第160話 海兵団への改善要望 4
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海兵団基地に来て2日目だ。朝食時に早速不埒な視線を向けられたので、威力を微小にしたレーザーを手に当ててやった。多少痛みを感じるか、軽いやけど程度の筈だ。やられた本人は、何をされたかは判らないだろうが。まあ、態度を改めなければ、徐々に威力を上げていく予定だ。
朝食後、カリータさんには精霊術士達の所で話を聞いて貰い、私は、案内係に案内して貰って、海兵団の基地全体を回ってみることにした。色々施設を回ったが、やはり女性が使うには、問題がありそうだった。全てトイレが共用だからね……。精霊術士が業務上利用することが多い施設は、男女別にして欲しい所だ。
また、基地を歩き回ったので、当然、多くの兵士とすれ違った。残念ながら、視線はさほど変わらなかったので、向けた相手を確認し次第微小レーザーを撃った。午後には少し出力を上げたので、撃つ度に声が聞こえていた。ちなみに昼頃、お兄様が様子を見ていたようなので、手を振っておいた。
この日は、夕食時には、こちらを不埒な目で見る者はいなかった。また、夕食後、精霊術士達と会話する時間を取ることが出来た。カリータさんが話し相手になってくれたので、精霊術士達が落ち着いて来たからだ。カリータさんがいてくれて良かったよ。
3日目、引き続きカリータさんは精霊術士達のカウンセリング、私は海兵団施設の確認を行った。この日は、私をいやらしい視線で見る者は殆どいなかったが、敵視する視線が増えた。敵視も当然宜しくないので、仕置対象だ。更に少し威力を上げたレーザーで片っ端から撃った。
腕位なら瞬時に穴が開くレベルだから、悲鳴が上がり、気絶する者も続出し、私の周囲は阿鼻叫喚の状態となった。まあ、神官に治癒して貰えばすぐに治る筈だ。そして、その噂が広まったのか、午後には私を見ると避ける者も増え始めたが、遠巻きに私を睨む者はいたので、容赦なくレーザーを撃った。
夕食時に、私を見かけた男性兵士達は、そそくさと逃げ出した。私達は、落ち着いて夕食を取り、部屋で歓談した。
4日目、私がまた施設の確認に行こうとすると、やってきた案内役の兵士が「団長室にお越し下さい」と言って来たので、団長室に行った所
「導師様、お願いですから兵士達への仕置は、もうおやめ下さい。このままでは全滅してしまいます!」
と、団長に懇願された。そうは言っても、私は皆に意識改革をして欲しいだけだ。
「では伺いますが、貴方は海兵団を、どのように改善なさるおつもりですか?」
「そ、それは……私が全員を薫陶いたしまして……」
「薫陶の内容は、どのようになさいますの?」
「は、はい……女性を手荒に扱わないように……」
「全然具体的ではございませんわね。それではどなたも薫陶することなど出来ませんわね」
「何故貴女にそこまで言われなければならんのだ! では貴女がやれば良いではないか!」
「この海兵団の指揮官は貴方でしょう? 今の言葉、総司令官殿にお伝えしますが、宜しいでしょうか?」
そもそもまずあんたが変わらないと駄目なんだよ! 責任放棄するなら更迭されてしまえ!
「あ、いや、今のは言葉の綾と申しますか……」
「……もう宜しいですわ。ある条件を達成できましたなら、私はこちらを去りましょう。後は監察官殿達にお任せ致しますわ」
ついでなので、何となく頭にあった構想を立ち上げることにした。本格的に意識改革をして頂こう。
「ほ、本当ですか? して、その条件とは?」
「腕利きの兵士と私が試合を致しましょう。兵士が勝てば私は王都に戻りますわ。ただし、私が勝てば、もう少しこちらで状況を確認させて頂きましょう」
騎士学校の助手の件もあり、私が剣を使えることは一部で噂になっているらしい。節度を保つ分には、ある程度は許すとお父様から許可を頂いたので、今回、腕を揮わせて貰おう。
「は? その程度で宜しければ、すぐにでも場を設定致しましょう。……当然魔法も精霊術も使わないのですよね? 護衛の方でなく、貴女自身が試合なされるんですよね?」
「勿論ですわ。魔法禁止の試合場で行いましょう? 確かございますわよね」
「承知致しました。では今から……」
「何を仰るの。用の無い兵士全員観戦させて下さいな。あと、対戦相手は最低5人は用意した方が宜しいですわよ」
「は、はは……承知致しました。それだけ大掛かりなら、明日行いましょう。宜しいかな?」
「ええ、明日が楽しみですわ」
そう言って私は団長室を去り、監察官に状況を話して打ち合わせを行った後、宿舎に戻った。
部屋で風精霊と感覚共有を行い、精霊課長に会いに行った。とは言っても、精霊課長には精霊は見えないので、丁度いたフェルダナに通訳になって貰った。
『配置換えの調整はどうなっておりますの?』
「順調です。ある程度把握していた情報を大臣に報告した所、そのまま国防大臣の所に向かわれまして、状況を話した後、国防省国軍課長殿や軍総司令官も同席されて、協議が行われました。そこで、現状では精霊術士の非戦闘損耗が発生する危険性が高く、放置することは陛下の御心にも沿わない、という結論となり、当面は精霊術士を全員精霊課に戻すことに決まりました」
『それは良かったですわ。私も明日、海兵団の皆様に少々意識改革をして頂くことにしましたの』
「……くれぐれも、やり過ぎないようにお気を付け下さい」
『勿論ですわ。それよりも、いつ頃配置換えが出来そうなのでしょうか?』
「数日中には人事命令が軍総司令部から発出されるでしょう。精霊課としても、現在受け入れ態勢を作っております。ただし、当分の間は、様子を見ながら勤務して貰おうと考えております」
『御配慮、感謝致しますわ。宜しくお願い致します』
課長とそのような話をして、宿舎に戻って共有を解き、屋上でレイテアと軽く汗を流した。
その夜、精霊術士達に、精霊課長との話の内容を聞かせると、皆複雑な表情をしていたが、一応安心はしているようだった。また、明日試合をすることになったので、出来れば観に来て欲しいと言った所
「何故導師様が戦わなければならないのです? 私達の為であるならば、危険ですからおやめ下さい!」
と、真剣に止められてしまった。まあ、私が負けると思うよね。だから意味がある。
「大丈夫ですわ。こう見えても私、多少腕に覚えがありますのよ?」
「いや、お嬢様ほどの方が多少と言うならば、この世界の大半の者は全く駄目ですよ」
「……そう言えば……貴女は……レイテア・メリークスですよね!あの武術大会三連覇の!」
「ええ、まあ今はレイテアーナ・メリークルスですが。少なくとも、この海兵団に、お嬢様の相手が務まる者などおりませんよ?」
「……もしかして、導師様は、とてもお強い?」
「それはもう。最近は、私と剣で対戦しても勝負が付きませんし」
「身長の伸びが一時期に比べて緩やかになりましたからね。これから更に腕を磨きますわよ」
「……ということです。お嬢様の試合に関しては、全く心配無用です。この私が保証しますよ」
「それよりレイテア、明日は、もしかすると……」
「お嬢様、例の件ですね。承知致しました」
ということで、精霊術士達を安心させつつ、試合に向けてゆっくり休んだ。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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