第151話 計算機について話してみた
お読み頂き有難うございます。
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今日は通常業務だが、早目に業務を終わらせて、またじゃがいもを増やそうと思っていたのだが、魔道具課から、魔道具の改良を行ったので、確認に来て貰いたいという話があり、作業室に向かった。
「導師様、お忙しい所を有難うございます」
「課長殿、私も今は緊急の用件さえなければ時間はありますので、問題ございませんわ」
そう言って、試作した魔道具の確認を行った。氷魔法の魔道具は少しの修正で大丈夫だった。これなら、ここで暫く待っていれば出来そうだ。雷魔法の魔道具は、まだ大きな修正が必要の様で、後日確認することになった。
暫く待っている間、ヴェルドレイク様と雷魔法の魔道具について、話をした。
「氷魔法に比べ、雷魔法は開発されて日が浅いですから、理解や想像がもう少し固まらないと、難しいかもしれませんわね」
「確かにそうですね。私も今後、雷魔法の魔道具を作っていきますので、雷魔法の練習は続けます」
そう言ってヴェルドレイク様は、先日教えたスタンガンをやって見せてくれた。
「それなら場所を取らずに出来ますわね。でも、戦闘時以外は、人には当てないで下さいね」
「勿論ですよ。それより、雷魔法の魔道具を作るとしたら、どんなものが良いでしょうか」
「そうですわね……単に魔法を投射するものでも良いでしょうが……先日話しましたところでは、光源ですと、銅などの金属は雷の素を良く通すのですが、ある所に、比較的通さない物質を挟むと、加熱して光を出しますわ。それを利用すればいいのですが、これは、良い材質を探す所から始める必要がありますわね。熱源も同様ですわ。動力源ですと、雷の素を流した物は、少しだけ磁力を帯びるのです。羅針盤に使われているものですわ。流す線を回転軸に取り付けて、回転できる構造を作ってから、雷の素を流すと、回転しますのよ。ただ、こちらは構造をよく研究してから作られた方がいいですわね」
「なるほど……どれも今の私では難しそうですね……やはり当初は護身用の魔道具を作ろうかな」
「それなら現在使える魔法を魔道具にするだけですので、比較的容易かもしれませんわね……あと、変わった所では、計算を行う魔道具も出来ますわよ」
「計算……?そのようなことも可能なのでしょうか?」
「ええ、原理としては、雷の素が「ある」「ない」という状態を数字に置き換えて、一定の条件下で雷の素を流すと、変化した状態が、計算結果を表すというものですわ」
「…………そのような話は初めて聞いたけれど……魔法学校の数学の授業にも出て来なかったな」
「そうなのですか……それでは、参考と言うことでお話し致しましょう」
そこで、昔の記憶を思い出して、二進法の話をした。一応大学の講義で、コンピュータ概論だったっけ?で計算方法なども含めて勉強したんだけど、直接は使わなかったな……データの山は研究室で見たけど。
「……ということで、減算は、補数を加算することで表現できるのです」
「なるほど。それなら、乗算も除算も加算が出来ればいいということになる……このような考え方があるとは思わなかったよ」
「ええ。そのような特性から、2進数はある・ないという情報を数字として扱うのに丁度良いのです。例えば、特定の部分を押すことで何かの数字を表すようにして、押した数字を2進数に変換して、ある部分に記憶し、その内容を計算方法により変化させ、結果を10進数に戻して表示するのですわ」
「有難う、非常に参考になったよ。計算が出来る魔道具、これを作ることが出来れば、様々な所で活用できる。当分の間は形にならないと思うけれど、研究させて貰うことにするよ」
「それは楽しみですわ。何かお悩みになることがございましたら、お話を伺わせて頂きますわ」
「そうさせて頂くよ……あっ、言葉が戻ってしまっていたよ。失礼しました」
「そういうこともございますわ。……そろそろ、氷魔法の魔道具の修正が終わりそうですわね」
