致しました。作品を細部まで作り込むには、地魔法の使われる方の技量が必要です。それに、その場を整える火魔法を使われる方の気配りや、更には団体としての統制が必要となるでしょう。そういった点が、上位の工房や作品は優れていたと思います。今後も更に努力し、高みを目指して下さい』


ここで一区切り置いて、皆が私を見ていることを確認し、話を続けた。


『私が見た所、まだまだ発展の余地は大いにあります。ここで、私から2点の課題を出しましょう』


上から目線な表現だが、立場的にはこう言う必要がある。ここで、先程作ったサンプルを出した。


『これは、先程私が作った物です。大きさは皆様の作られた像より小さいですが、参考としてお譲り致しますわ。今回気になったのは、全て無色であった点です。この水晶像は、不純物を飛ばしてからある物質を少量含めると、この様に色を付ける事が可能です』


サンプルとして作ったのは、単なるバラだが、花弁や茎部分に、色を付けている。赤、黄色、紫のバラを作ってみた。赤は赤錆びの鉄粉、紫は黒錆びの鉄粉を入れると出来た。紫を冷やして再加熱すると黄色になった。茎や葉の緑は、赤錆びと黒錆びを同量混ぜると出来た。他にも色々やり方はあるだろうけれど。


『また、これは魔法の進歩に対応させる課題になりますが、昨年末論文が発表された重力魔法を、作る際に併せて使用しますと、より細部まで繊細に作れるようになります。是非、重力魔法を使用して作成してみて下さい』


重力魔法を使わないと、重力で歪むから、大きすぎる作品や、細かい造形の作品は作れないのよね……。ということで私の話を終えた。


表彰式終了後、3本のバラに似せた水晶と、着色の要領を書いた紙を商工組合ドミナス支部長に渡して、子爵邸にて宿泊したが、夕食の際に、セイクル市でお母様が重力魔法の普及教育をするという話が出て、ドミナスからも是非参加させたいと、子爵から要望があった。ドミナスの水晶像作成の技術は更に向上するだろう。




行きのメンバーに、更にルカを加え、ドミナスを出発した。ルカは私達と一緒にセイクル市に帰った後、魔法学校への入学準備をして、1月9日にうちに来て貰って、合流して王都に出発する。王都では、議員のお祖父さんの家に住むとのことで、荷物はあまりいらないそうだ。


帰りは、馬車の中でルカを交えて色々話をした。お兄様に色々質問していたが、これから魔法学校に入学する後輩になるわけだから、そういう意味では色々質問があっても当然……なのだが、あまり勉強と関係なさそうな話題も多かった。


まあ、行きよりかなり騒がしい道中になったが、無事に2日目の夕方にセイクル市に到着し、ルカの家までルカを送った後、私達は家に帰った。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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