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第114話 問題児達が戻って来た

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今日は午前中に休みを取っている。収穫祭の時には、宴も催されるので、ドレスが必要なのだ。前回と同じ所に頼んでおり、今回も来て貰って、メイド達にも意見を貰いながら、注文した。身体に少し起伏が出て来てはいるが、今の所支障はないと思う。


午後は魔法研究所に行くことになっているが……今日はサウスエッドの人達もいるので注意しよう。


魔法研究所に到着し、早速地属性研究室の方に顔を出すと、何人かサウスエッドの人がいた。室長が私に


「あの魔法のことは、今は研究中ということで詳細を話しておりません。導師様もそのおつもりで」


と耳打ちした。まあそうだろうね。室長が話さない限りは私も話さない様にしよう。ということで、職員以外立入禁止にした部屋で、室長や数人の職員の練習を見ていた。室長以外は、まだ習得は先の様だ。ただし、論文の方は骨子は出来たようで、見せて貰ったが、私の考えていた理論と齟齬は無いと思う。後はデータを集めれば、いい論文が出来るだろう。発表は早くて年末くらいかな?


ついでに、風属性研究室に行ってみたところ、こちらには宮廷魔導師長もいて、風属性研究室長と話をしていた。気づかれたようなので、ついでに挨拶しておく。


「ザルスアージ伯爵、ご機嫌よう」


「まあ、導師殿。ご機嫌麗しゅう。貴女に会えただけで、今日一日幸せですわ」


いや、そういうのいいから。


「先程、こちらで雷魔法が実用化されているのを拝見しまして、お話を伺っていたのですわ」


「そうでございましたか。私も、こちらに知人がおりまして、良く顔を出させて頂いておりますの」


ちなみに今はティーナはいない。不幸中の幸いか?挨拶は終わったので、去ろうとすると


「導師殿、貴女からも、雷魔法について、伺いたのですが、宜しいでしょうか?」


「ご要望にお応えしたい所ですが、まだまだ研究中の知識を、門外漢である私が教える訳には参りませんので」


「……そうですか。残念です」


「申し訳ございません、失礼致します」


ということで部屋を出た。今日は殿下も来ないそうなので、そのまま帰った。




今日は省定例会議の日だ。今回は、私のオクトウェスでの災害対処の件についても話され、改めて会議参加者から賞賛を頂いた。あまり持ち上げられると面映いのだが、仕方ない。次の日の全体会議でも、やはり紹介されてしまったので、内心困ってしまった。


後は、サウスエッドとの人材交流が始まったことが改めて話されていた。総務省が全般的に統括し、技術面では魔法省が、文化面では総務省が主な受け皿になっており、交流の深化と共に、枠を広げていくそうだ。


また、来年に共同軍事演習を検討しているそうだ。ただしこれは軍を実際に動かして訓練するわけではなく、司令部同士が集まって、地図上で軍を動かしたことを想定しながら指揮や共同作戦の要領を検討するものらしい。まあ、隣接してないから、実動は難しいよね……。




8月に入った。今日は合同洗礼式なので、朝から大聖堂に行った。今回も前回同様に見たのだが、残念ながら。精霊視を持つ子はいなかった。殆どいないから貴重な人材扱いなんだよね……。


ということで魔法省に出勤し、精霊課長に今回はいなかったことを伝え、通常業務に移行した。暫くして、宮廷魔導師長が挨拶に来た。まあ、大臣の部屋の近くだからね。


「こちらの状況を確認出来ましたので、サウスエッドに戻ります。またそのうち参りますが」


「やはり宮廷魔導師長ともなれば、何日も国を空けるのは難しいですわね。こちらに来られている方々がお困りであれば、私からも出来る限りお力添えさせて頂きますわ」


「そう言って頂けると有難いです。では、失礼いたします」


と言って普通に帰って行った。普通にしていれば、いいお姉さんなんだけれどね……中身男だけど。




今月半ばには、収穫祭が行われる。王都は祭り準備で活気がある。レイテアなどは、3連覇に向けて時間があれば何らかの鍛錬を行っている。ただし、無理はしていないようで、魔力循環は問題ない。また、週1回の授業では、学生達は実力を伸ばしていて、レイテア自身の励みにもなっているそうだ。さて、シンスグリム男爵との再戦は実現するかな?決勝戦だと面白いんだけどな……。


などと勤務中に考えていた所、精霊課長から、今週末には2組、来週頭には1組の巡回組が帰って来るという報告があった。これでほぼ全員揃うわけだ。巡回組については、こちらに一旦報告した後、1週間休暇となるらしい。まあ、休みが無いとやってられないよね……。ということは、揃うのは収穫祭の後かな。


「課長殿、精霊術士集中鍛錬の日程については、どうなっているのでしょうか」


「巡回組の様子を見て最終決定致しますが、9月の3週間ほどを予定しております」


「そうですわね。こちらである程度魔力操作の練習を行って貰いませんと、効率が悪くなりますものね」


「それもあるのですが……精霊術士としての能力向上の必要性を理解して貰わなければなりませんので」


何だか精霊課長の表情が暗い。もしかすると、問題児がいるのだろうか?


