44話 ミルフィと世継ぎ
「……よいしょっと、ふんっ!」
ある晴れた日、屋外にて。
魔力を練り出して魔法で水流を放つ、ミルフィの姿があった。
その先には古竜たちがいて、バシャバシャとシャワーのように水流を浴びて鱗や翼を綺麗にしている。
実は最近、ミルフィも古竜たちの世話に加わるようになったのだ。
『かーっ! やっぱしミルフィちゃんの水は清くて気持ちがいいなぁ』
『やっぱり精霊なだけあるよ。いい力だね』
「……そう言ってもらえて何より。わたしも頑張り甲斐がある」
ミルフィの水は古竜たちからも好評で、魔力が混ざっているだけあって鱗の成長にも良いようだった。
それからミルフィは水を生成し続けていたが、まだ精霊として成長しきっていないからか、魔力切れでへたり込んでしまった。
「ミルフィ、大丈夫か?」
「……平気。そのうち魔力量も多くなるから、見ていて」
「今はまだまだ少ないんだから、頑張りすぎも良くないぞ?」
魔力は使えば使うほど、自分の体に溜められる魔力量も多くなっていく。
筋肉が鍛えれば鍛えるほど強くなるのと似たようなものだ。
しかし筋肉と同じく、成長しきっていない体で過度に魔力を扱うのも良くない。
『そうだぜミルフィちゃん。レイドの言う通り、頑張りすぎはよろしくない。俺たち古竜もミルフィちゃんみたいな精霊も、この先長いんだからよ。たった数十年生きただけで体を大きく壊しても困るってもんだ』
そう言うのは、若い雄の古竜であるガラードだった。
ガラードとは俺も最近知り合ったのだが、若い古竜たちの兄貴分的な存在で面倒見もよく、こうしてよくミルフィを気にかけてもいるらしかった。
「……レイドもガラードもそう言うなら、気をつける」
『ああ。そうだぜそうだぜ。それにミルフィちゃん、最後の水精霊でお姫様なんだろ? つまり血を絶やさないためにはそのうち世継ぎも作らなきゃならん訳だしな。本当に体には気をつけた方がいいぜ』
「……ん。わたしもゆくゆくはと考えていたところ。水精霊がわたしだけなのも寂しいから」
ミルフィがそう言った直後、なぜだか俺の方を見る古竜たち。
「おいおい、皆揃って何だよその視線は」
『いやー、まぁな? 世継ぎを作るってつまり男も必要だろ? そんで種族的にも近くて一番ミルフィちゃんに親しい男って言えば……なぁ?』
ガハハハハ、と茶化すように笑うガラード。
ガラードは気のいいやつなのだが、まだ若いからかどうにもこの手の話が好きなのだ。
……しかしガラードの笑い声もそう長くは続かなかった。
どこからかルーナが現れ、妙に圧力のある笑みを浮かべていたからだ。
『ガラード、人の相棒を捕まえて下世話な話とは良い度胸ですね?』
『げぇっ、姫様!? い、いや違うんだ。ちょっとふざけただけって言うか……ヒッ!』
ルーナの圧力に耐えかねたのか、ガラードは飛んで逃げた。
その背を追い、ルーナも即座に飛び立つ。
さらに周りの古竜たちは『いつも通りガラードが捕まるに薬草十本』『じゃあ僕は大穴で、ガラードが運良く逃げ切る方に』と謎の賭けを始めていた。
当のミルフィは疲れたのか、我関せずといった様子で昼寝を始めてしまった。
「まあ、これはこれで平和……なのか?」
なお案の定、ガラードはルーナに捕まり普段通りに説教を食らっていた。
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