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第146話 山林火災対処を行った

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今日は通常業務だ。ただ、今日はイルファが休暇明けだ。まあ、当初はアンダラット法の習得から入るから、特に問題は無さそうだけど……様子を見に行くと、課長が教本を見せながら話していた。大丈夫そうなことを確認し、普通に業務をこなした。


途中、某魔導師長が精霊課長と話していたようだが、こちらには来なかったので安心した。業務が終わり、帰宅すると、お父様から魔道具で連絡があったという話を聞いた。内容は、今週末の休日に、ビースレクナの行政官が来て、話し合いたい内容があるので、出来れば帰って来て欲しいというものだった。今の所問題ないので、帰る旨を連絡して貰うことにした。




今日も通常業務だ……普通に終わった……さて帰ろう、としたところ


「導師様、失礼します。……帰られていなくて良かったです」


宰相補佐官の一人が入って来た。またどこかで災害か?


「宰相補佐官殿、どうされましたか?」


「実は、カルテリアで山林火災が発生しまして……消火活動に当たっているのですが、火の勢いが強く、被害が広がっております。是非お力をお貸し頂きたい」


「宰相閣下はこの件はご存知ですか?」


「既に帰宅されていたので、連絡員を向かわせております」


「承知致しました。直ちに準備しますので、秘書室でお待ち下さい」


とりあえず導師服に着替えさせてもらって、秘書室の補佐官殿を呼んで、詳細を確認した。転移門での移動はカルテリア伯爵側からの同意を得ているそうなので、移動は王都のカルテリア伯爵邸までは馬車、そこからは転移門だ。火災の細部場所は、本邸の方で確認して欲しい、ということだ。


「もうすぐ馬車が下に来ると思いますので、下に移動をお願いします」


「承知致しました。ニストラム秘書官、申し訳ありませんが、関係諸掌への連絡と、明日以降の業務調整をお願いします」


私はそう言って、補佐官殿と玄関に降りてレイテアと合流し、やって来た馬車に乗り込み、出発した。私は馬車の中で、カルテリアについて考えていた。行ったことも領主家の人に会った事もないが、実は私にも縁がある。私が生まれる前に亡くなった、マーサグリアお祖母様の実家なのだ。


なので、前カルテリア伯爵は、お祖母様の兄上、つまり大伯父で、現在のカルテリア伯爵は伯従父ということになる。再従兄弟もいたはずだが、もう成人しているので、現在領地にいるかまでは解らない。親戚筋の所に行くので、もしかすると面倒なこともあるかもしれない。気を付けて行こう。




王都カルテリア伯爵邸に到着すると、家令らしき人が転移門まで案内してくれて、早速転移した。本邸の方にも家令らしき人がいたのだが、私の顔を見ると大層驚いていた。高齢の方のようだし、恐らく、若い頃のお祖母様をご存知なのだろう。


とは言っても一刻を争う状態だ。案内を促し、邸内を案内して貰い、談話室のような部屋に入った所、初老の男性がいた。雰囲気からすると、恐らく前カルテリア伯爵、つまり大伯父様だろう。


「……そちらは導師殿か?本当に若い頃のマーサに似ておる……すまない、感傷に浸っている場合ではなかった。こちらの地図を見て頂きたい」


「カルテリア卿、危急の時故失礼致しますわ。これは何時頃の状況ですの?」


「前8時頃、概ね3時間前か。現場は更に燃え広がっている筈じゃ。現在、当主が現場に進出しておる」


どうやら、山奥の方で原因不明の火が発生し、昼頃に気付いた住民が緊急連絡により、こちらに知らせて、以降は消火活動を行っていたそうだが、近くに大きな水源が無く、消火そのものが難しいらしい。仕方がないので、近隣の集落の前に臨時の防火帯を作っているところだそうだ。


「水源を作れば、何とか消火できるかもしれませんわね。ここから概ね50キート、更に燃え広がっているとすると……この辺りに深い井戸を掘って、大量に水を湧出して、消火致しましょう」


「……導師殿、大変な作業じゃが、頼んで宜しいか?」


「領の為、最善を尽くしましょう」


瞬間、大伯父様が優しく微笑んだが、すぐに厳しい顔になって「宜しく頼む」と言った。


私は、精霊に聞きながら現場に向かい飛び出した。夜間だが、精霊が誘導してくれるし、月明かりもある。とはいえ、あまり速度の出せる道ではなく、通常の身体強化で移動した。レイテアは、早馬を借りて移動し、現場で落ち合う予定だ。


私は30分程で、現場に到着した。流石に近づくと、火で明るくなっている。持って来た地図を光魔法で照らしてみたが、解らないので、一旦重力魔法で宙に浮かび、高い所から見てみたら、漸く場所が解ったので、目的地付近まで飛んで行った。


この付近は、特に集落は無いから、巻き込む危険は殆ど無いだろう。私は水精霊に、地下水脈の状況を確認した。幸い、300クール程下に、結構な水脈があるそうなので、早速両手を地精霊と同化して、掘り進んで行った。暫くすると、水精霊が『水が湧いたよ』と言ったので、同化を解いて、水精霊と和合を始めた。