「どなたか……支障のありそうな方がいらっしゃるのでしょうか?」


「実は3名程……いずれも貴族令嬢でして……」


つまり、我儘な子達がいて、反抗的な態度を取っているのか。ここは助けるべきだろうな……。


「私も必要性を理解して頂くのに協力させて頂きますわ」


「そう言って頂けると助かります。伯爵令嬢の方もいて、私の言うことも聞いてくれないのですよ」


ああ、一人いたね、名簿によると、確かヘキサディス家の3女で、リゼルトアラだったっけ。今12才で、私より2才上らしいから、オスクダリウス殿下の交流会の時にもいた筈だ。


「あの方ですか。確かに、私から申した方が、宜しいかもしれませんわね」


その後も問題児達の話をして、精霊課長は退室した。その3人については、他の精霊術士達にも為人を聞いてみるか。とりあえず、ロナリアから。


「あの3人ですか?正直、身分を笠に着て、平民の私達に雑用を押し付けてばかりですよ」


内規では、職位が命令系統の基準だから、身分を笠に着てはいけないことになっているのだがね……。ここの勤務が長めのロナリアは、それを知っているから、かなり据えかねているようだ。次はエナかな。


「身分が上の方はああなんでしょうが……いえ、導師様は違いますよ?リゼルトアラさんとサーナフィアさんはまあいいのですが、メグルナリアさんは、余裕が無い感じで地属性の者にきつく当たるのです」


確かメグルナリア・ボルドバームは地属性だったな。同じ属性同士、仲良くすればいいのに。そういえば、現在の最年長でもあったな。縁談がまとまってないのかな?次はコルテアに聞くか。


「あいつら、火は暇でいいですわね、とか言うんだよ。こっちだって火山まで行ったりしてるのにさ。特にサーナフィアなんか会う度に言って来るからな、またあいつらの顔見るのは嫌だな」


サーナフィア・ベルロアーズは水属性だったかな。確かにこれまでは火属性には活躍の場は少なかったが、今後は火属性も魔法支援で活躍して貰うし、意識改革をして頂こうかね。後は……フェルダナかな。


「……私が話し掛けると、下賤の者とは話せませんわ、と言われるので、悲しいです」


まあ、ここには色々な出自の人がいる。フェルダナは確かに孤児院の出だが、精霊課で精霊術士として働いている以上、公的には男爵級の扱いをするよう法令で定められていて、そこに出自は関係ないのだけれどね。そもそも孤児だからといって下賤と言うのはおかしいと思う。戦争や災害などで幼い頃に家族を失えば、貴族子女だって孤児になる可能性があるのだから。


何にしろ、職場の雰囲気を改善する必要性を痛感しましたよ。ええ。




通常の業務が暫く続いた。精霊課長の報告通り、2組の巡回組、6名が帰って来た。例の3名は、来週頭に帰って来る組だ。とりあえず6名については、精霊課長が連れて来てくれたので、挨拶できた。簡単に、今後の精霊術士の運用や、合宿の話なども行い、快く賛同は貰えたが、やはり長旅で疲れているようで、早速休暇に入って貰った。仲良く出来ればいいなあ。


……と、気楽に考えていたのだが、翌週に3名が帰って来たことで、危機感を覚えた。どうやらその3名、精霊課長に終了報告をせずに、勝手に休暇に入ったそうなのだ。当然私の所にも来なかった。


心配になって、夜にパティの所に様子を見に行くと、パティが憤慨していた。


「何なのあのおばさん!新入りは挨拶に来いって言われて、職場から帰って来た所だったのに急いで行ったら、土産位持って来いとか言われたわ。1か月前に来たのだから、もうあるわけないじゃない!その後も田舎者は作法がなってないだのねちねちと……」


リゼルトアラとサーナフィアは、王都に家があるのでそちらから通っているが、メグルナリアは王都の隣のデカントラル領の出身で、宿舎住まいだ。他にも新入りは2人いるが、特に同じ地属性のパティが目に留まったのかもしれない。エナも部屋にいて、パティを慰めていた。


『パティ、そういう残念な方もいるのよ。気にしては駄目よ。私の方でも注意しておくから、もし、実害を受けそうなら言って頂戴?私は公私混同はしないつもりだけど、私的な範囲であれば、貴女の味方よ?』


「有難う、エナさん、フィリス」


パティも愚痴を言って収まって来たようだ。しかし、早めに何とかしないとな……。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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