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第119話 問題児達を指導した

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

収穫祭は終了し、通常の日々に戻ったわけだが、私は早速やることがあるのだ。それは、精霊課の3人の問題児に釘を刺して、これからの勤務環境を良くすることだ。先週私の名前で出頭命令を出したので、出勤してすぐに、指定した会議室に向かった。


会議室に入ると、出頭命令とあっては、流石に3人とも無視することはなく、全員集まっていた。3人は私に礼をしたので、席に座って貰った。


「全員お集まりの様ですわね。私が、精霊導師のフィリストリア・アルカドールですわ。さて、今回皆様にこちらに来て頂いた理由は、お分かりでしょうか?」


すると、3人の中で一番若そうな風属性の令嬢が答えた。恐らく、リゼルトアラだろう。


「……私達が、導師様に挨拶をせずに休暇に入ったからでしょうか?」


「そうですわね。まずはその理由を、聞かせて頂けませんか」


貴族的な価値観から言うと、私に挨拶をしなかったというのは、失態以外の何物でもない。従って


「課長が何も教えて下さらなかったからですわ!」


と、精霊課長のせいにするわけだ。私の着任日については政府通達が出ていて、貴族としての常識の範疇だから、知らないのは貴族令嬢として無能だと言うのに等しいが、突っ込まず話を進める。


「精霊課長殿からは、終了報告を受ける前に皆休暇を取られた、と伺っておりますが。それと、貴女達は、私が着任したことを知らなかった、ということで宜しいですね?」


「そ、それは……通例で、長期出張後は休暇を取ることになっておりましたので。それに、暫く王都を離れていたため、導師様の着任を知りませんでした」


水属性の令嬢、恐らくサーナフィアがそう答えた。


「確か休暇は、規則上上司に許可を頂いてから取得するものと記憶しているのですが?それと、長期の出張から帰って来たのであれば、上司に報告するのは、当たり前ではないかしら?」


「な、何で子爵ごときに報告しなければならないのですか!」


「確かに貴女は伯爵令嬢かもしれませんが、政府規則では、命令・指示の系統は身分ではなく職位組織に基づくことになっていたと思いますが?それと、精霊課長殿が上司でないというのであれば、どなたが貴女達の上司に当たるのかしら?」


「それならば、貴女は私達の上司ではございませんが、何故このような場を設けていらっしゃるのでしょうか?」


もう一人の地属性の令嬢、恐らくメグルナリアが質問?をした。


「私の業務内容の一つに、精霊課の業務全般の監督指導があるからですわ。魔法省内部組織規則に記載されておりますわよ?それとも、私が田舎者で、礼儀作法がなっていないから、指導などおこがましいと仰るのかしら?」


「い、いえ、滅相もございません!」


この前パティに田舎者だから作法がなってないとか言っていたらしいので、敢えて言ってみたのだが、ぶっちゃけこの人、人に言える程、所作が綺麗とは言えないよな……。


「では、話を戻しますが、貴女達の上司は、どなたでしょうか?」


「……精霊課長です……」


「そうですわね。貴女達は、上司への出張終了の報告を怠り、また、無断で休暇に入ったわけです。これは処分に該当する可能性がありますので、確認させて頂いているのですよ。申し開きはございますか?」


「しょ、処分でも何でもすれば宜しいではありませんか!私達の力が必要なのは変わりませんし」


「あら、そうですか。今の貴女達程度の仕事でしたら、私がいれば全く問題ございませんが。それに、今懲戒処分を受けると、嫁ぎ先に影響が出るかもしれませんが、本当に宜しいのでしょうか?」


そう私が言うと、メグルナリアが青ざめた。まあ、今まさにその調整をやっている筈の彼女が一番まずいだろうからね……私は続けた。


「今、私は「精霊導師として」貴女達に申しているのですよ。これは魔法省の職位だけの話ではございませんよ?私の言葉に反することを今後行うのであれば、それ相応の覚悟をして頂かなければね」


「お、横暴だわ!そんなこと、お父様が許さないわ!」


「あら、貴女達こそ、今まで身分を笠に着た振る舞いだったと伺っておりますわよ?ならば、私が陛下に直接お伺い致しましょうか。精霊導師である私と、ヘキサディス家、どちらを選ぶかを。こう申しては何ですが、恐らく私を選ばれるのではないかしら?これでも私、軍隊より強いと言われておりますのよ?」


そう言って、お母様直伝?微笑みながら殺気を放つと、3人とも震え出した。


「今回の件は、これまでの精霊課の態勢に不備があったということで、私自身は不問にしても良いと思っているのですよ。ただし……これからは違います。今後このような、上司を上司と思わない、同僚には身分を笠に着て横暴に振る舞う、というような規則違反がございましたら……お判りですわよね?」


3人は頭を縦に振っているので、殺気を放つのを止めた。


「一応、貴女達の御両親には、私から連絡させて頂きますので」


そう言うと、3人とも嫌な顔をしたが、何も文句を言わなかった。ついでに、今後の精霊術士の運用について、少し話をしておこう。


「今後は、貴女達にも魔力操作の練習や、精霊術士集中鍛錬に参加して頂きます。これは精霊術士の能力を高め、更に国家の役に立てるようにする目的がございますのよ。貴女達は貴族令嬢としての教育を受けていらっしゃるのですから、すぐに実力がつく筈ですわ。そうなれば一層注目を集めることになりますし、嫁ぎ先もより良くなるかもしれませんわよ」


メグルナリアの目がギラリと光った気がした。流石に危機感がある人は食いつきが良い。


「詳細は精霊課長殿に説明して頂きますが……よもや、その話を聞かない、などということはございませんわよね?」


「い、いえ、上司の指導に従うのは当たり前ですわ」


「お分かりになられたのであれば、私の話は以上です。お帰りになって宜しいですわ」


そう言って私は、会議室を退室した。さて、3名の親に手紙を書くとしようか。




手紙を書き終わって暫くすると、精霊課長が入って来た。


「導師様、此の度は本当に有難うございます。彼女達は、今後は上司としての指導には従ってくれると言ってくれました。また、アンダラット法の練習や、精霊術士集中鍛錬にも、参加してくれるようです」


「それは宜しゅうございました。ただ、彼女達のこれまでの振る舞いは、それを止められなかった精霊課の態勢にこそ原因があったのです。申し訳ございませんが、課長殿にはその点をご理解頂き、以前の振る舞いから来る遺恨などが表面化しない様、気を配って頂けませんか」


「はい、その点は私も深く反省しております。また、出来る限り精霊術士達の相談に乗ったりして、雰囲気が悪化することのない様、気を付けて参ります」


「ええ、宜しくお願い致しますわ」


とりあえず、この件は暫く様子見かな。何せ人の心の問題だから、すぐに解決する筈がない。あの3人も、私に対して、内心文句を言っているだろうが、表にはあまり出さないだろうし。精霊に聞けば、そのくらいすぐに判ることは、彼女達も良く知っているだろうからね。


私に逆らったら家ごと潰す、位の勢いで言っておいたし、実際やろうと思えば可能なだけに、彼女達も変な行動は取らない……と思う。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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