第113話 人材交流要員をの派遣を支援した
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今週は人材交流に伴う輸送の仕事がある。一応両国のリストを見せて貰ったが、ロイドステア側の派遣者は、職人や技術者が中心になっている。サウスエッドには地人族の集落があることもあり、工芸品作成や鍛冶、冶金、土木技術などが優れているからだ。料理人などもいるが、お菓子作りも学ぶのかな。
対してサウスエッド側の派遣者だが、こちらは魔法や魔道具、精霊に関する研究者が中心となっている。主に魔法研究所で勉強することになるらしいが、一部は魔法学校や精霊課にも来るらしい。その他、農業研究者も結構いる。ロイドステアは、精霊から知識を得ていたせいか、割と農業が発達しているので、そのためだろう。そういえば、本当に菓子職人もリストに入っている。
あと、人材交流の派遣責任者だが、ロイドステア側は商務大臣になる。たまに視察でサウスエッドに行くらしいが、基本的にはロイドステアにいる筈だ。問題は、サウスエッド側だ。どうもあの宮廷魔導師長が派遣責任者らしい。まあ、内容からすると妥当なんだろうけど、こちらにも色々絡んできそうなので、注意が必要だ。
それと、私が輸送のためにサウスエッドに行くことになったため、併せて依頼が入っていた。それは「サウスエッドで精霊視を持つ者を探す手伝いをして欲しい」というものだ。今回、自己申告で精霊が見えるという少女を集めるので、本当に見えるか判定して欲しいらしい。
まあ、何人いるか判らないし、全員を鑑定するのも面倒だよね。サウスエッドに精霊術士がいれば、精霊に関する理解も深まるわけだし、私としても有難いからいいのだけれど。
輸送の日となった。転移門に行くと、既に20名程の人がいた。王太子殿下や王太子妃殿下もやって来て、出発することになった。……何か今回は不自然に侍従達が緊張している気がするが……私は自分の仕事をやらないとね。とりあえず転移門を発動させた。
サウスエッドに到着して、サウスエッド国王に謁見した後、早速王太子殿下と商務大臣が、受け入れの責任者との調整に入った。王太子妃殿下は、サウスエッドからロイドステアに行く者達に、サウスエッドに関する話をしているらしい。私は……宮廷魔導師長がやって来て
「精霊導師殿、今回は精霊視を持つ者の判定をして下さり、誠に有難うございます」
と言ってにじり寄って来たので、微妙に間を取りつつ
「精霊に関する理解が深まるのであれば、私としても喜ばしい事でございます」
などと言いつつ、少女達が集まっている所へ移動した。
城の広間には、3~40名程の少女が集まっていた。見た感じ、年も身分も様々だ。宮廷魔導師長が最初に概要を説明した後、私が前に出た。
「私は、ロイドステア国で精霊導師を務めております、フィリストリア・アルカドールという者です。サウスエッド国からの依頼により、今回、精霊視の有無を判定させて頂きます。では、まず左側から、火属性、風属性、水属性、地属性の順に、2列ずつ作って並んで下さい」
一応皆素直に従ってくれた。次は感覚共有を行って、話し掛けていこう。火属性……反応なし。風属性……おっ、一人手を挙げた。水属性……反応なし。地属性……一人手を挙げた。2人の目を見ると、きちんと精霊を追っているし、確定だろう。
「宮廷魔導師長殿、このお二方になりますわ」
「お待ち下さい。何故この平民が選ばれて、私が選ばれないのでしょうか?」
貴族令嬢らしき人が、私に文句を言って来た。何故と言われても……ねえ。
「私は先程、精霊を使役して、属性毎に精霊を通じて話し掛けたのですわ。その声が聞こえていらっしゃらないのであれば、精霊視はございませんわ」
「そのようなこと、信じられませんわ。そもそも、ここに精霊がいるかどうかも分かりませんもの」
