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第141話 大精霊について話を聞いた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今週は協同訓練だ。全般予定は、初日が資材の設置などの訓練準備で、この段階では精霊課は行く必要が無く、魔法兵団のみで行うことになっている。2~7日目が訓練日で、前段3日間は検証が主体、後段3日間は連携しての訓練が主体となる。


で、7日目は陛下達が視察される予定だ。魔法大臣と私は、6日目に視察して、7日目は視察に同行する形だ。8日目は資材の撤収なので、精霊課の訓練としては、7日目が最終日となる。


精霊課は現在、魔法兵団の方にも来て貰って、訓練参加者に対する事前説明を行っている。私は後ろで聞いているのだが、正直、軍事的な用語はさっぱり解らない。それは参加する精霊術士達も同様らしく、意味が解らない単語が出て来ると、その都度質問していた。


「すみません! 今の「散兵」って、何のことですか?」


サリエラが質問しているようだ。今回の参加者は、結局11名になった。集中鍛錬で魔法強化を習得した7名に加え、こちらで4名、ロナリア、エルスラ、リゼルトアラ、サリエラが習得出来たのだ。先週末にリゼルトアラが「私も魔法強化に成功しましたわ!」とドヤ顔で言っていたのが微笑ましかった。


魔法兵団の方は、初歩的?な質問が出る度に、顔を引きつらせながら答えていた。先程の質問の「散兵」というのは、野外で1か所にいると見つかり易い上、一旦攻撃を受けると全滅する可能性があるので、適度に隠れながら分散している状態の兵士達のことで、その兵士達を想定して設置した的がある、ということだそうだ。なるほど。


他にも戦場において陣形を組んだ歩兵部隊や、騎兵部隊、混戦状態を想定した的などがあるそうだ。


現状では、意思疎通に難があることが発覚した事前説明だったが、何とか終了した。




その後、精霊課は野外行動準備を行った。精霊術士には野外行動する時の制服がある。各領を巡回する時は、野外を歩き回るから、そういった時に着ているそうだ。私はその服を持っていないが、導師服があるから問題ない。視察の際も、当然導師服だ。業務を終了し、家に戻って暫くして、珍しくレイテアが尋ねて来た。


「お嬢様、実は、実家から手紙が届きまして……」


どうやら先日、結婚の件で、来年の武術大会参加者から決定するという話を了承して貰おうと手紙を書いたらしいのだが、ご両親からは「決めてくれるならそれでいい」という回答を頂いたそうだ。


「両親に許可を頂きましたので、申し出をして下さった方には、そう回答させて頂きます」


「解りましたわ。ただ、その話を聞いて、別の方も婚姻を申し出るかもしれませんので、そういった方々も考慮して頂戴」


「……そうですね。私としても、まだ実感が湧いたわけではありませんが、出来れば尊敬できる方と人生を共に歩みたいと思いますので、条件を聞いて希望される方がいるなら、検討したいと思います」


この世界は、神様の教えから、カラートアミ教が結婚を奨励している。当然、その教えに逆らうなど余程の事が無いとありえない。権力者であれば、跡継ぎが不要ならば未婚を貫くことも可能のようだけれど。


レイテアもその辺りは理解していて、剣術を続けられるのであれば、結婚自体には忌避感はないようだ。とりあえず私は、お祖父様にこの件を話して、お父様にも手紙を書いた。さて、シンスグリム男爵は、結婚の申し出を行うかな?




今日から訓練日だ。精霊術士11名に加え、運用班と資料班の一部も参加している。魔法研究所からも、何人かが情報収集に来るそうだ。私はこちらで通常業務だが、時間が空けば、感覚共有で見に行ってもいいかもね……と考えていたところ、精霊課長が、1名の精霊術士らしき少女を連れて部屋に入って来た。


「導師様、先日まで火山監視の任務に就いておりました精霊術士が戻りましたので、連れて参りました」


「課長殿、有難うございます。貴女とは初めてお会いしますわね。私は4月から魔法省で勤務している、精霊導師のフィリストリア・アルカドールですわ。お名前は何というのかしら?」


