第118話 収穫祭の宴に参加した
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今日は収穫祭3日目だが、私はレイテアと共に、本邸のお父様に優勝の報告と相談に行っていた。
「お父様、急に帰って来てしまい、申し訳ございません」
「そんなことは気にせずとも良い。それで、勝ったのだな」
「はい、領主様。優勝致しました」
「それはめでたい。我が家としても、そなたのような素晴らしい護衛がいることは誇らしい限りだ」
「お褒めに与り、有難き幸せでございます」
「お父様、その件でご相談させて頂きたいのです。レイテアが殿堂入りとなって、男爵に叙爵されたことに伴い、様々な状況が変化いたしますわ。我が家として、それを助けて頂きたいのです」
「やはりその件か。それは当然だろう。援助せねば、我が家の沽券に係わる」
立場的には、レイテアはアルカドール家の庇護下に入るそうだ。当座の面倒を見るのは当たり前のことで、何らかの落ち度があった場合、我が家の恥になってしまうようだ。
「当座は、貴族名簿への処置や叙爵の披露会に関することが主体となるな。この辺りは、こういった事への助言を専門とする業者がいるので、それを雇う方が良い。また、現在の雇用形態も変化する。正式には、我が家の客分という扱いになる。給金も上げさせて貰うし、住居も、現在の使用人の部屋から、客間の1つに移って貰うことになる」
「そのような業者がいるのですね。承知致しましたが……待遇は、今のままでも宜しいですのに」
「相応の待遇をせねば、我が家が侮られることにもなるのでな。宜しく頼む」
「はい、有難く、お受けいたします」
「それと、恐らくトリセント伯などとも連携する必要がある。……暫く父上に王都で暮らして貰おう」
「お祖父様にですか?」
「実務はある程度業者に任せられるが、肝心な所ではアルカドール家の者が判断する事になる。お前やカイでは、平日の対応は困難だろう?私が対応出来れば良いが、領主の仕事を放り出す訳にはいかんからな」
「それは非常に有難いのですが……宜しいのでしょうか?」
「なに、父上は最近暇だと言っていたからな。それに、暫くフィリス達と一緒に暮らせると言ったら、快く引き受けてくれるだろう。よし、今から話に行こう」
こうして私達はお祖父様の所へ行き、事情を話すと、本当に快く引き受けて下さった。明後日の夕方、私が転移門で迎えに来ることになった。ということで、私は宴の準備もあるので、お母様に挨拶だけして王都に戻った。
宴の準備を整え、王城に向かった。昨日の今日で騒がれる可能性があるので、レイテアには休んでもらって、護衛は代理の者が就いている。普通の令嬢なら、エスコートの男性が必要なのだが、私は一応公爵相当の扱いになるので、エスコートがいなくても、とやかく言われることは無いらしい。まあ、お兄様は学校の後片付けなどがあって、来られないから仕方ないのだけれど。
収穫祭の宴は、国王陛下以下、王都の主要な役職の人達が主体で参加する。ステア政府だと、宰相閣下をはじめ、各大臣、各省の課長級以上は参加している。学校や軍、魔法研究所などの主要な役職の方も参加している筈だ。
で、基本的に三公は、例年この宴には参加している。あと、外務大臣の王弟殿下……今は臣籍降下されているから公爵だ……も参加する筈だから、私はその辺りで入場することになる。他にも、王都在住の各国大使も参加するそうだ。最近知り合いが増えて来て挨拶が大変になっているが、まあ仕事だから仕方がない。
ということで、陛下の開催のお言葉で宴は始まった。流石に王家や政府の主要な役職の方で初顔合わせの方はいないので、陛下をはじめとして、順調に挨拶は進んで行った。大体はドレス姿を褒められたり、レイテアの優勝の話を簡単にされたが、簡単に感謝の言葉を述べて終わった。
今回、多く話し掛けられたのが、軍関係の主要な役職の方だ。総司令官のサウルトーデ伯爵をはじめ、騎士団長や魔法兵団長、歩兵団長から挨拶された。魔法兵団長以外は、レイテアの引き抜きが目当てで、魔法兵団長は単純に私や精霊術士とコネを持ちたいような感じだった。
まあ確かに、レイテアはあそこまで成長してしまうと、私の護衛では役不足に思えるので、本人の更なる成長の為には、考えておいた方がいいのだろうが……悩みどころだ。
後は大使関係は……パットテルルロース様だけでいいや……と思っていた所、パットテルルロース様以外からも色々な所から話し掛けられている。今はグラスリンド帝国の大使だ。
「導師殿。我が国の第2皇子は、13才ながら既に国内では並ぶ者のない剣の達人でしてな。我が国でも毎年武術大会が開かれるのですが、通常は成人のみの参加のところ、特例で参加となり、昨年優勝されたのですよ。今度貴女と護衛の方も大会にご招待したいものですな」
「それは素晴らしい方なのですね。でも、私は武術大会への参加は難しいですわね……」
「いえ、導師殿は参加ではなくご観覧の方ですよ。貴女の様な美しい方に観て頂けるならば、選手達もさぞ張り切ることでしょうて」
要するに、結婚のためにコネを作りたいという奴だ。正直、帝国は権力争いが酷そうだから、普通に行きたくないのよね。それに、結婚の申し出をしているのが、恐らく転生者の第2皇子だしな……警戒せざるを得ないわけで。
「あら、参加ではございませんの。それでは意味がございませんわね。では、失礼いたしますわ」
と、こちら的には本音で回答して、グラスリンド大使の前を離れた。
その後も、各国大使から色々話し掛けられた。思えば私の場合、こういった場でないと大使とは話す機会がないから、結婚の申し出をしている側としては、絶好の機会ということになる。それは必死に話したくもなるよね。こちらとしては受ける必要はないのだけれど。
ただ、個人的には、別の所に意識が向いていた。先ほどからご婦人方中心の集団、群がっていると言って良いだろう、あそこには一体何があるのだろうか?行って見ると
「あら、フィリストリア。貴女も甘味を頂きに来たのかしら?」
と、王太子妃殿下がいた。なるほど。ここは先日来た菓子職人達が作ったサウスエッドのお菓子の数々が並んでいたのか。それはご婦人方がこちらに集まるわけだわ。念のため王太子妃殿下の体調も見てみたが、全く問題無さそうだ。私は南瓜プリンを美味しく頂いてから、周りの話に入ってみた。
「王太子妃殿下が来られて、本当に良かったですわ。このような美味しい甘味が頂けるのですもの」
「そうですわね。今度王都にも甘味を頂ける料理店が出来るそうですわ。是非行って見なくては」
へー、それは初めて知った。今度パティ達と行ってみようかな。
「いえいえ、私など、料理人を連れて来ただけですもの。アルカドール領で砂糖の生産を始めなければ、このようなことは出来ませんでしたわ」
「まあ、フィリストリア様、それは本当ですの?」
「ええ、甜菜という植物を、砂糖を取れるように品種改良致しまして、今年から生産を始めましたの。今後生産量も増えますので、いずれは各家でも、軽易に甘味を作れるようになると思いますわ」
「それは素晴らしいですわ。それであれば、恐れながら、王太子妃殿下には甘味の作り方を皆に広めて頂きたいですわね」
というように、砂糖のセールスが出来たし、王太子妃殿下もスイーツ仲間が出来そうだし、いい感じで宴は終了した。後はお菓子の食べ過ぎで太らない様に、しっかり運動する文化を女性達に流行らせたいところではあるが……それは今後の課題かな。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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