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第107話 魔法学校で講義を行った

お読み頂き有難うございます。

宜しくお願いします。

今週は週末にある魔法学校の講義準備で忙しく、あっという間に講義の日となった。早めに昼食をとり、精霊課長と一緒に、魔法学校に向かう。到着したところで、学校長の出迎えを受け、そのまま応接室へ移動した。講義の時間までここで待機する予定だ。


「導師様、この度は講師として来て下さり、誠に有難うございます」


「私などの話より、経験豊富な方々の方が宜しかったのではございませんか?」


「経験も重要でしょうが、権威ある方の言葉は、不確かなものに対しても信頼させることが出来ますから」


確かに、普通の人達は精霊が見えない。そういう意味で、私の言葉の方が有難い、ということかな。


そのような話をして、私と精霊課長は、時間まで待機していた。




暫く精霊課長と世間話をしていたところ、お呼びがかかったので、教場まで移動する。今回は大教場を使用するそうだ。内容は精霊課長と相談し、従来通りのものから少々アレンジを加えて講義する予定だ。また、学生からの質問については、精霊課長が手で「○」を出せば回答可、「×」を出せば回答不可、である。


教場に入ると、学生全員が起立をする。私が教壇に立つと「礼」と誰かが言って頭を下げ、直って着席した。この辺りは、騎士学校と同じだ。


「今回の特別授業は、お忙しい中導師様に来て頂いた。しっかりと講義を聞くように……そこ!見惚れるのは解るが、今は授業中だ!」


主任教官から事前の注意があったが、笑いを取るのはやめて欲しい。こちらがやりにくくなる。


「魔法学校の学生の皆様、主任教官殿から紹介に与りました、精霊導師を務めております、フィリストリア・アルカドールです。本日は精霊概論の講義をさせて頂きますので、宜しくお願いしますわ」


とりあえず学生達に挨拶して、一通り見てみると、殿下やイストルカレン様がいるのはともかく、お兄様は最前列に陣取っている。まあ、気にせず授業を始めよう。


「まず、精霊がどのような存在であるかは、御存じの方も多いでしょうが、改めて説明致しますわ」


精霊は元々、神様が世界を創る為に、最初に作ったとされている。世界を創造した後は、物質の流転を司る存在としての役割を与え、この際に、精霊の長たる精霊女王を任命し、精霊を管理させた。そして、人類が世界を治めるようになったある時、神様が「意思を持つ存在の事象変化の願いを実行せよ」と命じたことにより、人などが精霊の力を借りることが許された。それが魔法だ。


故に、魔法と精霊は非常に密接な関係にあるわけだ。この辺りを要綱に沿って説明した。貴族達なら知っていて当然だが、平民には知らない子も結構いるそうなので、教育要綱通りに、改めて説明した。さて、ここで少々アレンジだ。


「とはいえ、精霊は通常見えませんから、今一つ認識しづらいと思われますので、実際にお見せしますわ」


私の背後霊と化している各精霊に魔力を与え、姿を見せるように命じると、学生達が驚きの声を上げた。実は精霊は、加護を持った者が魔力を与えると、姿を見せることが可能だ。これも頂いた本に書いてあったから知ったことなので、正真正銘本邦初公開である。そりゃあ驚くだろう。ちなみにこの場合、属性関係なく見える。


「右から、火精霊、風精霊、水精霊、地精霊ですわ。各属性の色をしているので、お分かりでしょうが」


何かあまりにも食いつきが良すぎて、講義が進みそうにないので一旦姿を消して貰った。後からじっくり見て貰おう。




その後、精霊術に関する話をした後、魔法と精霊の関係をもう一度見て貰うため、火精霊に姿を見せて貰った。で、私は火属性のエネルギーを集めることにする。


「これから私は、火属性の力を手に集めますので、私の手と、その際に精霊がどのように動くのかを確認して下さい」


そう言うと私は、火属性のエネルギーを手に集める基本的な魔法を使った。火精霊は、私の意志を感じると、周囲から火属性のエネルギーを集め始めた。火属性のエネルギーは、他属性の人でも見えるので、こういう場合はうってつけだ。精霊の動きに、改めて驚きの声が上がる。


あまり集めるのは危険なので、ある程度集まったら、今度は分散させる。火精霊は意志通り分散させる。


「このように、私達が魔法や魔道具を使う際は、近くにいる精霊が意志を受け取り、事象改変を実行するのです。このため、魔法を行使する際の想像は、精霊が実行しやすいようにする必要があります。今後、皆様は様々な魔法を使っていくでしょうが、その際は、どうか精霊達への感謝を忘れないで下さいね」


