53話 竜の国への帰還
『……ふむ、そうかそうか。魔王軍の四天王が魔物を使役し、各地の種族を滅ぼして回っておるとは』
竜の国にて竜王にことの顛末を報告すると、竜王はふむと目を瞑って唸った。
『お父様、これは竜の国にとっても大事やもしれません。かつて魔王に敵対した種族をヴァーゼルが潰しているとなれば、じきに竜の国にも魔の手が伸びる可能性があります』
『確かにな。ルーナの言う通りではあるが……。ワシが気になっているのはもう一つ。レイドよ、お主の出自についてだ。アイルとやら曰く、お主は皇竜騎士の末裔ときた。しかしお主はそれを知らずに育ち、両親も同様だったと』
「はい。俺はずっと、自分の一族は単なるドラゴンテイマーだと思っていましたから。正直、未だに半信半疑です」
『しかし魔族は古竜以上に生きる者もいると聞く。現にアイルとやらは古の時代、魔王が健在だった頃の存在。剣魔の六眷属の言葉もある以上、一概に冗談とも言えぬ。となればだ……確かめる必要があるな』
「確かめるとは、誰にですか?」
尋ねると、竜王はにっと笑みを浮かべた。
『単純な話よ。神竜帝国におるお主の家族である空竜たちに尋ねる。奴らの寿命は人間以上、であればレイドの先代や先先代の話も覚えているかもしれん。……もしかしたら、レイドに伝わっていないだけで、以前のドラゴンテイマーは自身の出自について多少なりとも知っていた可能性もある。何せお主の両親は、お主が幼い頃に他界したのであろう?』
俺はこくりと頷いた。
確かに俺の両親は幼い頃に他界しているし、もしかしたら俺に大切な何かを伝える前に逝ってしまった可能性もある。
『竜の咆哮は遠方まで届く。すぐに結果も分かるであろうから、数日ほど待つがよい。こちらもその間、魔族どもに対する備えを考えるとしよう』
竜王はそれから、俺たちの話を他の古竜たちにも伝えて話し合いを始めた。
この風は守りに使えるとか、古竜の国でブレスに長けるものはどうだとか。
それらの話は俺やルーナの入る隙間もなかったので、ひとまずは外に出た。
するとすぐそばに、猫精族たちが待ち構えていた。
「これはレイド殿、よくぞご無事で。メラリアたちから聞きました、なんでも魔族の襲撃を退けたのだと」
「皆で力を合わせて、どうにかですがね。でもお約束通り無事にメラリアたちを連れ帰りました。ですからどうか、今回の件についてメラリアたちの行動は大目に見てくれませんか?」
「構いませぬ。寧ろよくぞあの守護剣を持ち帰ってくれました。あの守護剣こそ、長く猫精族を守ってくれた守護神も同然の存在。それを再び我らの手に戻してくださったご恩、猫精族一同、生涯をかけてお返ししたく思います」
長を始め、その場にいた猫精族はぺこりと俺に頭を下げた。
あまりこういうのは慣れていないしこそばゆいが、彼らが安堵して喜んでくれたのなら、俺も素直に嬉しかった。
「あ、レイドお兄ちゃん!」
「レイド殿、お迎えに上がったぞ!」
「んっ、ロアナにメラリア」
集落の方から駆けてきたロアナとメラリアは、尻尾を左右に振りながら言った。
「レイド殿、宴の準備ができました。今宵は皆の活躍を称え、守護剣の奪還を大いに祝おうかと思うのです!」
「美味しいお肉もいっぱい準備してきたよーっ!」
『お肉……!』
傍にいたルーナがぴくりと反応した。
ルーナはスタイルこそいいものの、見た目からは考えられないほどによく食べる健啖家だ。
またガラードあたりと大食い対決をして大勝するのだろうと思い浮かべる。
「さあ、主役のお二人がこないと始まりませんから、お早く。お爺様たちも早く来てください!」
「我々は後でいい。先に若人たちで盛り上がってきなさい」
長の上機嫌な言葉に、メラリアとロアナは俺の手を引いて駆けてゆく。
この日は腹一杯美味い食事を楽しんでから、のんびりと宴を楽しんだ。
ルーナはやはり大食い対決でガラードに圧勝し、ガラードは酔いつぶれたかのようにぐったりしていた。
さらに猫精族秘蔵の酒を貰って楽しんだり、他の猫精族の少女たちに言い寄られているとなぜかルーナとロアナが怒り出したり。
ともかく騒ぐだけ騒いで、それから俺たちは眠りについた。
苦難の冒険を仲間と乗り越えて、一緒に美味いものを食べて騒いで眠りにつく。
やはりこの国に移り住んでよかったなと、俺は不思議な充実感を覚えていた。
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