45話 猫精族の困りごと
アイルがやって来てしばらく経ったある日、猫精族の集落が何やら騒がしくなっていた。
「あれ、何かあったのか?」
『どうやら猫精族の一部が故郷に戻りたいってゴネてるらしいぜ? 猫精族の長の証である守護剣ってやつを回収したいとかでな』
あくびをしながらそう言うガラードは、騒いでいる猫精族たちを遠巻きに見守っていた。
面倒な話を嫌うガラードとしては、特に首を突っ込む気もないらしかった。
俺は様子だけでも見てみようかと近づくと、ロアナが困り顔で駆けて来た。
「あ、レイドお兄ちゃん! お願い、ちょっと来て!」
「んっ、どうかしたのか」
ロアナに手を引かれて、わちゃわちゃとしている猫精族たちの中へ連れて行かれる。
すると猫精族の少女と長老を中心に、若人と老人たちが言い争っている様子だった。
しかも中心にいる少女の方は長老の孫娘で、確かメラリアという名前だったと記憶している。
そして魔物に襲われた両親が亡き今は、あの子が次期猫精族の長になるのだったか。
「お爺様。何度でも言いますが、メラリアたちは一度故郷に戻るべきです! 先祖が代々守ってきた守護剣がなければ、再び魔物に襲われた際に仲間も住処も守れません!」
「しかし我らの故郷は今や、魔物の巣窟と成り果てた。そのような場所に未来ある若人を行かせる訳にも、ましてやただでさえ数の少ない一族の者を向かわせる訳にはいかん」
聞けばどうやら、ガラードの言った通りに魔物に奪われた猫精族の故郷へ戻るか否かの話で揉めているらしい。
さらに話もより熱くなり、一部の若者は「この老害どもめ、メラリア様の話が分からぬか!」と掴みかかろうとしている始末だった。
「お兄ちゃん……」
ロアナが困り顔で俺を引っ張って来た理由がよく分かった。
このままだと怪我人が出かねないし、メラリアたちが強行しかねないと。
「仕方がない。封印術・竜縛鎖!」
俺は封印術を起動し、メラリアたちと長老たちの間に鎖を数本引いた。
突然の魔術の発動に猫精族が黙り込む。
メラリアは目を細めてこちらを見つめた。
「これはレイド殿、一体どういうおつもりで?」
「単なる仲裁だよ。ひとまず子供たちも不安がっているし、全員落ち着かないか?」
するとメラリアたちも長老たちも、不安げにしているロアナたち子供を見てバツの悪そうな表情を浮かべた。
大人ならもっと静かにことを済ませるべきと思ったのだろう。
それから猫精族たちは怒気を引っ込めて落ち着いていった。
「それで故郷に戻るか否か、だったか。もしよければ少し教えて欲しい。やるならやるで、俺にも力になれることがあるかもしれない」
「レイドお兄ちゃん……!」
どこか安堵した様子のロアナの頭を、俺は軽く撫でた。
流石にあんな表情のロアナを放っておけないし、一緒に暮らす猫精族の問題となればできるだけ解決してやりたい。
それから俺はメラリアたちの家に連れて行かれ、そこでゆっくりと事情を聞いた。
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