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第159話 海兵団への改善要望 3

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

精霊術士達の勤務場所に来た私達は、その部署の責任者に話を聞いている。


「……何故ここまで男性兵士達に囲まれた配置なのですか? しかもこの距離は近すぎませんか?」


「は、班編成を取っておりまして、業務別に区分されているのです」


言い分は解るが、これでは触り放題だ。これを誰も変だと思っていないらしい。


「精霊術士達は、別の島に固めて下さいな。でないと殿方も落ち着きませんでしょう? あと、せめて衝立を立てるか、可能であれば別室で勤務させるべきでは? 団長殿からは、劣情を催される方もいらっしゃると聞き及んでおりますわ。それならば、区画を分けるのは当然ではございませんか?」


「は、はあ……検討させて頂きます」


「それに、何故手洗場が男女兼用なのですか? 少なくとも王都では、別ですわよ」


「よ、予算が下りていないのです」


「では、きちんと施設要望を上申されていらっしゃるのですね?」


「……確認し、報告します」


「こちらが更衣室ですか……本当に穴が幾つもございますわね……塞いでもいつの間にか開いている、と伺いましたが、何故そのような事に?」


「それは……鼠の仕業と伺っております」


「このような小さな穴を何度も作るとは、さぞ悪戯好きな鼠なのでしょうね。精霊に確認して、一匹残らず駆除いたしましょうか?」


「そ、それだけはご勘弁下さい!」


……やっぱり、ネズミというのはでまかせということか。そもそもネズミはこんな覗き穴の様な小さな穴を作らない。アルカドール領ではさんざん見たけど、基本的に自分達が通れる穴を作る。まあ、精霊術士達の話だと、覗かれている場合は精霊達が教えてくれるので、壁を叩いたりして、やめさせていたそうだが。


「そうそう、宿舎の浴場の脱衣所などにも穴があるそうですわね」


「確認して、修繕させて頂きます」


「あと、確認致しますが、何故宿直の時に男女1名ずつになっているのでしょうか?」


「そ、それは、編成上仕方なく……」


「もし先日の事件の様に、何かの間違いが起こってしまったら、貴方が責任を取るのですね?」


「い、いえ、当人同士の問題で……」


「男女1対1で、襲われてしまった場合に、女性に非があると仰るのかしら?」


「……検討させて頂きます」




今度は、責任者を連れて再度宿舎の方を見てみた。施設上の問題が無いか、確認したかったのだ。


「何故男性がこの階に立入ることができますの?」


精霊術士はこの3階建て宿舎の3階に住んでいる。1階は共用で、2階は男性兵士が住んでいる。先程来た時は、中央階段の施錠可能な扉を開けて入ったので、てっきり男性の立入りが出来ないものと思っていたのだが、側面の非常階段からの入口は施錠できないようで、入ろうと思えば誰でも入れる。しかも屋上にも上がれる。だから女性用として設置している屋上の物干し場の洗濯物が盗まれたのだ。


「それは……衛兵が巡察時に、施設点検を行いますので」


「まさか、夜間に女性の寝所に立ち入っているのですか?何と破廉恥な!」


「……検討させて頂きます」


「それと、恐らくこの階段で屋上まで立ち入れることが、屋上の洗濯物が無くなる要因の1つでは?」


「……風に飛ばされたのでは?」


「脱落防止用の紐を切断する風が吹いたのなら、そうですわね」


「申し訳ございませんでした」


「……貴方を責めているわけではございませんわ。ただ、改善状況を、後日確認させて頂きますわ」


そう言って、責任者を解放すると、責任者はフラフラとしながら帰って行った。




前世で、道場の経営においては、セクハラ対策は重要な課題だった。女性も気軽に出来ることが合気道の売りの一つだったから、女性の門下生が多く、私は女性の一人として色々相談に乗ったり、設備の改善などに努めていたのだ。その経験から言わせて貰えば、この職場は女性が勤務できる環境ではない。全て改善しない限りは、絶対に精霊術士を置くことなど出来ないと、強く感じた。


