1−2.5 とある古き書物より
豊かなるひとつの星に、ふたつの命があった。
命短くも賢き者たち――ヒト。
命永くも優しき者たち――竜。
まったく別の信条を有しながらもお互いを尊み、強大なふたつの種族は世界に平和をもたらしていた。
やがてふたつの種族は時間をかけて交わり合い、ひとつの新たな命が生まれた。
ヒトの不屈の精神、そして竜の無限の魔力を有する強き者――“竜人”である。
徐々に数を増やした彼らはやがて、“世界の覇は我ら竜人にあり”と声高に唱えるようになった。
大地を焼き、海を干上がらせんばかりの猛進撃。
それに抗い続けた者たちがいた。
ヒトと竜による、平和を目指す連合軍である。
天地を分かつような両軍の戦いは永きにわたり、哀しみと声なき身体の山を築き上げた。
そしてようやく、彼らの願いと祈りは創世の神に届く。
神は白き炎で悪しき“竜人”たちをすべて灼いた。
傷ついた両種族は、崩壊した都に集結。
ヒトと竜の長は永遠に結ばれた絆を祝し、黄金色の杯を交わした。
それから世界は再び正しき時を刻み始め、穏やかな平和の苗床となったのである――。
『ゴブリュード興国記』より