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第125話 発勁(仮)を検証した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

合宿3日目となった。今日は基本的に1日中個人の鍛錬だ。光魔法は概ね検証が終わったので、今度は本命の発勁(仮)の検証だ。本当に私以外にできないものなのか、色々考えてみたのだ。ミリナ以外にも、一応レイテアには、アンダラット法を教えるついでに教えてある。


アンダラット法は習得できたようだが、やはり現状では、発勁(仮)は習得出来なかった。しかしながら、習得には、何か別の要素がある可能性を思いついたので、検証を深めることにしたのだ。


とりあえず、通常の状態で行ったり、同化した状態で行ったりした。同化すると、やや威力が上がったので、試しに属性のエネルギーを集めた上で、発勁(仮)を放つと、属性のエネルギーが飛んで行った気がしたが、現段階では参考ということにして、後から検証することにした。




昼食をとった後、休憩しつつ「別の要素」になりそうな内容を思い返してみた。そもそも、魔力、というより魔素は粒子なのか電磁波なのかは不明だが、仮に魔素が電磁波の性質を持つと仮定すると、周波数のようなものがあり、それを収束させることで発勁(仮)の威力は上がる筈だ。


さりとて、光のように色で周波数を指定できるわけではない。魔力は血の巡りに対応しているところもあるし、心臓の鼓動にタイミングを合わせると良いかもしれない。ということで、心臓の鼓動にタイミングを合わせて発勁(仮)を行ってみたのだが、これは残念ながら威力は変わらなかった。


もう一つ考えていたのが、脳波に合わせることだ。魔力の活性化とは、体内の魔力に意志が伝わることだが、この「意志」は、脳が発生源だ。つまり、活性化とは「脳波と魔力がシンクロした状態」と言えるのではなかろうか。


魔法を使う際は、脳波が魔力で増幅・伝搬されて、精霊に伝わると考えたなら、魔法の仕組みにも合致する。脳波の強い時が、魔力の強い時であるならば、その瞬間に合わせて発勁(仮)を行えば、魔力量が少ない者でも、行える可能性がある。


大学でスポーツ科学を学んでいた時に、脳波の講義もあり、その内容を思い出していた。人間が起きている時は、アルファ波とベータ波が主に出ていた筈だ。アルファ波はリラックスしている時に多く出て、ベータ波はストレスを感じている時に多く出たと記憶している。


アルファ波はベータ波と比べて振幅が大きく、周波数も小さいので、合わせるならアルファ波だろう。ただし、そのアルファ波でも周波数は確か10ヘルツ前後で、正の最大値をとるのは前提条件を考えない場合は0.1秒に1回くらいだから、強まるタイミングを測るのが可能なのか判らないが……試してみる価値はあるだろう。


まず、目を閉じて、楽な姿勢を取る。軽く活性化を行い、魔力に波があるかどうかを感じてみよう。


……全然判らない。そうだな……アルファ波は後頭部から良く出ていた筈だから、試しに後頭部に、魔力を集めつつ丹田みたいに意識を向けてみるか。思考を強めるとアルファ波が低下するらしいから、心を穏やかにして、感じる……感じる……感じる……感じる……ああ!これか!何となく波を感じてきた。


しかし、意識し始めると煩いな。改めて、丹田に意識を置こう。……よし、安定してきた。後は、意識の波に慣れるようにしよう。ふむ……これは……自分の意識の波を感じられると、平常心を保つのにも役立つな。私自身の修養には勿論のこと、今後誰かに教えることがあるなら、有用な知識になるな。


結局その日は、意識の波を感じることに費やして終わった。




夜に時間が空いたので、地精霊と感覚共有して、パティ達の宿にお邪魔してみた。この宿は、精霊術士に割り当てられた部屋は2つで、3人ずつに分かれている。パティの同室はメグルナリアとエナだ。まあそうなるよね。それぞれ、肌の手入れをしたり寝転んだりしている。パティはベッドで本を読んでいた。近づくと、パティが気が付いて、話し掛けて来た。


「あら、フィリス、どうしたの?」


『時間が空いたので、お話に来たのですわ。そちらの様子はどうですの?』


「順調よ。精霊をより身近に感じられるようになったかしら」


そのような事を話していると、エナも寄って来て、話し出したのだが、メグルナリアは寄って来ない。まあ先日の件があるから、警戒しているだろうし仕方ない。3人で、現状を話し合った。


「へー、こちらでもそんなことをやっているのね。公爵様も喜んでるんじゃない?」


『まあ、紙がもっと安価に普及すれば、文明や文化が更に発展致しますわね』


「何だか壮大な話になりますわね……ところで、導師様は他の宿には顔を出されていますか?」


『いえ、ここだけですわね。他の所も回った方が宜しいでしょうか?』


「そうして頂けると助かりますわ。導師様と話したがっている精霊術士も多くおりますので」


『解りましたわ。夜に時間が空きましたら、他の宿にも顔を出してみますわ』


エナの助言を聞き、他の宿にも顔を出すことにした。




その後数日間は、意識の波を感じることに時間を費やした。そのおかげか、意識の波の強弱のタイミングが掴めてきた。そろそろこのタイミングに合わせて、発勁(仮)を放つ練習を行おう。とりあえず、地精霊と同化して、手頃な岩を沢山作っておこう。


……何回か発勁(仮)で岩を壊しているうちに、大分タイミングが合ってきたが、結構壊したな。また作るか……よし。もう一度、意識の波を感じて……、と。何だかやれそうな気がする。


では……はっ!!