「いえ、複数おりますわよ。お疑いになられるようでしたら、お見せ致しますわ」
そう言って、私に付いている精霊達に魔力を与え、姿を見せるよう言ったところ、そこにいた全員が驚いたようだった。先ほどの2名も驚いているが、まあ、他属性の精霊は見えないからね。
「精霊は、様々な所にいるのですよ。それが分からない方が、選ばれないのも当然では?」
そう言うと、令嬢らしき人は黙ってしまった。後はサウスエッドの人に進めて貰おう。
2名はとりあえず宮廷魔導師の一人に預けられた。ある程度の基礎教育を行ってから、うちの精霊課で勉強することになるらしい。それが妥当だよな……と考えていると、宮廷魔導師長が謝罪して来た。
「先程は、貴女の力を疑うような者を呼んでしまい、申し訳ございませんでした」
「謝罪されなくとも結構ですわ。他国の者に選ばれるのは、気分の良いものではありませんもの」
これは誰のせいでもない。まあ、サウスエッドに精霊術士が増えれば、こういう状況は無くなるだろう。
ということで、サウスエッド国王と王妃、うちの王太子殿下や妃殿下達の茶会に参加している。国王は、やはり娘がいるのが嬉しいのだろう、ニコニコしている。
「此度は、様々な知識を学ばせて頂けて、感謝する。また、我が国にも精霊視を持つ者がいたのは喜ばしいことだ。そのうち貴国で学ばせて頂きたい」
「こちらこそ、感謝の念に堪えません。素晴らしい技術を学ばせて頂いておりますし、文化交流という観点でも、良き機会を頂きました。今後も交流を深めて参りたいものです」
和やかな雰囲気で話が進んでいたのだが、王太子妃殿下が
「お父様、お母様。報告がございまして……」
と言った。言い辛い事なのか、言い淀んでいたが
「実は……子供が出来たようなのです……」
おおっ、それは良い事だ!
「まあ!おめでとう!それは素晴らしい事だわ」
王妃がお祝いを言った。……のは問題ないのだが、何か国王が震えている。
「うおおっ!レイナが、レイナが、孫を……」
と叫んで、泣き出した。流石に、全くの部外者である私は、非常に気まずいが
「……王太子殿下、王太子妃殿下、おめでとうございます」
お祝いの言葉だけ言っておこう。なお、茶会はここで、お開きになった。
サウスエッド側の準備が整ったので、王太子殿下達とともに転移門に行くと、国王達も見送りに来ていた。王太子妃殿下に「体に気をつけてな」と何度も言っていたが、気持ちは解る。どうやら今回、侍従達が緊張していた様に見えたのは、王太子妃殿下の体調を気にしていたかららしいし。あと、宮廷魔導師長も一度ロイドステアに行くらしい。まあ、責任者なので当然と言えばそうなのだが。
皆が転移門に入ったことを確認し、起動させた。
ロイドステアに到着後、王太子殿下と妃殿下は陛下に報告に行き、私は宮廷魔導師長を連れて、受け入れ責任者である魔法大臣の所へ行き、大臣室で挨拶や話などをした。流石にこの場では、まともなことを話していた。宮廷魔導師長は、何日かこちらに滞在し、各受け入れ先の状況を確認して帰るそうだ。私の所にも来そうなのだけれど、国家間の関係にも影響するかもしれないし、どこまで付き合えば良いか微妙なところだな……。
話が終わった後、私は大臣から別途呼ばれた。
「大臣、御用でしょうか」
「貴女には、一応注意しておくべきだと思いましてな。基本的に交流の際は、知識を教えるのは担当の者に任せて頂きたい。貴女が直接教えると、想定以上の事をあちらに教えてしまいそうですので」
「承知致しました。あちらから依頼されても、私はその任にない、と断るように致しますわ」
なるほど。少々距離感が判らなかったので有難い。お断りの理由にさせて頂こう。
お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。
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