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第013話 これは身体強化の実践

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

通常の生活に戻り、授業や鍛錬を続けていたが、冬になり、屋外での活動はできなくなった。このため、鍛錬を室内でやっていたのだが、狭い場所で制限してやっていると、流石に飽きて来た。このため、環境を変えてみようとして、父様に許可を取って、屋敷の屋内鍛錬場にやって来た。護衛の皆が鍛錬しているので、見学に来たのだ。


勿論、ただ見学するだけではなく、頭の中では、彼らと戦うイメージトレーニングを行い、それに連動させて、瞬間的に、複数個所の身体強化を行っていたのだ。


合気道には、武器術・対武器術の技もあり、剣や杖などを使用しているので、ロイドステアの剣術とは異なるが、私は剣もそれなりに扱える。身体強化をすれば、子供の体であっても木剣で戦うことは可能だ。


見ている限りでは、ここでの剣術は、相手を素早く戦闘不能にすることが目的の、力と速度の発揮を主体とするものだ。当然激しく打ち合うことになるが……いなしたり払ったりせずに、打ち合った際に出来る急所を攻める人が多いのよね……。


剣をいなす型自体はあるようだけど、実力差が大きい相手の教導くらいにしか使ってない様だ。私的には、強い相手ほどいなそうとしないと勝てない気がするが、考え方の違いなのかな。




身体強化を行いつつ、護衛達の動きを見ていたところ、物珍しかったのか、護衛の一人が声をかけてきた。確か、リカルド・エイシブという若手の護衛だ。


「お嬢様、先ほどから熱心に我々の鍛錬をご覧になっていますが、興味がおありですか」


「そうね、身体強化を行う部位や時期などの参考にさせて頂いているわ」


「ほう、それでは、実際に体を動かしては如何ですかな」


おっ、何やら挑発してきたのか?先ほどエイシブの動きは見たが、あの程度なら捌ける。


「あら、私の遊戯にお付き合いして頂けるのですか?」


「お嬢様がお暇であるならば、お付き合いするのも使用人の務め。お怪我はさせませんよ」


こうして木剣を持って訓練場に降りた。動きやすい服を着て来て良かった。


「ではお嬢様、どこからでもいらして下さ……いっ!」


私はエイシブが少し視線をずらした時を見計らって、加速して接近し、喉元に剣先を当てた。


「あら、これで終わりですの?」


少し煽ってみた。


「……っ、ふんっ……え?!」


エイシブは、私の剣を力任せに払おうとしたが、それを躱して再び喉元に剣先を当てた。


「…………、調子に乗りやがって!」


今度はエイシブは私に斬りかかってきたが、剣でいなしつつ突進を躱した。逆上しているようだ。


「どうなさいましたの?小娘相手に逆上するなど」


ニヤリと笑い、更に挑発した。


エイシブは、いよいよ我を忘れて攻撃してきた。彼の攻撃パターンは、先ほど見ていたので概ね把握している。動きも見えている。では、組手の受けになってもらおうか。


12回ほどエイシブを転がし、13回目に入ろうとしたが


「何をやっておる、リカルド。フィリスもどうしたのだ」


どうやら誰かが父様を呼びに行ったらしい。折角の対人の鍛錬も終了か。残念。




その後、2人で父様のお叱りを受けたが、双方に怪我はないこと、また、私が暇だったので、エイシブが好意で、私の身体強化の実践の相手になってくれたことを話すと、エイシブに罰はないと父様が言い渡したが、私には、無断で鍛錬場を使用しないように言われた、のだが……。


「父様、では、許可を頂ければ、今回のように、身体強化の練習が出来るのですね!正直、部屋にこもってばかりで気が滅入っていたのです。どうか、哀れな娘にお慈悲を頂きたいのです」


と、嬉しそうにお願いしてみたところ、母様と相談する、と父様は言って去っていった。


その後、母様に呼び出され、怪我をしないようにすること、手に豆をつくらないこと、髪や肌が荒れないようにすることなどを条件に、身体強化の実践の一環として、週1回程度なら、と許して貰った。手袋をつけて、髪もまとめれば大丈夫かな。


ということで、合気剣の稽古が出来るようになった!