名簿に載っているので名前は知っているが、一応自分で名乗るのが筋なので、そう促したのだが、暫く待っても名乗らない。緊張しているのは解るのだけれど……うーん。


「導師様、この者は導師様を前にして、極度に緊張しているのです。ご容赦願います」


「……ええ、そのようですわね。では、課長殿とイルファさん、そちらに座って下さいな」


一応、監視業務中のことなどを確認する必要があるので、課長とイルファ・グーニスには座って貰った。


お茶をニストラム秘書官に持って来て貰う。では、幾つか聞いておこうか。


「火山監視中に、変わったことはございませんでしたか?」


「……報告書を読む限りでは、特に問題は無かった様です。イルファ嬢、そうだな?」


課長のフォローがあり、おずおずと頷くイルファ。……はぁ。


「課長殿、今後の精霊術士の運用や、現在行っている魔法兵団との協同訓練については説明しましたか」


「はい、説明しました。イルファ嬢、今後は魔力操作や属性の力の感受性を高め、魔法強化を行うことは先程説明したが、覚えているな?」


先程と同様に頷くイルファ。うーむ、この子とは、意思疎通が難しそうだな……。


「……課長殿、イルファさんは、いつもこのような感じなのでしょうか?」


「……今回は、導師様が目の前にいらっしゃるので、いつも以上に緊張しているようです。通常は、筆談を交え、意思疎通を図っております」


「そうですか……解りました。では、私はイルファさんと少し話してみますわ。課長殿は退室して下さい」


その言葉で、イルファは目に見えて動揺した。私、そんなに怖いのか。課長は、心配そうな顔をしたが、お茶を飲んでから退室した。さて、少し話してみようかな。


「イルファさん。私は貴女と話したいだけで、特に何かを咎めたり、罰したりするわけではないのです。少なくとも、それは理解して頂きたいのですが……宜しいでしょうか?」


優しく言ったつもりだが、それでも少し震えながら、頷いている。さて、どうしたものか。これで本当に業務が出来るのかしら?監視業務が出来るのだから、精霊とは意思疎通が出来るのよね……待てよ?


「イルファさん、少々そこに座ってお待ちになって下さいな」


そう言って私はソファから立って机に戻り、壁の方を向きながら椅子に座り、後ろにいる火精霊と感覚共有し、再びイルファの目の前にやって来た。


『イルファさん、この姿ならどうかしら? フィリストリアですわ。火精霊と感覚共有致しましたの』


「え? 精霊? 導師様……なんですか?」


初めてイルファの声が聞けたよ……精霊の姿なら普通に話せるのでは?という読みは当たったかな。


『そうですわ。私は、精霊と視覚や聴覚などを共有することが出来るのです。相手が精霊術士ならば、このように会話することも可能ですの』


「そ、そんなことが出来るのですか。す、凄いですね……」


それから、少しずつ会話を行った。イルファは、小さい頃から精霊とは良く話していたが、あまり人とは話さなかったため、対人恐怖症のような感じらしい。で、色々な人から、私に失礼な態度を取るなとさんざん言われて、内心非常に恐ろしくなっていて、話すどころではなかったということだった。まあ、そこは改めて訂正させて貰った。


あと、火山監視業務中の精霊の話などを聞いた。火山の付近は、他の地域よりも火精霊が元気に遊びまわっていて、見ているだけで楽しいらしい。一度見てみたいものだな。あと、一度火山が活発になったことがあり、その際には、何と火の大精霊がやって来たそうだ。


『イルファさんは、大精霊殿とお話できましたの?』


「はい。大精霊さんは、世界各地の火山を見て回っているそうで、あまり火山が活発過ぎた場合は環境を破壊しないように、色々処置を行うそうです。その時は、これなら問題ないと言って去っていきました」


『初めて知りましたわ。教えて下さり、有難うございます』


火の大精霊は、そんな仕事をやっているのか。道理で会ったことが無いと思ったよ。翻って考えると、火山の監視は、精霊術士にとって大変重要な任務であるわけか。なるほど。


その他、世間話などを行い、イルファには帰って貰った。何せ、疲れているだろうからね……。1週間の休暇の後、アンダラット法から学んでいくそうだ。当分は感覚共有を使って、打ち解けて行こうかね……。


その日の夜、大精霊について気になったので、女王様に聞いてみることにした。


『女王様、フィリストリアです。お時間宜しいでしょうか』


『話せ』


『実は、大精霊殿の活動について、ご教授頂きたいのですが、宜しいでしょうか』


『……確かに、お主にも必要な知識じゃの。よし、今から説明に向かわせよう』


つまり誰か……恐らく執事風精霊だろうけど……が、こちらに来て説明してくれるわけね。


『有難うございます。用件は以上です』


『ではな』


女王様との念話が終了して、暫くすると、執事風精霊が外から入って来た。精霊界からの転移は、女王様以外は、特定の場所にしか行けないようで、場所によっては結構なタイムラグが発生するのだ。


「お久しぶりです。此の度は、御足労を頂き誠に有難うございます」


『フィリストリア様、お久しぶりです。では、大精霊様について、説明させて頂きます』


執事風精霊は、大精霊について説明を始めた。大精霊は、各属性の精霊を統率するとともに、災害が自然に影響を与えすぎないように、各場所や現象の監視を行い、大災害が発生しそうであれば抑制するという任務を持っているそうだ。イルファに聞いた内容と同じだな。


で、火の大精霊は火山、風の大精霊は熱帯低気圧など、地の大精霊は地震、つまりプレートの歪を監視しているらしい。水の大精霊は、特定の地域や現象を見ているわけではなく、水が枯渇しすぎないよう、バランスを取っているそうだ。一定以上の砂漠化を防止する、といったところか。えらくスケールが大きいなぁ。


こちらの世界は、台風がそこまで強くないし、大きい地震も発生していないようなので、不思議に思っていたのだが、それらは大精霊のおかげということだ。何せ私、前世は地震で死んだわけだし、感謝させて頂こう……。そうだ、一応聞いておこう。


「私は、大精霊殿と、全身又は一部の同調は行えますの?」


『それは……大精霊様が近傍にいて、許可されれば可能でしょう』


なるほど。大精霊と和合する時は、許可が必要なのね。まあ、同格という話らしいし、当然か。


「ご説明頂き、有難うございます。どこかで大精霊殿にお会いした時の参考にさせて頂きますわ」


『では、私は精霊界に戻ります。全く……主は精霊使いが荒い……』


執事風精霊は転移した。最後の愚痴は聞かなかったことにしておこう……。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

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宜しくお願いします。


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