【閑話:義姉について】
「マリス、新しく家族となった子よ。貴方より一つ年上だから、お姉さんよ。」
僕の姉。
新しく入ったくせに優位に立たれるのは正直気に入らないな。そんな僕は不機嫌な顔をするのを抑えて、義姉の姿を見た。
「(…………⁉︎)」
驚いた。それはもう本当に驚いた。
人間離れした、という表現が適しているような見た目だった。真っ黒い長髪に真っ赤な瞳。黒髪だから東洋人かと思ったけど、あんなに赤い瞳を持っている東洋人はそうそう居ないだろう。
「僕はマリス。マリス・アイリス。……君は?」
「……エカチェリーナ…。」
謙虚そうに振る舞っていても凛とした声をしている。何だろう。彼女から……いいや彼女の全てから目が離せない。
僕ってこんなに面食いだったっけ?同級生でめちゃくちゃ可愛い子が居たけど僕は好きになれなかった。でも目の前に居る彼女を見ると胸の鼓動が少し速くなる。落ち着かない。
「まだ来たばっかりで慣れてないだろう?僕がお屋敷を案内してあげる。」
「ありがとう……。マリス…あっごめんなさい。馴れ馴れしかったかしら……。」
僕の名前を呼んだことを謝る彼女。そんなこと気にしなくていいのに。……あれ、これも何なんだ?僕は初対面の人には「マリス」って呼んで欲しくない。そうだったはずなのに。
彼女にはそうは思わない。むしろずっと呼んでほしい。それだけ彼女に夢中な自分が居た。
原因は何だ?やはり彼女の容姿なの?それとも声?
「(分からない……!更に分からないのは僕が彼女を独占したい、所有したいなんて思っていることだ‼︎)」
この魅力的な彼女を他の男に見せたくない、いや女にもだ!彼女が外に出たら周囲の人間が彼女を下品な目で見るに違いない。僕には分かっているんだからな。
「(とりあえず親交を深めておくか。僕の存在を彼女に刻み込んでやろう。)」
僕は決意した。この義姉を僕の所有物にしておこう、とね。