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神竜帝国のドラゴンテイマー  作者: 八茶橋らっく
1章 竜姫との出会い
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3話 ドラゴンとの別れ

「父さん母さん、すまない。俺が不甲斐ないばかりに国外に追放される羽目になった。この屋敷もじきに取り潰しにあうだろう」


 実家の屋敷にて、今は亡き両親の映る肖像画に向かい、俺は頭を下げた。

 俺の実家であるドライセン家は、代々宮廷にドラゴンテイマーとして仕えていたので帝国の一等地に屋敷がある。

 周囲も名のある貴族家に囲まれ、子供心ながら、中々に誉れ高く感じていたのを今も覚えている。

 最近は日々の残業であまり帰れなかったとは言え、それでもここは俺が生まれ育った実家だ。

 離れるとなれば深い悲しみがあるが、これから先は急がなければならない。

 俺の見立てては恐らく、命すら危ないからだ。


「果たして、国外追放で済むもんかな……」


 いいや、ほぼ確実にそれだけでは済まないだろう。

 俺が他国へ渡りこの帝国のドラゴンに関する情報を流す可能性がある以上、皇帝は俺を国外で事故か盗賊の仕業にでも見せかけて暗殺するはずだ。


 俺たち一族が育ててきたこの帝国のドラゴンたちは強大であり、敵を阻み屠る、盾であり鉾として他国に恐れられてきた。

 帝国がドラゴンによって他国よりも優位である以上、ドラゴンに関する情報を膨大な量抱える俺が皇帝に見逃されることは決してないと考えるべきだ。

 それにあれだけ大胆に、代々貴族家同然に抱えてきたドライセン家の末裔である俺のクビ宣告を行い、その前には宰相の首すらすげ替えていた皇帝だ。

 軽挙妄動に出たところで何らおかしくない。


「まあ、宮廷に仕えていた人間をおおっぴらに処刑するってのも人聞きが悪いだろうし。その点もあって国外追放後に追っ手がかかるのは間違いないとして……」


 それをどう撒くかが問題だ。

 いっそのこと世話をしていたドラゴンに乗って逃げるのも手だが、そうなれば協力してくれるドラゴンを危険な目に遭わせる。

 万が一追っ手として竜騎士が出てきて上空で撃墜されてしまえば目も当てられない。


「……やっぱりこの手は無しだな。でも国を出るなら最後に、ドラゴンたちに知らせていかないと」


 皆気のいい奴らだから、いきなりいなくなったら驚くだろう。

 何より帝国に残していく他ない彼らには、真実を教えておきたくもあった。

 俺は使用人達への退職金と事情を記した書き置きを残し、旅の準備を整えてから夜分に屋敷を出た。

 宮廷近くの竜舎を囲う塀には、夜中でありながら、侵入者を警戒する見張りの兵士たちが詰めている。

 しかしここは勝手知ったる我が竜舎、兵士の交代タイミングを見計らい、塀に開いた古い穴を使って竜舎に忍び込んだ。

 そしてひっそりとドラゴンたちを起こしてゆく。


「眠っているところ悪いな、皆。今日は別れを言いにきた」


『別れ? どういうことだレイド』


「端的に言えば、俺はドラゴンテイマーをクビになった。名目上は国外追放の刑だけど、多分そのうち追っ手が来る。だからいきなりで悪いけど、今生の別れを言いに来たんだ。死んでも生き残っても、二度と帝国には戻れないだろうから」


『そんな! だったら僕らに乗って逃げればいい!』


『クビになった理由も、どうせくだらんものだろう? 常日頃の竜騎士や貴族たちの態度を見れば分かると言うもの』


『おのれ許せん、我らが暴れてくれよう!』


『レイド、今すぐ竜舎の鍵を外せ! そうすればわたしたちが助けてやる!』


 フェイ以外のドラゴンたちも怒って唸りだしたが、俺はドラゴンたちを慌てて手で制した。

 不審に思った兵士が駆けつけてくれば面倒であるし、ここは穏便に済ませたかった。


「落ち着け。そんなことをすれば、皆が処分されてしまう。俺だけじゃなく、父さんや爺さんたちが育てた皆を危険な目に遭わせられない。だからすまない……これでお別れだ」


 俺は巨大な竜舎に勢揃いしているドラゴンたち一体一体と目を合わせる。

 強いて言うならば、各地へ任務に出ているドラゴンたちに別れを言えないのが心残りだ。

 けれどきっと、フェイたちが上手く伝えてくれるだろう。


「……皆、今までありがとう。達者でな」


 俺はそう言い残し、竜舎を飛び出した。

 背後の竜舎から響くのは、ドラゴンたちの哀しみのこもった咆哮だった。


 ここのドラゴンたちは、俺にとっては大切な家族のようなものだった。

 物心ついた時から父さんに連れられ竜舎に来ては、ドラゴンたちと心を通わせていた。

 きっと彼らからしても、俺は身内同然に思ってくれているだろう。

 ……今は両親もおらず、フェイたちだけが心を許せる相手だあった。

 辛い業務も、彼らのためだからと頑張ってこられた。

 そんな家族同然のドラゴンたちと二度と会えないと思うと、正直泣きたくなるし立ち止まって竜舎に戻りたくなる。


「でも、ここで止まれば命を投げ捨てるようなものだ……! フェイたちのためにも、絶対に逃げおおせてやる」


 それから俺は、追っ手がかからないうちに帝国から抜け出した。

 幸い皇帝たちは俺を阿呆としか見ていない。

 いくら追放処分になったとは言え、こうも素早く帝国から出るとは考えもしないだろう。

 今の時点で誰にも見つからずに帝国から抜け出せば、ある程度の時間は稼げるはずだ。

《作者からの大切なお願い》


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