【我が魂の同胞たる水精霊よ。我と共に在れ】


和合して、即席井戸から大量の水を引っ張り出し、巨大な水の塊を作った。私はその上に位置し、そのままの状態で燃え盛る火に突撃した。最初は集落に近い所からなぞって行き、塊が小さくなると、操作を終了し、次の水の塊を作った。


同じ要領で火を押しつぶすように消していったが、暫くすると、人がやって来て、火種が燻っていそうな所を、魔法で消火し始めた。恐らく、レイテアが到着して、私の事を説明したのだろう、頑張って、という声援も聞こえる。


期待に応えねば、と頑張って、何とかこちらに来て2時間程で、概略の消火を終え、和合を解いた。流石にかなり魔力を消耗してしまった。レイテアと合流させて貰おう。


風精霊に、人のいる方へ案内して貰い、そこで尋ねて、何とかレイテアと合流できた時には、既に真夜中だった。レイテアに案内され、現場進出している伯爵の所へ行った。


「伯爵、お初にお目にかかります。精霊導師のフィリストリア・アルカドールです」


「おお、導師殿……貴女のおかげで消火活動が概ね終了し、現在は火種を完全に消しているところだ。大層お疲れの様だし、後は我々が行うので、隣の天幕で暫く休んで欲しい」


「有難く、休ませて頂きます。明朝、再度火種の有無を確認致しますわ」


「そうして貰えると助かる。……あと、こういう場で何だが、貴女と我がカルテリア家は親戚ではないか。落ち着いたら、機会を作って話しましょう」


「ええ、伯従父様。では、休ませて頂きますわ」


そう言って、指定されたテントで、暖炉のような魔道具の近くで毛布にくるまって寝た。レイテアには申し訳ないが、見張りをお願いした。何かあったら困るので。




朝になって起きると、レイテアはしっかり見張りをやってくれていた。魔力はかなり回復したようだ。異空間からパンと飲み物を出してレイテアと一緒に食べた後、伯爵の所へ行くと、夜通し作業を確認していたらしく、少々疲れた感じで椅子に座っていた。


「伯爵、では私は、周辺に火種が残っていないか、確認して参りますわ」


とりあえず、周辺の火精霊に、火種が残っていないか確認して貰う。幾つか残っていたので、その都度現場に行き、消火した。こうして消火活動は終了し、伯爵に報告して、私とレイテアは、馬に乗って伯爵邸に戻った。


伯爵邸で、大伯父様と宰相補佐官に、消火が完了したことを報告した。大伯父様からは


「有難う、導師殿。ところで……今日はこちらでゆっくりしてはどうじゃ」


と言われたが、流石に仕事で来ているし、宰相補佐官もいるので


「お気持ちは有難いのですが、宰相閣下に報告しなければなりませんので」


と、丁重にお断りした。まあ、そのうち来ると思うし、その時色々話しましょう。




大伯父様に見送られて、王都に転移した。カルテリアの馬車に乗って宰相府まで行き、宰相閣下に消火活動は終了し、山林が結構燃えたが、集落への類焼前に鎮火し、人的被害は防ぐことが出来た、と報告した。


「そうか。そなたのおかげで、被害が局限され、人命や近隣の村なども守られた。御苦労じゃった。人的被害が出ておらんのであれば復旧も容易じゃろう。ところで補佐官、今回の火災、原因は何であった?」


「まだ調査中ですが、誰かが山に入った時に暖を取り、その始末が不十分だったのでは、との推測です」


「冬は乾燥し、火の回りが早い。全ての領に、火の始末を再度徹底するように」


「承知致しました。また、今回消火用の水源が無かったことも、火災を大きくした一因です。出来る限り、溜池や井戸を各所に作っておくよう、併せて連絡しておきます」


「そうじゃな。そちらも頼む」


「承知致しました」


こうして、突然の山林火災対処は終了した。カルテリアには、今度お祖母様の話でも聞きに行こうかな。


今日は早めに帰宅させて貰った。家に戻ると、お祖父様が出迎えてくれた。


「お帰り、フィリス。疲れたじゃろう……カルテリアはどうじゃったかね」


お祖母様の実家だから、気にしているのだろう。どうせ夕食まで暇だし、少しお祖父様とお話ししよう。


「正直な所、災害対処にしか時間が割けておりませんが……カルテリア伯爵やカルテリア卿からは、好意的に接して頂けましたわ」


特に大伯父様からは、お兄様の様な温かい視線を感じた。お祖母様は、愛されていたのだろう。


「それなら良かった。儂の場合、あちらさんからはマーサを早死にさせたと思われておるようじゃからな」


「それは……お祖父様のせいではございませんわ。ただ、大伯父様は、感情のやり場が無かっただけなのでしょう」


「……そうじゃな、それなら有難い」


それから暫く、お祖母様の話を聞いていた。お祖父様が、今でもお祖母様を深く愛されているのが良く解った。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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