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第012話 セントラカレン公爵令息 ヴェルドレイク・セントラカレン視点

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

僕はセントラカレン公爵家の次男として生まれた。家族は祖父母、両親、2才上の兄と5才下の妹がいる。両親や祖父母は厳格だが、愛してくれているのは感じられる。


兄は小さい頃は仲が良かったが、今は公爵家嫡男として、周囲の期待に応えようとしていて忙しいらしく、最近顔を合わせていない。妹とはそれなりに仲は良かったが、最近は、先日会った第3王子のオスクダリウス殿下に夢中のようだ。




僕は周囲に全く期待されていない。というのは、僕の魔力量が一般貴族の平均にすら届かないからだ。公爵家は王家から重要な経済地区の統治を任されているため、統治に有利となるよう、魔力が高い者が好まれる。


兄は父上同様、魔導師になれるのは確実だし、妹も魔力量は多い。しかし僕は、仮に兄に何かがあったとしても、妹夫妻が公爵家を継ぐだろう、と陰口を叩かれている。


このため僕は、可能な限り魔法の素養を高めようと頑張ってみたが、魔力操作は人よりうまくなったものの、肝心の魔法の威力はさほど上がらず、悔しい思いをしていた。




そんな中、王都に足を運んだ際に、ある話を耳にした。アルカドール領の者が、画期的な魔力活性化の方法を発見した、という話だ。魔法研究所員の話によると、その要領で活性化した場合、通常の数倍の早さで活性化でき、高速で魔法を行使できるということだった。


僕は研究所で話を聞こうとしたが、現在検証中のため、数年は待って貰いたい、と言われた。だけど、話が本当なら、一刻も早くその方法を知りたい。僕以外にも既に何人かは、発見者であるライバートン・アンダラット男爵の所に話を聞きに行っているそうだ。




僕は両親を説得し、6名の護衛とともにアルカドール領に向かった。北東街道を移動してアルカドール領に入り、セイクル市の手前までは順調だった。しかし、そこで20名以上の盗賊に襲われたのだ。護衛達が健闘してくれていたが、馬車の車輪に何かが挟まり、動かなくなって状況がさらに悪化した。そこで、御者に馬を使ってセイクル市に救援を求めに行かせた。馬に乗った盗賊は既に護衛が倒したので、辿り着いてくれるだろう。


僕も馬車の窓から魔法を放ち、護衛達の戦闘を支援した。護衛達は奮戦したが、元々の数が違う。結局全員倒されてしまい、残った盗賊2名が、出て来いと言いつつ馬車の扉を開けた。この時にも全力で魔法を放ち抵抗したものの、逃げる事すらできなかった。一人ともみ合いになり、剣で右腕を切られた。


僕は死を覚悟した。


その時あの子は現れ、あっという間に盗賊を倒してしまった。見た当初は、味方とは判断できなかったことから、警戒は解かなかった。まず右腕の止血を行い、馬車を降りると、子供が盗賊を拘束していたので、様子を見るため、声を掛けた。




僕が警戒しているのを見て、子供が素顔を見せた時、僕は言葉を失った。現れたのは絶世と言える程美しい女の子の顔だったからだ。暫く放心していたが、女の子が訳ありで名乗れない、と言った事は覚えている。


確かに、こんな美少女が平民のはずはない。


貴族の娘だとすると、こんな所に護衛もつけないで出歩くのは、立場上非常にまずい筈だと考えた。恩人を貶めるわけにはいかないと思い、素性の詮索はしないことを約束した。


心を落ち着けて、現状を把握した。彼女の対応を見た限り、残念ながら護衛達は全員亡くなったようだった。申し訳ない気持ちで一杯だったが、それをねじ伏せ、救援を呼んだためそのうち領兵が来るだろうという話を彼女にした。


少女は僕の右腕を見て、怪我に気づき、癒そうとしてくれたのだが、彼女はどう見ても神官ではない。瞳を見る限り地属性だろうから、無理だと思ったのだが、彼女が魔力を流すと、何と、徐々に僕の傷が回復していった。


