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第016話 アルカドール侯爵家護衛 レイテア・メリークス視点

お読み頂き有難うございます。

とりあえずPVが0ではないので、一応独り相撲ではないようです。

宜しくお願いします。

私はロイドステア国軍騎士団所属、オズワルド・メリークスの娘として生まれた。小さい頃から父の背中を見て育ち、そのうち、自分も父の真似をしてみたくなり、剣を教わった。そして剣に夢中になり、自然と剣術を生かせる騎士を目指していた。


勿論、騎士になれる女性が少ないことは知っている。当然両親は反対したが、16才までに結果が出ない場合は、おとなしく嫁ぐことを条件に、10才で騎士学校の受験を許された。


何とか合格し、騎士学校に入学して必死に勉学や鍛錬に励んだ。ここで、それまではさほど感じなかった性別の差が大きく立ち塞がった。剣技では負けていないが、力でねじ伏せられてしまうようになったのだ。


私はそれに対抗するため、身体強化についても必死に鍛錬したが、相手も身体強化を使うわけだから、魔力量が秀でているというわけではない私が、体力差を埋められる筈もなかった。




学校を卒業は出来たが、騎士団への入団試験やトリセント警備隊への入隊試験は不合格だった。このままでは剣の道は閉ざされてしまう。焦る中、街の掲示板に専属護衛の募集を見つけ、すがる思いで応募した。応募者が5名いたため、雇用者であるアルカドール侯爵の屋敷に私を含む5名が集められ、1名を選ぶための試験が行われることになった。


会場である屋内鍛錬場にいたのは、応募者5名、アルカドール侯爵と護衛対象である令嬢、その他の者は、新たな同僚の選抜を見物する屋敷の護衛達だろう。令嬢は大変可愛らしく、女の私ですら一瞬見惚れてしまったのだから、他の応募者はさぞかし気合が入っただろう。とは言え、私も後が無いのだから、負けるわけにはいかない。


護衛の一人であるオクター・ファンケルさんから選定戦の説明があった。1対1の総当たり戦で、各1本勝負、戦闘不能にするか急所に剣を突きつければ勝利、使用武器は木剣、防具は自由、攻撃魔法は禁止、その他は審判であるファンケルさんの指示に従う、という内容だった。各自準備の後、選定戦が開始された。




選定戦の結果は惨敗だった。アンガス・クリードとクレリックス・ペントリアムには全く歯が立たず、ビリュース・レイバックには剣技では勝っていたと思うが、腕力ではじき返された。唯一、ドナルド・マクバーには勝利したが、素早いだけで軽い剣だった為、私でも対応できただけだ。


やはり、駄目だったのだ。


うなだれて令嬢の発表を聞いた……のだが、その時、自分の耳がおかしくなったのかと思った。まさか、自分が採用されるとは思わなかったからだ。ペントリアムが立場も考えず抗議したのは当然だろう。だが、令嬢の説明は、私や他の者を更に混乱に陥れた。彼女が戦い方を教えれば、私が強くなれる?何を言っているのだこの子は?


そのままの流れで、何故か令嬢が4人と同時に戦うことになった。あの小さな体では勝つどころか誰かに斬りふせられて終わりだろう、そう思いながら観戦したが、それが大きな間違いであることを見せつけられた。


何だあの子は?何故易々と攻撃を流せる?あの確実に急所を突く判断力と速度は何だ?結局、4人は令嬢に翻弄され、全員戦闘不能になった。正直、この子、護衛など不要では?と思ったのは、私だけではないだろう。


混乱する中、令嬢が私の所へやって来た。専属護衛を引き受けるかの意思確認だった。もし彼女の言う通りならば、私は、まだ、頑張れる。承諾以外の答えはなかった。




その後、お嬢様から今後使用する控室を案内され、その中で色々話したり、魔力循環を整える施術を受けたり、体操を習った。正直、自分がこれまで無理を重ねて来たことを実感するとともに、今後は自分に合った剣術を身に付けていこう、と、気持ちを新たにした。


