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第110話 災害対処の慰労と休日の約束

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

オクトウェス伯爵邸に戻ると、執事の方が出迎えてくれた。オクトウェス伯爵は、領行政舎に詰めているようだ。長雨の影響は他にも出ているようで、対策本部が設置されていたらしい。


「オクトウェス伯爵、堰については処置を完了しましたわ」


「導師殿、此の度は領民の命を救って下さり、誠に感謝いたします」


「私の力は、このような時の為に使うものですわ。それより、他の地域は大丈夫なのでしょうか?」


「領内各地の領警備隊が頑張ってくれたおかげで、他の地域には大きな被害は出ておりません。川が一部氾濫しておりましたが、そちらの方も収束しつつあります」


「安心致しましたわ。では、私は王都へ戻ります」


伯爵に別れを告げ、私は王都へ戻った。


オクトウェス伯爵家の馬車で、魔法省へ戻り、宰相府へ報告に行った。宰相閣下からは


「堰を決壊させずに済んだ。そなたは多くの国民を救ったのだ」


と、お褒めの言葉を頂いた。任務完了だ。




執務室に戻り、ニストラム秘書官にも、変更された予定などを確認し、その日は、書類業務を片付けて終わる筈だった……のだが、執務室で業務をやっていると


「フィリストリア、御苦労さま」


と、王太子妃殿下が入って来た。特に予定は入ってなかったよね?


「殿下、ご機嫌麗しゅう。ところで、このような所へ何用でしょうか」


「フィリストリアがオクトウェス領の貯水湖の決壊を防いだと聞いたので、慰労にね」


と言って、バスケットを前に出した。この香りは……お菓子?


「もしや、先日の砂糖を使ってこちらをお作りに?」


「ええ、そうなの。サウスエッド産の砂糖とは少々違っていたけど、侍女達と一緒に頑張って、何とか作ることが出来たわ。ウィルやお義父様、お義母様にも好評だったの。だから貴女にも作ったのよ?」


「それは誠に恐悦至極に存じます」


「そんな堅い事は言いっこなし。お茶にしましょう?」


そうだな。有難く頂戴しよう。ニストラム秘書官を呼んで、お茶を持って来て貰い、2人で頂いた。


「以前の茶会でも見ましたが、サウスエッドの甘味はこのようなものなのですね」


前世のお菓子で言うなら、巻いたクレープのような感じだ。


「もっと色々あるわよ?芋粉や玉蜀黍粉と、椰子の実を主体として作っているのよ。その他、交易が盛んになってからは、卵蒸しや砂糖漬け、小麦粉焼きや薄皮包みなども定番よ?サウスエッドの砂糖は砂糖黍から作られているから勝手が少し違うけど、それも楽しいわ」


卵蒸しはプリン、小麦粉焼きはホットケーキだったかな。薄皮包みは……恐らくパイか何かだろう。


「それらを、こちらでお作りになる予定はございますか?」


「実は今、サウスエッドから甘味職人を呼ぶ計画を立てているのよ。ほら、今人材交流の話を進めているでしょう?あの一環として、ね」


「それはアルカドール領としても有難いですわ。砂糖を作れるようになったのは良いのですが、どのように使うのかが判らず、今の所、領内と王都周辺にしか卸す予定がございませんの」


「あら、そうなの?勿体ないわね。では、どんどん甘味を広げて、砂糖の需要を高めないとね」


「美味しい甘味が増えますと、茶会もさらに楽しくなりますわね」


職人さんも来てサウスエッドのお菓子文化を広めてくれるなら、前世知識も加えて発展させると、色々面白いお菓子が出来るかもしれないな。楽しみだ。




次の日、出勤時にレイテアに派遣隊長の話をした。彼も再戦を望んでいると聞いて、レイテアはますますやる気になった様だ。二人の試合が早く見たいものだ。


今日は通常の業務だ。時間が空いたので、一度精霊課に顔を出してみることにした。パティの様子はどうだろうか。


精霊術士達の島は、最初に見た時は3人だったのだが、今は11人いる。もうすぐ3チーム、9人が帰って来るので、火山監視の1名を除き、20名が揃うわけだ。


「新しく来られた方々は、今どのようなことをなさっているの?」


「導師様、今はステア政府の規則や、精霊の事を勉強したりしています」


答えたのは、先日の洗礼の際にやって来た、サリエラ・ワグノルだ。同じ風属性ということもあり、フェルダナが相談役になっている。最初は戸惑っていたようだが、朝の魔力操作の練習を見ている限りでは、フェルダナが要領を教えていたりして、仲良くやっているように見える。


「そうですか。何か困っていることなどはありませんか?」


「たまに書いている言葉が難しくて、判らないことがあるのですが、フェルダナさん達が教えて下さるので、大丈夫です」


「それは宜しゅうございました。早く精霊課に慣れるよう、頑張って下さいね」


「はい、頑張ります!」


「導師様導師様、私も頑張ってますよ!」


もう一人の新人、ラクノア・ストラスだ。彼女の相談役は、確かアリネラだったかな。


「ええ、ラクノアさん。朝の魔力操作の練習を見させて頂いていますが、頑張っているようですね」


「私も、パティさんみたいにアンダラット法を習得しますよ!」


どうやら、一番新入りのパティが既にアンダラット法を習得しているので、発奮しているようだ。2人とも、やる気がある様で、良かったよ。


「そういえば、今度の休日、私とサリエラで、パティさんに王都を案内するのですが、導師様も如何ですか?」


「それは面白そうですわね……特に用事はございませんし、宜しくお願いしますわ」


精霊術士にも、外出時には護衛が付くことになっているから、私が同行しても、レイテアが増えるくらいであまり差が無いから、気兼ねなく参加できる。


「ちなみに、導師様は、これまでどういった所に行かれたのですか?」


パティが話に加わった。私がこれまで行った所は……


「そうですわね……王城とステア政府、大聖堂、商工組合、仕立屋、野外用品店、魔法研究所、騎士学校、魔法学校あたりでしょうか。後は収穫祭の時の出店などですわ」


「仕事関係が殆どですわね……」


ごめんパティ。私はそんなに出歩かないのよ……。


「では、工芸品店や、食事のできる所に参りましょう」


「ラクノアさん、そう言って頂けると有難いですわ」


このようにして、今度の休日に、私を含めた新人4人で、遊びに行くことになった。移動は基本的に私の家の馬車で移動する。私が家から宿舎まで迎えに行く算段だ。


思えば領では、こういう風に同年代の女の子と外出というのは無かったな。領主の娘ということで、周りが遠慮してしまったかもしれないが、そういう意味では、こちらに来て良かったな。


その後数日は、特に業務に問題は無く、休日となった。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


※ 玉蜀黍:トウモロコシ

  砂糖黍:サトウキビ

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