第132話 合宿を終了し、王都に戻った
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今日は合宿最終日だ。午前中に移動準備を行い、昼食を取った後転移門で王都に戻る予定だ。私と精霊課長は、自分の荷物を手早く片付け、異空間に収納した後、鍛錬に使用した場所を公府の担当職員と回り、問題が無いか確認した後、宿の荷物を収納して、公爵邸に戻ることになっている。
ということで担当職員と鍛錬場所を回って行った。風組は特に問題なし、水組は泉を元に戻そうとしたが、職員が「うちも使う可能性があるのでそのままで」と言ったので、泉はそのまま残した。火組は問題なく、最後の地組は、周囲の壁を元に戻し、担当職員と別れて宿に向かった。
宿に着くと、皆が集まって話していたが、私達が到着したのを見て、寄って来た。
「導師様……少しお土産を買い過ぎてしまいまして……これらは、全て収納可能でしょうか?」
見ると、確かに来た時よりかなり増えている。入れてみないと判らないな。
「正直、この量を収納するのは初めてですので、一度試さないと何とも言えませんわね」
……収納できた。皆も安心したようだ。良かったよ。
公爵邸に戻り、昼食を頂いた後、公爵達と話していた。
「導師殿、今回、我が領としても大いに得るものがあった。紙事業などについてもそうだが、貴女と親交を深めることが出来たのが、一番の収穫だった」
「そのお言葉、身に余る光栄ですわ。今後も紙事業や砂糖の輸出などで、お世話になると思いますので、宜しくお願い致します」
「フィリストリア様、近々、当家からご招待させて頂くことがあると思いますので、その際は是非いらして下さいな」
エイムランデ様がそう言った。何の事だろうと一旦考えたが、ペルシャ様が恥ずかしがっていたので、フェルドミナーク殿下との結婚が近いと言う事だろう。
「承知致しました。何を置いても馳せ参じますわ」
「フィリス様、また遊びましょうね」
「ええ、チェルシー様」
そのようなことを話していると、家令の方が、精霊課の人達が到着したと伝えに来た。
「それでは、私達は王都に戻りますわ。公爵をはじめ、皆様には大変お世話になりました。本当に有難うございました」
そこで公爵家と別れ、転移門に集合し、王都に転移した。
王都のウェルスカレン公爵邸には、既に馬車が待機しており、馬車に乗って魔法省の庁舎に移動した。私は一旦荷物を庁舎前で取り出した後、精霊課長とともに、大臣の所に報告に行った。
「大臣、精霊術士集中鍛錬を異状なく終了し、戻りました」
「おお、導師殿、精霊課長、御苦労だった。そちらで詳細を聞こう」
大臣室にあるソファの方へ案内され、秘書が入れてくれたお茶を飲みながら、成果を報告した。
「ほう、魔法強化を7名が成功させたか」
「はい。残りの者も引き続き似た環境を作って鍛錬すれば、可能と思われます」
「以前精霊課長が話していた件を本格的に進めなければならんな。ところで導師殿」
「何でございましょうか?」
「小耳に挟んだのですが、港の近くにあった巨大な岩を吹き飛ばしたというのは本当でしょうか?」
「はい。精霊と全身を同調させた状態で属性の力を取り込み、放つ技を編み出してしまいまして……」
大臣は精霊課長の方を見て、課長が頷いたのを確認し、げんなりしたような表情で呟いた。
「……はあ、本当に貴女という方は……」
いや、出来てしまったものはしょうがないと思います……。
大臣への報告が終わり、荷物の片づけの状況を確認に行った。既に課の備品は課に運ばれていたので、宿舎の人達の荷物を収納し、宿舎まで運んでおいた。後は、執務室に戻って、不在間に溜まっていた書類を確認していた。とりあえず見た限りでは、後閲処置の分が置いてあるだけで、至急の案件は無かったので、ボチボチ確認していこう。
今日については、精霊課の終礼に参加した。一応確認しておきたかったからね。どうやら後片付けは終わって、後は個人の荷物整理だけのようだ。厨房の毒見の引き継ぎも済んだらしい。来週にはパットテルルロース様の所にお礼に行かないとな。
終礼の後、久しぶりに王都侯爵邸に戻った。屋敷に入ると、お祖父様とお兄様が出迎えてくれた。
「フィリス、お帰り。集中鍛錬は大変じゃったか?」
「フィリス、お帰り。久しぶりに会えて嬉しいよ」
ああ、やはり家族はいいなあ。愛情に溢れた視線を浴びて、気恥ずかしいが、それ以上に嬉しい。
「お祖父様、お兄様、只今戻りましたわ」
部屋に戻って着替えた後、夕食を取って、お土産を渡し、この3週間の出来事について話し合った。
「そうか、ウェルスカレン公爵家とも懇意に出来たか。それは良かった。あそこは今後、発言力が増すからのう」
「はい、近々フェルドミナーク殿下が臣籍降下されて公爵家をお継ぎになるようですし」
「それもあるが、恐らく現公爵は、早目に公爵位を譲った後、宰相になるじゃろうからな」
「確かにそうですわね。為人が解っている方と仕事が出来るのは、良い事ですわ」
「フィリス、その、魔力波というものは、私にも使えるのかい?」
「現在、私の仮説を元に、レイテアが練習しておりますの。レイテアが習得可能なら、お兄様にも可能ですわね」
「そうか、もし可能だったら、私にも教えて貰えないか?」
「ええ、喜んで」
「フィリス、来週末のレイテアの披露会の件じゃが、準備はほぼ出来ておる。後はお前にも転移門での送迎をやって貰うことになるが、宜しく頼む」
「はい、お祖父様。レイテアの方も、舞踏は練習しておりますので、大丈夫ですわ」
「それは良かった。何せレイテアへの婚姻の申し込みが殺到しておるしな。そちらもそろそろ考えていかんとな」
「まあ、それは恐らくレイテアの御両親もお喜びでしょうが、本人はあまり乗り気ではなさそうですわ」
「そうじゃな。そこは今更急いても仕方ないのう。そういえば、もしかするとクリスはこちらに数日おるかも知れんな。砂糖の輸出の件を政府と調整するなら、丁度良いからのう」
「そうですわね。お父様には手紙ではそこまで書きませんでしたが、そうなさるかも知れませんわね」
「輸出するのであれば、生産量を増やす必要があるのかな」
「ええ、お兄様。増産のための開墾や工場建設、人手の確保などでアルカドール領は大変忙しいですわよ。お父様は、お兄様が魔法学校を卒業されて、お仕事を手伝われるのを待ち焦がれているのではないかしら」
「そうだね。私は今のうちにしっかり勉強しておかなければ」
「はい、頑張って下さいませ」
殆ど仕事の話になってしまったが、とにかく家族と話すことが出来れば、何でも良かったのかもしれないな。
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