と言って、再度精霊達を出現させて、一旦講義を締める。精霊を近くで見たい方は前へどうぞ、と言うと、学生が全員前へやって来た。精霊達も何だかビクついていたが、まあ許して貰おう。そこ、触るのは禁止だ。一通り見て貰って、席に戻って貰う。




では、精霊の姿を消して、質問タイムだ。


「どうすれば精霊視を得ることが出来るのでしょうか」


無難な質問だな。精霊課長のサインも「○」だ。


「それはまだ明らかにされておりませんが、一説には、精霊と接することの多かった者が、その環境に適応した、とも言われています。その証拠とされる事項の一つに、300年前から、我が国に精霊術士が増加している、ということが挙げられておりますわ。また、女性のみが精霊視を持つ理由も不明です。精霊が女性を好むから、とも言われていますが、こちらは風説の域を出ておりませんわ。ただし、妖精族の方は、男性も含め、全員が精霊視を持つため、今後合同研究などができれば、これらの謎が解明される可能性はありますわ」


実際これらは、精霊に聞いても判らなかった。神の領域と考えていいだろう。


質問した女子学生は、有難うございます、と言って着席した。次は……と。


「精霊女王様は、どのような方だったのでしょうか?」


ふむ。問題なさそうだ。精霊課長からも「○」だな。


「精霊女王様は、見かけは美しい女性でしたわ。髪は銀白色で、肌は透き通るように白く、瞳は黄金色に輝いておりました。しかしながら、その威厳は凄まじく、面と向かって話すことすら大変でしたわ」


質問した男子学生は、有難うございます、と言って着席した。次は……と。


「精霊を、諜報活動に使うことも可能でしょうか?」


何だか物騒な質問だな……まあ、当然「×」だよね。


「精霊課の業務にございませんので、何とも言えませんわね」


人間の活動は、通常の精霊には理解できない部分が多い。従って、精霊術士が諜報活動を行えるとすれば、特定の状況下でだろう。勿論、執事風精霊など、人間の事を相当理解しているであろう、特殊な精霊もいるわけだが、彼らは精霊女王様に直接仕えているからね……。ただし、私や妖精族が感覚共有すれば諜報活動は可能だろうし、多くの精霊を使って特定の情報を収集した結果、諜報活動のようになることもあるだろう。実際私は、領で諜報活動に該当する行為も行っていたが、それを言う必要はない。質問した男子学生は、有難うございます、と言って着席した。


「精霊が、自らの意思で人を襲うことはあるでしょうか?」


この女子学生は、目に見えない精霊を怖がっているのだろうか。精霊課長からは……「○」だな。


「精霊が、自らの意思で人に危害を加えることはございません。自然現象全てが精霊の意思に基づくものではございませんし、他の人間の悪意による魔法の結果もあるでしょう。通常は人に危害が及ばない様に物質を流転させておりますので、誤解のなきよう、お願い致しますわ」


女子学生は、少し安心したような風で、有難うございます、と言って着席した。次は……と。


「導師様は、2年前の戦いで、どのように精霊を使役して、ノスフェトゥス軍を撃退したのですか?」


これは言ってもいいのかな?……あ、「×」だ。では、話さない方向で。


「あれは少々条件がございまして……この場ではお話しできませんの。申し訳ございません」


男子学生は、残念そうに、有難うございます、と言って着席した。ここで、主任教官から


「まだ学生は質問し足りないでしょうが、時間となりました」


と言われたので、そこで終了する。学生達から礼を受け、教場を出て、校長室へ向かった。


「導師様、大変貴重な講義、有難うございました。学生達も、今後の励みとなるでしょう」


「そう仰って頂けると、行った甲斐がございました。では、失礼いたしますわ」


学校入口に停めてあった馬車に乗って、魔法省まで帰った。帰りの馬車で、精霊課長に質問した。


「課長殿、何故最後の質問、×だったのでしょうか?」


「あの場で説明されても、言葉だけでは解りませんから、実際に行う必要がございますが、正直な所、あまりに常識から外れた様に、収拾がつかなくなることが予想されましたので」


常識から外れた様って……課長、私の事をそういう風に見ていたのね……。

お目汚しでしたが、楽しんで頂けたのであれば幸いです。

評価、ブックマーク、いいね、誤字報告を頂ければとても助かります。

宜しくお願いします。


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