その瞬間、これまでの発勁(仮)とは何かが違うように感じた。これまでは岩が壊れたのに、壊れていない。岩を調べてみると、何と、私がいた所から反対側の岩の表面が、吹き飛んでいた。もしかすると、力が強過ぎて貫通してしまったのかもしれない。ということは……成功なのか?試しにレイテアにもやって貰って、可能ならば、脳波に合わせると良い、ということになる筈だ。


「レイテア、少し宜しいでしょうか」


「お嬢様、御用でしょうか」


「実は以前、貴女にこの攻撃要領を教えていたと思うけれど、不足していたものが解ったかもしれないの。もしかすると、貴女や他の方でも可能になるかもしれないわ」


「何と!どのようなことを行うのでしょうか?」


「実は人間の意識には、波のような強弱の調子があるのよ。そして、活性化を行うと、魔力もその調子に合わせて強弱が出て来るの。ですから、その調子に合わせて、強い所で一気に放つと、魔力量がさほど多くなくても、可能なのではないかと、考えたのだけれど……試して貰えないかしら。危険ではないと思いますので」


「解りました。要領を教えて頂けないでしょうか」


その後、私はレイテアに要領を教え、暫くの間、練習して貰うことになった。ただ、今日は意識の波を感じるには至らず、暫くの間は空き時間を利用して続けて貰うことになった。レイテア自身もやる気はあり、遠からず条件を満たすことは出来るのではないかと思う。


私については、意識の波に合わせた発勁(仮)の練習を続けるとともに、気になっていた、属性のエネルギーを集めた状態での発勁(仮)の検証を行うことにした。


とりあえず、地精霊と手を同化させて、発勁(仮)を行うと、やはり少量の地属性のエネルギーが弾丸のように飛んで行く。同化をすることで、私の体内に元から含まれる少量の属性のエネルギーが統制下に置かれ、このような現象が起こるのだろう。


そう言えば、属性のエネルギーを取り込んだ状態で意識の波に合わせると、属性のエネルギーも強弱の調子が合うのだろうか?やってみるか……。今度は地属性のエネルギーを少し手に取り込んで、意識の波を感じて……はっ!!


……うわっ、100mくらい離れた所の岩が粉々だ!レイテアや他の護衛も驚いている。うーむ、属性のエネルギーにも周波数があって、それが揃うことで大きな力となるのだろうか?しかも、少量であの威力だ。これを和合の状態で、多量の属性のエネルギーを取り込んでやった場合……物凄い威力にならないか?


しかも、何というかこれ、発勁というより、某人気漫画にあった、ハワイの王の名前を使った気を放つ技に、見た目が近い。どうしてこうなった?


試しに地精霊と和合して、地属性のエネルギーを取り込んでみたが、それなりの量を取り込むことができた。この量が、私の体の大きさに影響されるものか、魔力量に影響されるものかは不明だが、それはもう少し成長してから検証しよう。この状態で、活性化して、アルファ波を高めてみる…………。


うん、やはり、何かとてつもないエネルギーの高まりを感じたので、属性のエネルギーを周囲に戻して和合を解く。やはり、試し撃ちをするなら、場所を選ばないとまずい。精霊課長に相談しよう。




少し早めに公爵邸に戻り、精霊課長を捕まえ、新しい技の試し撃ちを行う場所が無いか聞いてみた。


「……遠距離の目標に対する、大きな威力の攻撃、しかも魔法ではなく技ですか……?あまり要領を得ませんが、公府の執政官に確認してみましょう」


それから精霊課長は西公府役場に行き、暫くして帰って来た。


「執政官から許可を頂きました。明後日の午後であれば、吸込岩に対して試し撃ちを行って良いそうです」


「有難うございます。ところで、吸込岩とは?」


「港付近から見える大きな岩です。その付近は、常に渦が発生しており、船が近づくと岩に吸い込まれるように流されてしまうので、吸込岩と呼ばれております。危険なので、基本的には誰も近づきませんね」


「それなら誰かに被害を及ぼすことはなさそうですわね。安心致しました」


「執政官も、いっそ吹き飛ばしてくれた方が有難いと言っておりましたので、存分に試せるでしょう」


精霊課長と執政官は友人らしく、気楽に話し合えるらしい。そういえば、岩までの距離はどの位だろうか。


「威力はどこまであるか判らないのですが……距離はどの程度あるのでしょうか」


「そうですね……灯台付近からでしたら、丁度2キートくらいですね」


「では、灯台付近から試し撃ちをすることに致しますわ」


ということで、明後日の午後は試し撃ちだ。その日の午前中は各組を見て回るし、丁度いいかな。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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