第135話 レイテアの披露会 1
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今日はレイテアの披露会のため、休暇を取って準備している。まずはアルカドール領にいるお父様達を連れて来るため、転移して、本邸の談話室に顔を出すと、お父様、お母様と何人かの参加者がいた。
「皆様、お迎えに上がりましたわ」
「おお、フィリス。迎えに来てくれて有難う。話したいことは色々あるが、とりあえずは移動しよう」
お父様の言葉に従い、転移門まで移動し、応援の使用人や護衛、向こうへ運ぶ荷物とともに転移する。王都侯爵邸の談話室に案内すると、お祖父様とレイテアが待っていて、一先ず御礼を言っていた。アルカドール領から連れて来た人達は、こちらに泊まって貰い、披露会の次の日の朝、私が出勤前に送る手筈になっている。
「お祖父様、トリセント伯爵邸には、午後に伺えば宜しいのですよね」
「ああ。昼食後、向かっておくれ。それまでは、こちらで打ち合わせをしよう」
客人達は、王都内を観光したりするようだが、アルカドール家は披露会の準備だ。学校があるお兄様以外の家族とレイテア、あと業者の人は談話室で、明日の要領について話し合った。
「流石父上、後は宴の準備をして、始めるだけのようですね」
「まあ、彼にも頑張って貰ったからのう」
お祖父様に褒められた業者の人は、恐縮していた。
「そういえばフィリス、今回の披露会とは関係ないが、私は3日程こちらに残る。以前手紙にあった、砂糖の輸出の件でな、どうせなら直接ステア政府で話した方が、早いだろうからな」
「ええ、お父様は別口でお送り致しますわ。ふふ、お祖父様の仰った通りですわね」
「有難う。それにしても……父上に読まれておりましたか。まだまだ敵いませんね」
「当然じゃ」
打ち合わせの筈だったが、楽しく談笑させて貰った。
午後には、レイテア達とトリセント伯爵邸に向かい、転移門を使わせて貰った。転移門前で待っていた使用人に案内され、談話室のような部屋に向かうと、トリセント伯爵以下、こちらの参加者が集まっていた。
私とレイテアは、簡単に挨拶をした。また、当然、レイテアのご両親もいたので
「レイテア、改めて、おめでとう」
「レイテア、ずいぶん立派になって。母さんは嬉しいわ」
「お父様、お母様、お久しぶりです」
お父さんは結構会っているが、お母さんは久しぶりだったし、非常に嬉しい様子が伝わって来た。ただ、積もる話は向こうでお願いするよう言って、皆で転移した。トリセント伯爵達は自身の王都邸を使うが、レイテアのご両親は、うちに泊まって貰うことになっている。まあ、色々話して下さいな。
ご両親達も乗せて帰る途中で、注文していたドレスを受け取る。お母さんが
「剣ばかり振っていた貴女が、こんな盛装を着るようになったのね」
と、感慨深く呟いて、レイテアが照れていた。
家に戻り、お父様達に、輸送支援は終了したことと、レイテアのご両親を紹介した。流石に、侯爵であるお父様から、我が家の様に気楽にして下さいと言われ、二人は恐縮していたようだった。食事についても、皆で一緒に、と誘ったが、結局レイテアの部屋で3人で食べることになった。まあ、仕方ない。
暫くすると、お兄様が学校から戻り、夕食まで家族団欒の時間となった。お兄様の学校での話や、私の職場での話、現在の領の状態などを各々話した。
お兄様は、自身の勉強は順調だが、最近はカウンタール様が氷魔法を習得し、ライバルとして切磋琢磨しているそうだ。私は精霊術士集中鍛錬のことを話した。
領内の話では、セイクル市に次いで大きいカルセイ町にも、砂糖工場を建設中とのことだ。また、プトラム分領は、塩の増産を始めたが、従来の設備より効率がいいため、全て私が提案した方式に切り替えて増産し、より分けた塩を他領にも売り込むそうだ。
それと、ビースレクナとの交渉の件は、順調に進んでいるようで、もしかすると年末に帰る時には、ビースレクナ領の甜菜の種も品種改良する可能性があるそうだ。
ちなみにお母様は……
「ほら、フィリス、物を少し浮かせることが出来るようになったのよ?」
「確かに椅子が浮いていますわ。重力魔法の習得は、順調なようですわね」
「フィリス、これは、重力魔法?という名前になったのかしら?」
「はい。現在、地属性研究室長が論文を作成中ですが、大地が物を引く力を『重力』と称し、それを操る魔法を、重力魔法と呼ぶことにしたそうですわ。11月末までには、論文を発表する予定の様です」
「ふむ。では、論文発表以降は、基本的には秘匿しないで済みそうだな。エヴァ、それまでには出来るだけ、他の者に教えられるように準備して貰えると助かる」
「ええ、頑張ってみますわ」
「ちなみにお母様、オスクダリウス殿下や地属性研究室長は、自ら宙に浮かぶことで、重力を感じ取り、想像を強めておりましたが……試されますか?」
「そうなの?では、1クールくらい浮かせて貰えるかしら」
部屋の中だし、そんなものだよな。では……えいっ!
「あ、あら……何だか不思議な感覚ね……少し上下に動かして貰えるかしら?」
反重力を強めたり弱めたりしてみる。特に異状は見られない。暫くして、ゆっくりと床に降りて貰った。
「……確かに、何か感触が掴めた気がするわね。もう一度試してみましょう……えいっ!」
すると、さっきよりも椅子が高く浮いている。やはりこの練習法は使えるかもしれないな。ただ……
「お母様、ご自身を浮かせることで練習しても良いですが、あまり高く上がらないで下さいね。室長も、危うく落下しそうになったことがありますから」
「そうね。落ちても大丈夫なように、寝台で練習しましょう」
……ベッドをトランポリンの様にして遊ぶお母様を想像してしまった。
「……フィリス、何を想像しているのかしら?」
「っお母様……変な想像はしておりませんよ?」
こういった想像は危険なのでやめよう。
夕食の後、外出していた客人達も帰って来た。その中には、セイクル市執政官、つまりパティのお父さんもいたので、一緒に夕食でも食べに行ったのかと思って、パティに様子を聞きに行ったのだが……
「フィリス、聞いてよ。お父さんったら、今日は夕食を一緒に食べるだけって言ってたのに、結局職場にまで来てるんだもの!課長や皆に挨拶して回ってたのよ。恥ずかしいったらもう!」
うーむ、それは恥ずかしい。ただ、パティ自身は、それが本当に嫌というわけではないようだ。
『まあまあ、それだけ貴女を心配していたのでしょう?』
「それは解っているんだけど、私の立場も考えてよ……」
『大丈夫よ。せいぜい皆、お父上に愛されてるわね、位にしか思わないわよ』
「そうなのかもしれないけど……フィリスだって、いきなり領主様が職場にやって来たら多分困るわよ?」
『父は、私が勤め出してからも何度か王都に来ていますが、恐らく理由が無いと来ないでしょう。そうね、来週はステア政府に用事がある筈だから、ついでに様子を見に来るかもしれないわね』
そのようなことを冗談交じりに言っていたのだが……。
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