表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
69/93

66話 挨拶と今後

「カルミアって言います。よろしくお願いね」


 目覚めたカルミアをロアナたち猫精族の元へ連れて行きつつ、事情を説明した後。

 彼女は挨拶をしつつ、ぺこりとお辞儀をした。

 また、カルミアを見た猫精族たちといえば、


「……えーっと、神様、なんですよね?」


「結構フレンドリーな感じだな……?」


「もっと怖そうというか、威厳に満ちた様子を想像していたけれど……」


 当然の如く、皆揃って驚いていた。


「私はあなた方の言う、神族……ってやつみたいだけれど。別に敬う必要はないわよ。これからここでお世話になる身だものね」


 さっぱりとした物言いのカルミアに、猫精族たちは顔を見合わせた。

 面食らったといっても過言ではないかもしれない。

 そして次にカルミアが放った言葉に、彼らは猫耳と尾をピンと立てることになった。


「さて、自己紹介はおしまいよ。次にここでの私の役割だけれど……一体何をするべきかしらね? 記憶がないまま追い出されても困るから、滞在させてもらう対価に、何かしら働ければいいのだけれど……」


「い、いやいや! 滞在も無償で大丈夫ですので! 我らの雑務を押し付ける気は毛頭ございませんので!」


 猫精族の一人が食い気味かつ凄まじい勢いでそのようにまくし立てる。

 けれどカルミアは「それじゃあ悪いわよ」と納得がいっていない様子だ。

 彼女は明るくありつつも、結構真面目な性格でもあるらしい。

 そんなカルミアがさらに何か言い出すより先、ロアナやミルフィが言う。


「あの、カルミア様。そもそも何かをするより、記憶を戻す方が先じゃないかにゃーって……」


「……私も同感。あなたの事情が分からないというのも、皆が不安に思う原因となる」


 ミルフィの的確かつ遠慮のない物言いに、カルミアも「確かに……」と黙り込んだ。


「ひとまずここでの顔合わせも終わったし、竜王様のところへ行こう。カルミアのやるべきこともそのうち分かるさ」


「……ん、分かったわ。レイドがそう言うなら従いましょう」


 そうして俺たちは次に竜王の元へ向かう運びとなった。

 ……ただしアイルについては本人の希望で動向せず、集落に残ることとなった。

 どうやらよほど神族が怖いようだった。






『お目覚めですかな、気分はいかがですか』


「問題ないわ。あなたが竜王ね、レイドやルーナから話は聞いているわ」


 竜王の住まう神殿にて、二人はそのように話し合う。

 カルミアが手を差し出せば、竜王は巨大な爪の先を差し出し、それで互いに握手とした。

 それから諸々の事情についてを俺から話せば、竜王は目を小さく見開く。


『なんと、記憶が……。絶大な力を持った神族が記憶喪失とは。他の種族が頭を打ったり、多大なストレスを受けて記憶を閉ざすなどとは、訳が違う。……竜脈の儀にて何故降臨なされたのかを知りたくあったが、これでは致し方ない』


「竜王様。ひとまず記憶が戻るまでカルミアには竜の国に滞在してもらう方向で考えているんですが、それは構わないでしょうか?」


『当然だ。神族である前に、カルミア様は記憶を失い困っている客人である。追い出す輩はこの国にいまい』


 こちらの提案に対し、竜王はそのように答えた。

 カルミアを見れば彼女も一安心といった面持ちである。


『それに先ほど、我が古き友らとも話がついたところでな。カルミア様が竜の国の住人に危害を加える心配がなければ自由にさせるべきであろうと。この様子では心配あるまい』


「勿論よ。私も助けられた身で迷惑をかけるような真似をするほど、恩知らずではないもの。何より危害を加えると言っても……私、レイドの言っていたスキルや魔術みたいな能力はあるのかしら。そもそもそれらについても思い出せないわね」


『つまりは神族としての能力すら一切を忘れてしまっていると』


 ルーナが確認すればカルミアは「残念ながらね」と応じる。


「今の私、猫精族より非力なんじゃないかしら。彼ら彼女らからは体から凄い魔力と、そこから生じる強力な膂力を感じたもの。あんな膂力は少なくとも私には宿っていないわね」


「でもそういうの、猫精族を見ただけで分かるのか」


 猫精族の膂力は凄まじいものの、実際に目で見なければはっきりと伝わらないものだ。

 するとカルミアは目を瞬かせた。


「分かるわよ? たとえばレイドとルーナにもこう、繋がりを感じられるもの。これが魔力によるテイムの繋がりなのかしらね」


「おお……」


 思わず感嘆してしまった。

 魔力は本来、感じることはできても、魔術などで出力されなければほぼ目視できないものだ。

 精霊であるミルフィは魔力を色で認識できるものの、カルミアの目はより正確な形で魔力やその働きを捉えているようだった。

 これも神族の能力の一端なのだろう。


『カルミア様、ちなみにではありますが。我らの直下に流れる魔力はどう見えておりますかな?』


 竜王が問いかければ、カルミアはじっと目を凝らすようにして足元を見つめる。

 その数秒後、彼女は驚いたように目を見開いた。


「えっ……これ、よく見れば魔力の流れ……⁉ 地下に巨大な大河が流れているように見えるけど、これが……⁉」


 カルミアの言動に、竜王は『それはそれは』とどこか満足げだ。


『カルミア様が驚くほどに魔力が流れているのであれば、竜脈の儀は成功と言ってよさそうでありますな。これでしばらくの間、卵や幼竜の成長に問題はなしと』


 朗らかに笑う竜王。

 儀式の成功を神族に確認してもらう、これ以上の確かめ方はないだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