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神竜帝国のドラゴンテイマー  作者: 八茶橋らっく
3章 猫精族と守護剣
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46話 猫精族の故郷と約束

 

「……なるほど、つまり先日のアイル襲来で危機感を覚えて、魔王軍や魔物に対抗すべく守護剣ってものを回収したいと」


「左様です。あの守護剣はかつて大いなる魔を払ったと言い伝えられる、メラリアたち猫精族の長の家系が代々継承してきた大切な剣。しかし、突然故郷に押し寄せてきた魔物たちを前に、守護剣を手にする余裕もなく……」


 メラリアは悔しそうに歯噛みしていた。

 その守護剣さえ手にできていれば故郷を追われることもなかったと、表情から読み取れた。


「先日も魔王軍の四天王は古竜を恐れず侵攻して来たどころか、実際にこの地を炎で焼きかけました。あの時もメラリアは仲間を連れて避難する他なかった」


 メラリアはぎゅっと拳を握りしめた。


「でもそれは、故郷を魔物に奪われた日の繰り返し。ただ怯え、逃げるしかない。……そんなことを繰り返したところで、ただでさえ数が少ないこの一族はいずれ魔物に……。だからこそメラリアたちは守護剣を取り戻さなければならないのです、奴らに対抗する力たる剣を」


 悔しそうなメラリアに、口を閉ざしていた長老が唸った。


「メラリアよ、お前の言うこともよく分かる。だがだからと言って、そのただでさえ数が少ないこの一族の者を魔物に奪われた故郷に、死地に向かわせることはできぬ。魔物への対抗策は守護剣とはまた別に、古竜と共に我々なりに考えてゆくということで納得してはもらえぬか」


 長老の言う言葉は唯一無二の現実的な解答に思えた。

 このまま古竜と助け合いながら共に生き抜き、魔物や魔族に対抗する道を模索するのが最も賢いだろう。

 ……けれどメラリアを見れば震えており、目元には雫が溜まっていた。


「しかし……お爺様! メラリアは誓ったのです。故郷が魔物に襲われたあの日、メラリアを庇ってあの世へ旅立った父と母に。いつか守護剣も故郷も魔物たちから取り戻し、一族の者と帰ってくると! それにきっとこのままでは、一族の者たちは全員竜の国にずっと居着いてしまう。あんなに素敵な故郷があったことも忘れて、魔物にはもう敵わないと、一族の営みと誇りをかつての輝きと捨てて諦めてしまう。メラリアはそれも、とても怖い……!」


 嗚咽を漏らすメラリアの言葉は、俺の心にも強く響くようだった。

 将来、猫精族をまとめる長になる者として、両親と約束を果たそうとする一人の少女として。

 メラリアなりに考え、その末に危険を冒してでも故郷に戻って守護剣を取り戻すと言うのだ。

 彼女自身のためにも、そしてこれから先も猫精族が魔物に脅かされず、誇りを持って生きていけるように。

 その末にいつか、猫精族たちが元いた故郷にも戻れるように。


「メラリア、君の話はよく分かったよ。魔物に奪われた故郷に戻るなんて、無謀なことを言い出した理由も」


「……ならばレイド殿も、無謀だから諦めろと言うのですか?」


 メラリアの瞳には、思いを否定されるのではという恐れが見えた。

 だからこそ俺は「いや」と首を横に振った。


「そんなに強い思いがあるからこそ、俺も力を貸したくなったよ。俺の一族は、もう俺しか残っていないけどさ。でも一族を、家族を大切にしたいってメラリアの思いはよく分かる」


 そう、メラリアの思いの根っこにあるのは間違いなく、家族を大切にしたいという思いだ。

 両親との約束を守りたい、家族同然の一族の将来を守りたい。

 大好きな家族を早くに亡くした俺だからこそ、メラリアの家族を大事にしたいという思いは痛いほどに分かった。


「レイド殿、では……!」


「猫精族の故郷へ、俺も一緒に行く。君を導く力になる。それで危ないけどルーナにも一緒に来てくれるよう頼んでみるよ」


 それから俺は改めて長老に向き直り、頭を下げた。


「長老さん、どうか俺やメラリアが猫精族の故郷へ向かうのを許してはいただけませんか。必ず無事に守護剣を回収して、メラリアたちも無事に連れ帰るとお約束します」


「……うむ。古竜の姫を従え、魔王軍四天王の一角を破ったレイド殿がそこまで仰られるのであれば。この老骨、未来を切り開いてゆく若人の力を信じたく思います。我が孫娘を、どうか頼みますぞ」


 長老は暖かな声音で、鷹揚に頷いてくれた。

 それから俺たちは、猫精族の故郷があった場所へ向かう準備を進めていった。


《作者からの大切なお願い》


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