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神竜帝国のドラゴンテイマー  作者: 八茶橋らっく
1章 竜姫との出会い
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4話 古竜との再会

 宮廷や俺の実家のある帝国の第一区といくつかの区を抜けて東へと進み、兵士の目を盗んで川を渡り、検問を通らずに帝国を抜ける。

 夜分に黒い外套を纏っていたこともあり、俺は目立たずに行動することができた。

 そしてさらに東へと進んだ先、深夜までにウォーレンス大樹海と呼ばれる森に到達していた。

 この大樹海は魔物の生息地だが、俺はあえてこの地へやってきた。


 ──この樹海の先にはロレンス山脈がある。そこさえ越えられれば、追っ手がかかっても俺を見つけにくいはずだ。


 しかもこの樹海は迷路状に入り組んでいて、ロレンス山脈へ向かうには決められたルートを辿らなければ元いた場所に戻ってしまう。

 昔はよく魔術の修行で父さんと来た場所だが、いつ現れるか分からない追っ手を撒くならここを通るべきだろう。

 もっと言えば、この付近で行方不明になった者は、魔物の餌食になったと判断され捜索を打ち切られることも珍しくない。

 上手くいけば、魔物により殺されたと見せかけることも可能だろう。


 樹海の縁、木々の裏から魔物がいないか様子を窺う。

 ……すると深夜の月明かりの下、よく見れば樹海の手前で銀髪の少女が立っているのが見えた。

 歳はまだ若く、俺と似たような年齢だと思うが驚くほど整った顔立ちをしている。

 思わず見惚れてしまうほどで、薄い衣服と合わせて月の妖精と見紛うほどに美しかった。


「……いや、見惚れている場合じゃないな」


 何の用事があってここにいるのか分からないが、あそこに立っていては危ない。

 見るからに武装していないし、魔物から見れば格好の餌だ。

 思わず声をかけようと木の裏から飛び出した、その刹那。


『あっ……!』


 少女がこちらに気づき、なぜかとても嬉しそうに、明るい表情を浮かべた。

 だが彼女の背後の木々が倒れ、突然コボルトの大型種であるハイコボルトが飛び出してきた。

 コボルト種は狼型の魔物で、黒い体毛と素早い動きを生かし、夜分の狩りを得意とする。

 やはり既に魔物があの子を狙っていて、襲いかかる機を窺っていたのだ。

 

『グォォォォォォォン!!!』


「……っ!?」


 目を見開き、迫り来るハイコボルトを呆然と見つめる少女。

 距離的にはハイコボルトの爪が少女に到達するまで秒読みだが、それをむざむざ許すほど、俺も他人に興味がないわけではなかった。


「封印術・竜縛鎖!」


 駆け出す勢いのまま、俺は十八番の封印の魔術を起動させる。

 魔術、それは神様から授かるスキルを人間なりに解析し、生命エネルギーである魔力を消費することで発現させる権能。

 魔術は体内の魔力消費と共に「何をするか」を明確にイメージし、魔術ごとの魔法陣を虚空へ展開することで起動する。

 そして俺の得意魔術である封印術は、魔法陣から鎖を召喚し、対象に縛り付けて使うタイプのものだった。


『キャウゥン!?』


 鎖がハイコボルトの全身を雁字搦めにし、動きを完全に封じ込めた。

 ドラゴンテイマーの一族はドラゴンが暴れた際に抑えるため、こういった封印術を会得するものだ。

 そして最強の魔物と名高きドラゴンすら縛り付ける封印術は当然、並大抵の魔物の動きなら一瞬で抑えられる。


「ふんっ!」


 さらに駆け寄った勢いのまま自衛用の短剣を引き抜き、ハイコボルトの喉元に突き立て絶命させる。

 ズドン! と人間の倍以上の体躯を誇るハイコボルトが倒れると、少女は呆気に取られた表情でこちらを見ていた。


『……ああ、また助けていただけるなんて。それに今の手際、やはりあなたはお強いのですね』


「んっ、どこかで会ったことが?」


 しかしこんな可愛い子、残業まみれの生活を送っていた俺と接点なんてあるのか。

 毎日竜舎と実家を行ったり来たりで、生活の大半は仕事が中心で、可愛い女の子どころか休暇すらほとんど……いや、虚しくなるからこれ以上はやめよう。

 思い出してうなだれていると、少女は微笑み、眩い光を放って言った。


『分からないのも無理はありませんね。では、こちらの姿なら思い出していただけますか?』


 光を放った少女の姿は次の瞬間、その姿を大きく変貌させていった。

 小柄な体はハイコボルトすら上回る巨躯となり、大地を踏みしめる四肢が現れる。

 次に振るだけで大岩すら砕く強靭な尾と、大空を掴むような雄々しい翼。

 最後に光が収まった時、少女は白銀の鱗と甲殻に身を包んだ銀竜となっていた。

 

 ──変身系の魔術、それも相当に高度なものだ。


 自身の質量や体積すら無視して竜が人間に変身するなんて、尋常ではなかった。

 ここまで高度な魔術を扱う竜種となれば、古竜と呼ばれる、古より生きる竜種の頂点に他ならない。

 帝国で竜騎士が乗るドラゴンは空竜種と呼ばれる前足が翼のタイプで、比較的新しく進化した竜種とされているものだ。

 一方古竜は背中から独立した翼が生える、四足歩行のドラゴンだ。

 そして目の前の銀竜について、俺は見覚えがあった。


「まさか君は……三年前に助けた古竜かい?」


 呟きながら、かつての記憶が蘇る。

 俺は三年前、病で弱っていた古竜をこの辺りを通りかかった際たまたま見つけ、しばらく帝国と樹海を往復して手当していたのだ。

 激務のあまり忘れていたが、当時から美しい古竜だったと記憶している。

 古竜はこくりと頷き、目の前にしゃがんだ。


『名乗り遅れましたね、わたしはルーナと申します。ドラゴンテイマーのレイド。あなたの窮地を聞きつけ、わたしはこの地に戻ってまいりました。どうか共に、わたしたちの暮らす竜の国へ来てはくださいませんか?』

《作者からの大切なお願い》


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