週1回、護衛のうち1名に付き合ってもらい、身体強化の実践と称して剣対剣の組手をやったのだが、当初はエイシブの件があって変に警戒されていた。まあ、幼女にさんざん転がされたら立つ瀬はないよね。


私としては、警戒されたままだと稽古にならないので、母様との約束で、攻撃を受けないことを最優先で対応することを告げた。まあ、あまりに隙があれば転がすけど。


このため、護衛達は、隙を作らない戦法をとって私と相対した。私としても、投げより崩しを主体にしたかったので、有難かった。




こうして私は、護衛達との鍛錬により、対人においても前世の様に動けるようになった。身体強化を合わせると、前世以上に強くなったかもしれない。ついでにこちらの世界の剣術も、概ね理解することが出来たのだが、どうせなら、剣ではない武器を扱いたいと考えていた。具体的には、棒である。


棒術は、古武術では長物を取り扱う基本と言われ、鍛錬にも向いているとされていた。総てが柄であり全てが刃、かなり応用の効く武器だ。前世で合気道の修行の一環として、お父さんの知人に古武術を学んだ際に手ほどきを受けたことがあり、個人的に気に入っていたのだ。合気道にあるのは杖術であって棒術ではないが、一応4.2尺だけでなく6尺の杖もあったし、私の好みを取り入れても罰は当たるまい。


ということで、棒を取り入れようと考えた……のだが、この世界では槍はメジャーなようだが、棒はマイナーなようで、誰も武器として扱っていない。仕方がないので、当座は様子見かな。




春になり、屋外で鍛錬が出来るようになった。私はこっそりと、森での魔物退治を再開した。やはり命のやり取りの場は、意識しなければ緊張してしまう。たまに多少の怪我をすることもあるが、魔法で治せるので、何とかばれてはいない。移動速度も、身体強化の練度が向上して更に上がり、短時間で森の往復ができるようになった。


また、冬の間だけだった護衛達との鍛錬も、引き続き行われることになった。というのは、護衛達が、私との鍛錬は為になるので続けさせて欲しい、と父様に上申したからだ。こちらも対人経験が上がるので有難く、以前と同じく週1回の割合で続けることになった。


で、それはいいのだが、今度は兄様も鍛錬に加わってしまった。まあ、元々兄様は、剣術の先生との鍛錬だけでなく、護衛達とも鍛錬していたので、当然なのだが。冬の間は、単に予定が合わなかっただけである。


ということで、今私は、兄様と対戦している。


「護衛達が、フィリスが強いというので対戦してみたくなったんだ」


「兄様。私の手慰みなど相手にされなくとも宜しいですのに」


「だってフィリスと皆が楽しく鍛錬していると言われたら、兄として参加したくなるんだよ」


「そういう事でしたら。では、参ります」


当初は様子を見て、兄様の動きをよく観察した。流石に7才から2年間続け、9才になれば、相当に腕が上がっている。これなら護衛達ともそれなりに打ち合えるだろう。だが、まだまだ経験不足のせいか、剣が素直すぎる。


「っ!はっ!どうです」


剣をいなして態勢を崩し、態勢を戻そうとした兄様の力を利用して転倒させ、喉元に剣先を当てた。


「……驚いた。フィリス、やっぱり強いんだね……」


「たまたまですわ。ただ、動きが直線的すぎると、ふとしたことで今のようになるかもしれませんね」


「そうだね……もっと鍛錬して、様々な状況に対応できるようにしないとね」


そう言って兄様は起き上がり、今度は護衛達と鍛錬を始めた。特に怪我はないようだ。


私も、他の護衛に相手になって貰った……のだが、当初に比べ、最近はエイシブを含め、お誘いが多いのですが。何だか皆さん、娘か孫のように私を見てるし、変に人気が出てしまったかもしれない。複雑だ。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


(石は移動しました)

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