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神竜帝国のドラゴンテイマー  作者: 八茶橋らっく
1章 竜姫との出会い
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6話 ドラゴンテイマー追放後の帝国

「くくっ。これでレイドの奴に支払っていた多額の給料も、今後は趣味のドラゴン購入に費やせるというものよ」


 レイドに追放処分を下した皇帝は翌日、自室にてワイングラスを片手にほくそ笑んでいた。

 さらに次に購入するドラゴンたちのリストを上機嫌に指で追い「クククッ」と脂肪のついた体を揺らす。

 また、この皇帝が追放したのは何もレイドだけではなかった。


「ドラゴンは高いが人の雇用にも金がかかる。ならば人の方を次々にクビにして財源を確保し、趣味のドラゴン購入に回せばよい! そうすればドラゴンは増え、帝国は強大化していく! まさに一石二鳥よ!」


 ああ、なんて天才的なのだろうか。

 先代の皇帝であった父上も宰相だったクリスも、常に財源確保で悩みきっていたが、なぜこんな簡単な策を思いつかなかったのか。

 特にドラゴンテイマーなどと、多額の給料を出していた割に微妙な働きしか見せなかった愚か者は早急にクビにするべきであったのに。

 父上はきっと大間抜けだったにちがいない、とっとと病死して自分に帝国を譲り渡して大正解だ。

 ついでに口うるさかったクリスも首尾よく病死として始末できて何よりと、皇帝は有頂天と化していた。


「それに帝国を抜けたらしいレイドの奴も今頃は、口封じに放った追っ手により息絶えている頃だ。くくっ、事が上手く運ぶと清々するわい」


 そんなふうに呟きつつ、ワイングラスを口元に近づけた皇帝であったが……


 ──ゴォン!!! ガガガァァァァァァァァン!!!!!!


「うっ、うあぁ!?」


 大きな揺れに、彼はワイングラスを取り落とした。

 ビシャリと床に赤い華が咲き、カーペットにシミを広げてゆく。


「なんだ、何事だ!?」


「陛下、大事でございます!」


 部屋に転がり込んできたアゾレア宰相に、皇帝は癇癪気味に尋ねた。

 こいつとは幼馴染だが、肝心な時に役に立たんと内心で悪態をつきながら。


「これは何の揺れだ! 常勝不敗を誇る我が帝国の竜騎士たちは何をしておるか!」


「そ、それが……謀反です!」


「謀反? それこそ竜騎士を招集し、素早くことを収めぬか!」


 反論は許さない、そう表情で告げている皇帝へとアゾレア宰相は震えた声音で告げた。


「畏れながら申し上げます。謀反を起こしたのは他ならぬドラゴンたちなのです! 餌をやるために竜舎の柵を開いたところ、普段の大人しさが嘘のように一斉に飛び出し……」


『グオオオオオオオ!!!』


 次の瞬間、皇帝の自室にドォン!!! という轟音と共に大穴が開いた。

 彫刻品の数々や壁画は粉々に砕かれ、部屋は瓦礫の散乱する荒場となった。

 捲き上る砂煙の中、アゾレア宰相は青ざめながら、口角に泡を立てて呟いた。


「今のはブレス! そんなまさか!?」


『グルルルルル……!』


 低く唸り声を上げ怒りながら皇帝の前に現れたのは、竜舎に住むドラゴンたちのまとめ役のフェイであった。

 緋色の甲殻を陽で照らし、全身の筋肉を鱗越しに隆起させ、戦闘態勢を整えている。

 怒れるドラゴンの姿に、皇帝も宰相も何故、と驚愕を顔に貼り付ける。

 まさかレイドの追放がドラゴンたちの怒りを買ってしまったとは、一分たりとも理解できていない様子である。

 だが、事態はこの程度では収まらない、

 家族同然のレイドを追放した上に命まで狙った皇帝への怒りを胸に、フェイ以外のドラゴンたちも続々と集まってくる。

 生来耳のよいドラゴンたちが聞き耳を立てれば、皇帝がレイドを狙って暗殺者を放ったことなど壁越しでも筒抜けなのだ。

 火に油を注ぐかの如き愚行に、元々温厚なはずのフェイたちの怒りは最早、抑えが効かぬ状態まで達していた。


『グォォォォォォォオオオ!!!!』


『ガァァァァァァァアアアアア!!!!』


 フェイの咆哮に応じ、空竜たちは建物を砕き、瓦礫に変えてゆく。

 幸い人を踏み潰さぬ程度の理性は残っているようだが、逆に人を踏み潰す以外ならば、暴れ放題という意味でもある。

 ドラゴンたちに守られし聖域、神竜帝国の宮廷は、皮肉にもドラゴンたちの手で更地に変わってゆく。


「ま、待て貴様ら。面倒を見てやった恩を忘れたのか? 我はこの帝国を統べる者。い、いかに寛大でドラゴン収集が趣味である我とて許せぬものが……!」


『グオオオオオオオオオ!!!!!』


 周囲のドラゴンが一斉に咆哮を上げ、皇帝を圧倒する。

 最後にブレスを天高く放って、その余波で皇帝を転がした。

 凄まじい圧力に皇帝は失神する直前、思い知った。


 ドラゴンの持つ本来の凶暴性を。

 これら全てを押さえ込んでいた、レイドの手腕の凄まじさを。

 そして何もかもが、もう手遅れであったと。


 この日を境に、神竜帝国レーザリア全土のドラゴンたちは一斉に竜騎士たちを背に乗せなくなり、戦力として使いものにならなくなってしまった。

 竜騎士がドラゴンを操るための操竜術も、そもそもドラゴンに乗らなければ効力が薄いのだ。

 この原因は帝国全土のドラゴンたちが慕っていた若きドラゴンテイマー、レイドの国外追放にあることを、皇帝を初めとした神竜帝国レーザリアの人々はまだ知らない。

《作者からの大切なお願い》


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