神官なら、神の恩寵である治癒を使って傷を癒せるが、神官でない者が治療を行う場合は、魔力を流して自然治癒能力を強化するだけなので、同属性の者にのみ可能と聞いていた。僕は風属性なので、彼女が地属性なら無理な筈。では彼女は一体何なのだろう、と思わず黄金色に輝く美しい瞳を見つめてしまった。


暫くその美しさに我を忘れていたが、馬車の中で座って治療をしましょう、と少女に勧められ、気を取り直した僕は、馬車に入って座席に座った。少女も僕の右側に座り、治療を続けた。


ただ、隣にこのような美少女が座っていては全く落ち着かず、ついつい自分の身の上話を始めてしまった。セイクル市に来た目的や、自分の魔力が少ないことなど……。


少女は、僕が気落ちしていたので気を使ってくれたのかもしれないが、僕が魔力操作が得意なことを見抜き、更に能力を磨くことで威力を補える、と言ってくれた。


思わず泣きたくなったが、何とかこらえた。再来年には王都の魔法学校への入学も控えているし、頑張ろうと心に決めた。




その後、領兵が来たと言って少女は去っていった。到着した領兵達に連れられ、セイクル市正門付近の待機室で事情聴取を受け、両親に連絡を取ってもらった。迎えが来るまでの間は、領主であるアルカドール侯爵にお世話になることになった。侯爵に挨拶し、侯爵邸を案内して貰っていたところ、何と、あの少女と再会した。


彼女はフィリストリア・アルカドール。アルカドール侯爵令嬢だったのだ!


再会したものの、フィリストリアは戸惑っていたので、昨日の事は秘密にする、と目で合図を送ると、彼女も安心したのか、普通に応対してくれた。


その後は侯爵夫人やカイダリードを紹介して貰い、客間で休んでいたところ、昼食に呼ばれ、昼食の際に今後の予定について侯爵から話があった。丁度午後からカイダリードがアンダラット男爵の魔法授業を受けるので、同席してはどうかと。僕は勿論承諾した。


午後になり、アンダラット男爵が到着した。侯爵が事情を説明し、僕は授業に同席させて貰った。カイダリードは、既に新しい魔力の活性化要領を習得していたが、復習として、アンダラット男爵と僕の話を聞いていた。実際に二人に実演して貰い、僕はこの技術が素晴らしいものであることを確信し、必ず習得してみせると決心した。


休憩の時に、カイダリードと話した。最初は魔法の話だったのだが、話題はフィリストリアの話に移った。何と、あの活性化要領は、元々フィリストリアが考えたものだという。本当に凄い女の子だ。


その後、授業が終わったフィリストリアに会いに行き、改めて礼を言いつつ、彼女と話をした。正直、僕はフィリストリアに惹かれている。もっと仲良くなりたいと思ったが、性急だったようで、少しずつ仲良くなろうと思った。


次の日から、活性化要領をひたすら練習した。その甲斐あって、アルカドール領滞在間に会得することができた。アンダラット男爵やフィリストリア、そして、僕を守って亡くなった護衛達に感謝を。


その後は侯爵一家と交流を深めたり、セイクル市を案内して貰った。フィリストリアにも、水晶の髪飾りを渡した。気に入ってくれると嬉しいな。




半月後、セントラカレン家の迎えの馬車が来て、帰領した。両親に様々な報告をしたが、新たな活性化要領を実演すると、驚くとともに、皆に広めるよう言われた。犠牲はあったが、その成果を役立てなさい、

と父上は言った。その目は、優しかった。


その他、侯爵家の話になったが、話を聞いた後に母上が「頑張りなさい」と言った。もしかすると、僕がフィリストリアを好きになったことが分かったのだろうか?僕はセントラカレン家を出ることになるから、このままでは彼女と一緒になるのは難しい。それでも応援してくれているのかな。


最低でも、法服伯爵である王都執政官くらいにはならないと、侯爵令嬢とは釣り合わない。だけど、可能性があるなら、絶対に諦めたくない!


僕は誰よりも頑張って、彼女を迎えられるような人間になりたいと、強く思った。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


(石は移動しました)

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