ひょんなことから、計算機や二進法の話をしてしまったが、ヴェルドレイク様は非常に興味を持ったようだ。この世界には、算盤のようなものはあるが、計算機は無い。あれば、非常に多くの場所で使用されることになるだろう。あの短時間で、ヴェルドレイク様は二進法の話などを理解し始めていたし、遠くない将来、計算機を完成させるかもね……。
今日は通常通り出勤し、通常業務をやっていた所、精霊課長が誰かを連れて入って来た。
「導師様、こちらは本日付で精霊術士となりました者です。導師様にご挨拶を」
「導師様、先日精霊視を確認して頂きました、グライナ・マロークです。宜しくお願いします」
「魔法省へようこそ。今後は精霊術士はますます活躍の場が広がりますわ。貴女も早く職場に慣れて、国民の為に尽くせる精霊術士になって下さいね、期待していますわ」
「有難うございます!頑張ります」
「導師様、グライナ嬢は、相談役をエルスラ嬢に任せることにしました」
「確かにエルスラさんなら適任ですわね。グライナさんは、やはりアンダラット法から学ぶのかしら」
「その通りです。今ならイルファ嬢と一緒に練習できますので、そういった意味でも良いでしょう」
「そうですわね」
「あと、ついでのようで申し訳ございませんが、イルファ嬢とグライナ嬢以外は、全員魔法強化を成功させました。火山監視の任に就いているコルテア嬢も、監視の合間に鍛錬していたそうです」
「まあ、それは素晴らしいわ!大臣にはご報告されましたの?」
「はい、先程。非常に喜ばれておいででした」
「そうなると……やはり、簡易鍛錬場の整備は、必要ですわね。特に地属性の方は、冬はあの場所では体調を崩してしまいますわ」
「現在、今月末の予算審議用に、書類を作成しておりますので、来年以降なら何とかなると思います」
「そうして頂けると助かりますわ。折角精霊術士を採用しても、鍛錬出来なければ、宝の持ち腐れになってしまいますもの」
「はい。……本当に、導師様が来られたおかげで、精霊課は救われました」
「そう仰って頂けると、私も有難いですわね」
そのような話をして、課長とグライナは退室した。春以降は各領を回る際に、併せて精霊視を持つ女の子を確認させて貰うことになっているから、それなりに精霊術士の数は増える筈だ。せめて今の倍くらいにはならないかな。それなら、近場の領の巡回を任せる余裕が出来るだろうからね。
何となく気になったので、夜になってから感覚共有して、パティの所に行ってみた……が、いない。もしかすると、グライナの部屋かもしれないな。探してみよう……あった。中を少し覗くと、何人かがいて、パティもいた。地属性の集まりっぽいな。丁度いいから混ぜて貰おう。
『皆様……夜分失礼致します、フィリストリアですわ』
「あら、丁度貴女の話をしていたのよ。たまに精霊と感覚を共有して遊びに来るって」
「パティさん、先程の話、本当だったんですね……てっきり何かの冗談だと思っていました」
「失礼ね。ほら、普通の精霊は瞳が茶色だけど、フィリスが使役している精霊は、瞳が黄金色に光るのよ」
「……本当ですね。そういえば、大聖堂でこれをやったんですよね」
『ええ、その通りですわ』
「導師様がこれをやって判定してくれると、間違うことがない上に、一人で全ての属性を確認できるから大助かりなのよ。以前は4人で行かないと、確認できない属性もあったし、たまに精霊の場所を偶然当ててしまう子がいたから、間違った時は大司教様に申し訳が無くて」
『エナさん……まあ、それで助かるというのであれば、結構なことですわね』
「そうだ、折角導師様も来られましたし、精霊術士集中鍛錬の時の話などを……」
「それって、少し前にやったものですよね。何かあったんですか?」
「聞いてよグライナ、導師様がね、この宿舎より大きな岩を、一撃で吹き飛ばしたのよ!」
「……エルスラさん?何を言っているのか、さっぱり判らないのですが……」
「あれは直に見ないと、多分信じられませんわね……私、あれを見て、この方だけは敵にするまいと、心に誓いましたわ」
『メグルナリアさんまで……何を仰るやら』
様子を見に行ったら、何故か話の種にされてしまった。けれど、グライナは打ち解けられそうで安心したよ。あと、何気にメグルナリアもかなり打ち解けてるよね……まあ、良い事だ。
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