EX ロアナと竜騎士戦闘術
【神竜帝国のドラゴンテイマー】
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ヴァーゼルとの戦いから少し経過した頃。
体もある程度の治癒が完了し、俺はなまった体を動かし、体力も戻そうと考えていた。
心配するルーナがいないうちにこそっと部屋を抜け出し、外へと出る。
時刻は昼過ぎで、猫精族たちも大半が竜の世話などの仕事中だ。
今なら一人で自由にできると、俺は体を動かしてみるものの……。
「くぅっ、まだ少し動きが鈍いな……でも」
今の体でどこまでやれるのかと思い、俺は思いきって構えを取った。
──神竜帝国式・竜騎士戦闘術! 穿竜堅醒!
腰をひねって、右拳を捻り込むようにして放つ突き技。
それは近くの大樹にドスン! と炸裂するものの、木の葉を散らす程度に終わった。
「やっぱり動きにキレがない……しばらく寝たきりだったから仕方ないかぁ」
あまり筋力や体力が衰えると古竜たちの世話にも支障が出る。
また鍛え直しかなと思っていると、
「おお~、流石はレイドお兄ちゃん! やっぱり凄いパンチだね!」
声がした方を見れば、ロアナがやってきていた。
猫耳や尻尾を揺らし、ぱたぱたと駆けてくる。
「猫精族のロアナほどのパワーはないけどな」
「でもでも、結構いいキレだと思うよ? それと今の、神竜帝国式・竜騎士戦闘術……だよね?」
「一応はな。それがどうかしたのか?」
問いかければ、ロアナはこくりと頷く。
「うん。実はレイドお兄ちゃんが前々から使っていたその戦闘術、気になっていたの。その、少し教えてもらってもいい? 私もそろそろ力以外に、技も磨きたいなって思ったの」
ロアナの言うことには一理ある。
これまでロアナは猫精族特有の高い身体能力で活躍してきた。
俺のテイムによる強化の影響もあり、その身体能力は並の猫精族の大人を瞬間的に上回るほどだ。
とはいえ現状のロアナは膂力一辺倒というか、技術面が伴っていない印象だった。
だからロアナに神竜帝国式・竜騎士戦闘術を教えるのは彼女のレベルアップという意味ではいいと思うけれど……。
「でもロアナ、今はこれまでみたいに焦って強くなる必要はないんだぞ? 魔族はアイル以外ほぼ全滅したと思うし、魔王討伐で魔物の動きも沈静化している。ロアナの目的だった猫精族の集落奪還だって、今の俺たちなら十分可能なはずだ」
そう、元々ロアナは故郷を魔物から奪い返すため、力を欲していたのだ。
しかし魔物が落ち着いた今、猫精族の故郷に魔物が居座っていたとしても、古竜たちが出向いて行けばそれだけで魔物も逃げ出すだろう。
それに魔物をまとめて指揮していた魔族がいない今、もしかすれば現状の猫精族のみでも故郷の奪還は可能かもしれない。
最早、幼いロアナが戦う必要もないように思われたものの、ロアナは首を横に振った。
「レイドお兄ちゃんの言うとおりだけど、でもやっぱり強くなりたいの。レイドお兄ちゃんや姫さまたちが魔王と決着をつけに行った時、私はお留守番だったでしょ? 次にああいうことが起こった時、今度は力になれるようにしたいの」
「ロアナ……そっか」
ロアナの瞳には強い覚悟があるように思える。
そこまで言うのなら、神竜帝国式・竜騎士戦闘術を教えてあげるのもいいだろう。
「分かった。でも俺のは半ば我流かつ見様見真似の代物だ。それでもいいなら教えるよ」
「本当!? ありがとう! それと我流でも見様見真似でも構わないよ。お兄ちゃんがその戦闘術で魔物や魔族たちを倒したのは本当だもん。もしかしたら、本家の戦闘術より完成度が高かったりしてね」
中々に嬉しいことを言ってくれるロアナ。
それじゃあ今からでも始めようか……と思ったその時。
『レイド。ロアナに戦闘術を伝授するのは構いませんが……まさか今のレイド自身で激しく技を放ってロアナに見せたりはしませんよね? 病み上がりのその体で』
振り向けば、珍しく少し怖い顔をした人間の姿のルーナがそこに立っていた。
小さく頬を膨らませ『無理は禁物です』と言わんばかりの表情だ。
「あ、ああ。勿論だよ……。ひとまずロアナには口頭で教えるから……」
するとルーナは『なら安心ですね』と言ったものの、今度はロアナが「ええ~。また見せてほしかったのに~」と小さくむくれてしまった。
結局、それからはロアナに口頭で技を教え、実際に見せて伝授するのはまた後日ということになった。
ただし……。
『レイド、こんな形でよいのですか?』
「おお……ルーナ、意外と筋が良いなぁ」
「姫さま凄い! もうできているなんて……!」
練習にいつの間にか、興味を示したルーナも参加し始め、ロアナの修行のつもりがいつの間にかルーナの形稽古のような感じにもなっていた。
本人曰く『レイドの神竜帝国式・竜騎士戦闘術を誰より近くで見ていたのは私ですから。あなたの動きはちゃんと覚えています』とのことだった。
ロアナもだけれど、ルーナも嬉しいことを言ってくれて、俺としても少しほっこりしたのだった。
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