私は、侯爵邸敷地内の使用人用集合住宅に住むことになり、ファンケルさんから護衛業務の概要を教わった。また、当分の間は、先輩護衛のエイシブさんと一緒に勤務することになった。その他、私が困っていると、皆さん色々助けてくれた。何故そんなに親切にしてくれるのか聞いたところ


「そりゃあお前さんを早く一人前の護衛にして、お嬢様を守って貰わないとな」


とエイシブさんに言われた。お嬢様は、先輩方から非常に人気があり、中には崇拝している人すらいるそうだ。エイシブさんは語った。


「最初は俺が誘ったんだ。えらく真剣な目で俺達の鍛錬を見ていたから、ちょっとからかってやろうと思ったら、逆に何度も転がされて、全く相手にならなかった。正直自信を無くしたよ。で、その件がきっかけでお嬢様も鍛錬に参加できるようになったんだが、それはもう嬉々として鍛錬してるのよ。見てるこっちが楽しくなる位にさ。で、対戦したりもするんだが、全然歯が立たねぇ。今まともに相手ができるのはファンケルさんくらいか?……何であんなに強いのかは正直知らんが、お嬢様だからなぁ」


「あれで剣術は、本人曰く見様見真似だそうですよ。あれ程までの才能を生かす場がないなんて、惜しいとしか言いようがありません。お嬢様が男性だったら良かったのでしょうがね……」


「まあ、そういう話もあるが、あんなに可愛い女の子が荒くれ男共を次々となぎ倒す様も痛快だぜ。自分がその一人になったら、世話無いんだがな。でも、対戦する時の、心底楽しそうな笑顔を一度見ちまうと、ついつい何度も対戦したくなるんだよな……」


エイシブさん、貴方もお嬢様崇拝者の一人なんですね。


「本当、意味不明な強さですよね、お嬢様は。本当に護衛がいるんですか?」


「まあお嬢様だって人間だから完璧じゃねえし、隙が出来ることもあるだろうさ。あと、お嬢様はあの美貌だし、聞いた話だと学問も魔法も物凄く優秀らしいから、どうあっても目立つ。今後は様々な場面で狙われる筈だ。男が入りづらい場所に行くことも増えるだろうし、お前さんが育ってくれると、正直有難いわけだ。頑張ってくれよ」


エイシブさんに励まされ、再び勤務に戻った。その後、先輩方が親切に教えてくれたこともあり、護衛勤務にも慣れて、お嬢様の専属護衛としての業務が始まった。


基本的には外出時に同行するだけなのだが、その際は執事的な業務もこなす必要がある。このため、お嬢様の予定と、必要な事項を事前に把握しなければならないのだ。だから専属の護衛が必要になる。


なので、家令のセバストリアさんや、お嬢様付女中のテルマーさんとの業務調整を密接に行っている。外出前には、御者の人達とも打ち合わせをする。特に、経路中に危険な場所がないか、最近の治安情報と照らし合わせ、確認を行っている。


このように色々準備したのに、あっさりと外出が終了してしまうと、ついつい、物足りなさを感じてしまう。本来喜ばしいことに対し、不謹慎な考えを持ってしまうのは、自分が現状に甘えている証拠だと思ったので、明確な目標を立てようと考えた。色々考えた結果、王都の武術大会に出場することを目標にした。




いつもの鍛錬の後、お嬢様と話す機会があった。どうやらお嬢様は、本当はもっと武術をやりたいところ、難しい立場であるため、思うように行かないことを不満に思っているようだ。そんな中で私が鍛錬に励むことが、お嬢様自身が活動しているように思えて嬉しいのだろうということが分かった。


また、私が自分の目標を語ったところ、大変喜ばれた。何だか護衛というより、弟子として見られている様な気もするが、これまでの人生で「剣の道を進む私」がこれほど必要とされたことは無かった。そう思うたびに、人生を捧げても良いと思える程に、気持ちが高揚する。


私は、フィリストリア様の騎士になりたい、そう強く思った。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


(石は移動しました)

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