56話 ウォーレンス大樹海へ
ガラードの弟分の古竜が示した場所は、ロレンス山脈の麓、ウォーレンス大樹海。
この場所は当初、帝国追放時に追っ手を撒くために通り抜けようとした魔物の群生地で、俺がルーナと再会した場所でもある。
「灯台下暗しって、確か東洋のことわざだったか」
準備を整え、ルーナの背に乗り空を行きながらそう思う。
しかし以前ルーナとこの樹海に来た時、彼女は特に封印術系の魔力を感知していなかったと言っていた。
それなのに最近になって俺の扱う封印術と似た気配を古竜が感じ取ったということは、樹海のどこかにある封印が弱まり、外部へ魔力が流出している証拠と考えられる。
『よもやあの樹海に魔王が封印されている可能性があるとは。わたしたちが再会した地であることも含めて、まるで運命の様ですね』
「始まりと終わりは同じ場所……そんなところかもな」
『柄にもなく詩的だな、レイド』
横を飛ぶガラードは普段通りに軽口を叩くが、あまり緊張しすぎるなというガラードなりの気遣いだろう。
また、ルーナ以上に大柄なガラードの背には、ミルフィとアイル、それにメラリアが同乗している。
魔王目当ての魔族と遭遇する可能性がある以上、今回ロアナは竜の国でお留守番を任せることとなっていた。
さらにルーナやガラードの左右や背後には、魔族の襲撃に備えて護衛の若手古竜たちがざっと十体ほど。
これだけ揃えば、たとえ神竜帝国が相手でも数日で焦土にできる域の戦力だ。
『じきに樹海です。野生の魔物も多いですから、各自気を引き締めてください』
そのまま俺たちは樹海に到着し、その際で降り立った。
その間、若手の古竜たちは上空から樹海を見張り、魔族や魔物を発見次第迎撃する手筈になっている。
『さて、確かこの樹海は決められた道を辿らなければ、元いた場所に戻ってしまう仕組みでしたね?』
「しかもその道筋は基本的に、俺たちの一族しか知らないって父さんから聞いてる。あの時はこっそり修行する場所に恵まれた、くらいにしか思ってなかったけど……」
今思えば、この樹海に魔物が多く生息する理由も、きっと封印中の魔王が影響を及ぼしているからではなかろうか。
……もし本当にこの地に魔王が封印されていればの話だが。
加えて代々ドラゴンテイマーの一族がこの地で修行を重ねてきた理由も、きっと元々は、封印の監視や有事の戦闘に備える意味もあったと推測できなくもなかった。
「運命の様……ああ、正にな」
ルーナの言葉を反芻するように繰り返すと、ルーナは首を傾げた。
『レイド、どうかしましたか?』
「なんでもない、行こうか」
そうして俺は、ルーナ達を連れて樹海の中へと入っていく。
同時に父とここへ来て道筋を教わった記憶が蘇ってきた。
……きっと歴代のドラゴンテイマーたちも、ああやって親から子へ道筋を伝えていったのだろう。
それを思うと、どこか懐かしいようで、顔も知らない先祖たちに導かれているような、不思議な気分に浸らされた。
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