施設も一通り確認し、調査団として一旦集合し、本日の調査結果を話し合った。


「……ということで、職場の態勢は、性犯罪を誘発させることを目的としたかのような状態でしたわ」


「申し訳ございません。我々も数年毎に監察を行っておりましたが、そのような状態に気付かず……」


「出来れば、今後は監察員に女性も配置して、女性用の施設等も確認して頂けると有難いですわね」


「そのように致します」


「まあ、それは今後行って頂くとして、そちらの状況は如何でしたの?」


「はい、確かに精霊術士……というより、女性蔑視と取れる発言は世代問わず多かったと思います」


「その辺りは、今後意識改革を行って頂くしかございませんわね」


「今後、我々が検討させて頂きます。ただ、精霊術士にも反感を持たれてしまう理由があるようです」


「どのような理由でしょうか」


「基本的に、普通の者に精霊は見えませんので、精霊術士が何をやっているか、解らないのです。このため、不審に思っている者が多い様です。特に、自分達が働いている時に、ただいるだけの存在に見えてしまうようでして……」


「それは精霊術士の特性上、仕方ございませんわね。ただ、今後は魔法強化の仕事も出来る様になりますから、徐々に誤解は解けていくと思いますわ」


「そうなって欲しいものです。あと、一つ気になることがございます。色々な者の話を聞いてみると、このように精霊術士を蔑視するかのような雰囲気になったのは、ここ1~2年くらいの間の様です」


それから、監察官は、聞き取り内容を概略分析した結果を話し始めた。古参の兵士と、そうでない兵士の間で精霊術士に対する意識の相違が見られ、特に新兵はかなり反感が強いそうだ。また、特定の事例が起こった時期を確認すると、ここ1年ほどの間で急増しているという話であった。


恐らくは、元々あった女性蔑視的な考えに加え、精霊術士への反感が強まったことにより、セクハラが誘発されてしまったのではないかということであった。


「海兵団の態勢自体は殆ど変化しておりませんから、兵士の価値観に影響する何かが変化したのかもしれません」


「それについては、監察官殿達にお任せするしかございませんわね」


「引き続き、調査を進めて参ります」


「導師様、私は一度王都に戻り、精霊術士達の配置を精霊課に戻す調整を進めたいと思います」


「では、私が転移門で送りましょう。あと、私とカリータさんは、暫くこちらで精霊術士達と過ごしつつ、他の施設も確認しますわ。この状態で置き去りにしてしまっては、危険ですもの」


これは、私とカリータさんが話し合って決めていたことだ。あの状態の精霊術士達を放置するなど、ありえない。


「承知致しました。早急に配置換えの準備を進めます」




こうして、今後の調査方針も決まり、私は精霊課長を送り届けた後、宿舎に戻り、空き部屋で宿泊した。レイテアには例の非常階段近くの部屋に入って貰っているが、私も危険があったら起こして貰う様、精霊に頼んだりした。


この宿舎は、1階に食堂と浴場があるが、女性用浴場やその脱衣場にも幾つか穴があった。精霊術士達は、交代で見張りをしながら使用していたそうだ。本当に悲しくなる。当座は地精霊と同化して全ての穴に土を詰め、土を岩化させて塞いで使用した。


食事は、暴行被害に遭った彼女は男性が怖いということで部屋に食事を運び、その他の者は一緒に食べている。当然、他の兵士達の視線が集まって来る。今は許すが、明日以降不埒な視線を向けたら、容赦なく仕置をさせて貰おう。私の立場上、ある程度強烈に異性からの干渉を拒絶する姿勢を示した方が良い、というのがこの世界の考え方なので、それを活用して、意識改革の切っ掛けの一つにして頂こうかな。


食事を終え、部屋に戻ったが、現状では何もできそうにないので、そのまま就寝した。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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