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第130話 公爵からも相談を受けた

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

合宿18日目、休日になった。とはいえ、今は人が多い所に行くと、かなり疲れそうなので、先週行った植物園に行くことにした。あそこならそれほど人が多くないから、人の意識に慣れる練習になる。


というものの、馬車を降りて萩の近くに行くだけでも、結構厳しいものがあった。レイテアにも心配されたのだが、せっかくなので練習を続けることにした。


そうだな……こういうものは、根本的には意識や考え方を変えることで何とかなるのが基本の筈。まずは……和合の時のように、我を張らず、受け入れる感じかな…………うーん、感情が多すぎて自分も無くなりそうだ、やめよう。


どちらかというと、受け流す感じの方が、それっぽい気がする。で、敵意を感じたものについては、対応すればいいわけだ。今の所は、興味本位の視線しか感じないが……なるほど、少しずつ慣れて来た気がする。この方向で行こう。しかし、外出するだけでも鍛錬に繋がるとは、思いもよらなかったよ。


屋台の軽食を頂き、暫くした所で、これまでのものとは違う、好意的な視線を感じた。振り返ってみるとどうやら、パティとエナ、エルスラの様だ。こちらにやって来る。


「皆様、ご機嫌麗しゅう。散策中ですか?」


「フィリス様、ご機嫌麗しゅう。ええ、この植物園は精霊が多いので、落ち着きますから」


エナが答えた。まあ、基本的にこういう場所は精霊術士に人気だ。


「私は朝からこちらで休息しているのですが、皆様昼食は取られましたか?」


「はい、午前中は市場の方に行っておりまして、お昼はその近くの料理店で魚料理を頂きましたの」


パティが答えた。やっぱり海の近くなら魚料理だよね。


「私はそちらの屋台で軽食を頂きましたわ。景色を楽しみながらですと、美味しく感じますわね」


「そんなものですかね。私は美味しい物が食べられれば満足です」


エルスラが言った。所謂、花より団子という奴かな。


そのような感じで、とりとめない話を3人と行い、暫くすると別の場所へ移って行った。私は、その後も暫く萩の花を楽しみながら、人の意識を受け流す鍛錬を行い、夕方前に公爵邸に戻った。




合宿19日目、最終週だ。今日は午前中は鍛錬、午後は紙事業の会議に参加する。午前中は各荒魂について、特性を確かめていた。同程度のエネルギー量であれば、魔法と同様、火荒魂の方が威力は大きくなるようだ。また、岩には風荒魂、熱を持った物には水荒魂をぶつけると、より威力が高い様だ。


ということは、先日吸込岩に向けて放った時は地荒魂を使ったわけだが、風荒魂ならもっと威力が大きくなったということだ。一応、頭の片隅には置いておこう……。


昼には公爵邸に戻り、会議に参加した。前回と参加者はほぼ同じの様だ。


「前回の会議より進展した事項や、変化のあった事項について、報告願います」


「では、まず工場の敷地について。東地区のテイペル川河口付近を候補にしたいと考えます。木材を運ぶのに容易ですし、テイペル川の水も利用できます。また、木材を破片化するのにも、水車を利用できるため、容易です」


「確かにあそこなら工場としては最適だが、従業員の住居を近傍に作らねばならんな」


「その通りです。元々あの付近は、開発予定地でしたので、開発の優先順を上げては如何でしょうか」


「そうだな、その方向で進めることを許可する」


「有難うございます。爾後、取り掛かります」


このような感じで着々と事業に関する内容が決定されて行ったが、今回は特に意見を出す所は無かった。ただ、公爵から別件で相談があるとのことで、そのまま話を続けた。


「公爵、ご相談とは?」


「実は、アルカドール領で生産を始めた砂糖を、こちらにも卸して頂きたいのだ」


「それは……利益が見込める程度の流通量があれば可能ですが、少量ならば、王都で購入して頂くことになりますわ」


「我が領だけならば量は限定されるが、帝国からも輸入したいという要望があってな」


どうやら、砂糖の需要が増加していて、輸入量を増やしたいとのことだ。これまではヘイドバーク国から輸入していたが、不作時の対処が容易なので、輸入先を増やすことにしたようだ。


「それはアルカドール領だけの話ではございませんわね。政府から許可を頂かねばなりませんもの」


「その通り。これから政府に申請するので、その口添えも頂きたい」


「解りました。父と相談させて頂きますわ」


「感謝する。それとあと一つ、要望があるのだが」


「何でございましょうか」


「今回の精霊術士集中鍛錬の成果について、各領にも周知して頂きたいのだ。例えば我が領にも2名、精霊術士がいる。どちらも行政官夫人だ。これまでも領政において、度々助言を貰っているので助かっているが、更に能力を向上して貰えるならば、我々としても心強い」


「それはその通りですわね。精霊課長にも協力して頂きますが、今回精霊術士達には、それぞれ資料班の者が付いておりまして、成果を作成しておりますので、完成致しましたならば、各領にもお知らせ出来ると思いますわ」


「それは有難いことです。妻も喜びます」


どうやら、その精霊術士の旦那さんがここにいたようだ。




公爵からの話は終了し、解散となった。とりあえず、精霊課長に話すために、会いに行った。


「課長殿、先程公爵から要望があったのですが、今回の鍛錬成果を、ウェルスカレン領やその他の領にも周知して頂きたいそうですわ。各領にいらっしゃる精霊術士達の能力向上の参考にしたいそうですわ」


「それは確かに必要ですね。成果がまとまりましたら、大臣の許可を頂きましょう」


まあ、常識的な要望だし、大臣も了承して下さるだろう。


「そうそう、導師様に一つご相談があったのですよ。宜しいでしょうか」


「ええ、何でしょうか」


「実は、今回特に頑張った者1名を表彰したいのですよ。それでご意見を伺いたいと思いまして」


なるほど。確かにこういった所で褒めるのは効果的だ。そうだな……。


「条件としては、魔法強化に成功した者のうち、客観的に見て良く頑張っていた者でしょうかね」


「私もそう考えております。慰労会で表彰したいので、その前の日に決めたいと思います。その際にはある程度選定いたしますので、導師様にもご意見をお願いします」


「判りましたわ。宜しくお願いします。ところで、何か記念品を準備されているのでしょうか?」


「今の所は表彰状を考えておりますが……」


「そうですか……どうせなら、記念楯や記念章のようなものを準備した方が宜しいのでは?」


「記念楯と勲章は、政府と魔法省の正式なものがありますので、独自に準備するなら記念章でしょうか。しかし今から業者に依頼すると、間に合わないと思います」


「ある程度意匠を考えて頂ければ、私が作成いたしますが?」


「は?どのようにでしょうか?」


「貴金属は地中から取って来たものを加工致しますし、飾りを付けたいなら水晶を造形致しますわ」


「……そうでしたね。判りました。明日には意匠の案をお持ちしますので、作成をお願いして宜しいでしょうか」


「承りましたわ」


まあ、このくらいしても、問題ないだろう。そうそう、お父様に砂糖の件で手紙を書かないとな……。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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