55話 竜の国の動きと若手の古竜たち
ヴァーゼルの狙いがかつて魔王に敵対した種族の殲滅らしいと見えた今、竜の国では封印された魔王の捜索、及び魔族への警戒を古竜総出で行なっていた。
と言うのも、かの皇帝竜騎士の相棒が竜王の血族の祖である以上、古竜の住まう竜の国も全く無関係ではないからだ。
何より……
『お前ら! 何度も言うようだが、我らが姫様は魔族相手に一歩も退かなかったぞ。四天王直属の配下相手でだ! それに比べりゃたかだか封印中の魔王捜索、屁でもねぇ。お前らも気合い入れて取り掛かれやッ!』
『ガラードの兄貴がそう言うなら、俺らも手伝いまっせ!』
『姫様に手を出した魔族の野郎、ただじゃおかねぇ!』
『それと狙われてるらしいレイドさんって姫様の相棒だよな。つまり魔族ども、姫様の婿にも喧嘩を売ってきたようなモンなのか?』
『だったら尚更許せねぇ! 魔王とか言う野郎を見つけつつ、魔族共もブレスの消し炭にしてやっぞ!!!』
『『『うおおおおおおおおおお!!!!!』』』
『全く、あなた達は……そ、それにレイドが婿とは……』
ルーナは顔を赤くして『何を言っているのやら』と両手で覆っていた。
魔王捜索の任を主に担う若手の古竜たちは、兄貴分と慕うガラードに発破をかけられ士気も大爆発状態にあった。
ある程度歳を重ねた古竜は賢者のような落ち着きを漂わせ思慮深くもあるが、若い古竜は人間同様血気盛んらしかった。
各方面に散った若い古竜達を見送ってから、ルーナは顔を赤くしたままガラードに言った。
『……ガラード、少々やる気を出させすぎでは?』
『そう言うなよ姫様。やる気がねーよりマシってもんだろ。なぁレイド?』
「それは勿論。ただ喩えがちょっとアレだったけど……」
『ああ、婿みたいなモンってやつか。……間違ってるか? 仲睦まじいし』
首を傾げたガラードに、俺は思わず突っ込んだ。
「種族差があるだろ、種族差が」
『んなもん今更だろ。姫様もレイドも、古竜とか人間とかって垣根を取っ払ってここまできてんじゃねーか。何より俺ら古竜の精神構造は、知性を持つ分人間に相当近しいって聞くぜ。こうして人間にも変身できるから、肉体的な垣根だってぶっちゃけ……あたっ!?』
「ガラード殿、そこまでにしていただきたい。幼子も聞いているので」
「レイドお兄ちゃん、こんにちはー!」
ぺしっとガラードの頭を叩いたのは、いつの間にか現れていたメラリアだった。
それにロアナもやってきていて、俺へと擦り寄るようにじゃれてきた。
こういうところは種族的に猫っぽく思える部分だ。
『メラリアにロアナではないですか。どうかしたのですか?』
「問題なしとの定時報告です。若い古竜達が出払っている間、この竜の国の守護はメラリア達猫精族が請け負っていますから」
メラリアが言う通り、今の竜の国は猫精族も守っている。
理由は言わずもがな、魔族がいつ攻めてくるか知れないのと、主力となる若手の古竜が魔王捜索にあたっているからだ。
『左様ですか。このまま平和にいけば何よりなのですが……』
「大丈夫! 何かあってもあたしたちが守ってあげるからっ!」
小さな胸を張ってそう言うロアナに、その場にいた全員が和まされた。
何はともあれ、竜の国の動きは打倒魔族へと傾いていた。
猫精族に水精霊の一族のように、古竜種を根絶やしにされてたまるかという古竜たちの強い意志の表れでもある。
……そんなだからだろうか、およそその一週間後。
とある土地から強い魔力と、微弱ながら俺の使う封印術に似た気配を感じると、遂に一体の若い古竜から報告が入ったのだ。
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