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神竜帝国のドラゴンテイマー  作者: 八茶橋らっく
2章 精霊姫と魔王軍
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27話 隷属の首輪の少女

 王都近くの山の中へと降り立ち、雪がまばらな針葉樹の森を抜け、そのまま歩くことしばらく。


『ここが王都ファルカ、活気のある街ですね』


「うん、人もいっぱい……!」


 イグル王国の王都ファルカに入ると、ルーナやロアナは瞳を輝かせてあちこちを見回していた。

 二人は竜の国からあまり出ないので、人間の街が珍しいのだろう。


「レイド。街中に魔物がいるけどいいの?」


 ロアナが指した先では、行商たちが馬の代わりにシムルグという鳥型の魔物に荷車を引かせていた。

 シムルグは小鳥を人間以上のサイズまで巨大化させたような鳥型の魔物で、珍しく温厚な性格の魔物として知られている。


「神竜帝国レーザリアがドラゴンに支えられているように、イグル王国はシムルグたち鳥獣型の魔物で支えられているんだ。ここは北国だから、特に空竜たちは寒すぎて動きが鈍る」


「おぉ〜、レイドお兄ちゃんは物知りだね!」


「帝国にいた頃は仕事で何度か来たから、その時に知ってな……んっ?」


 くぅ、と音が聞こえたので振り向くと、ルーナが顔を赤らめて腹を抑えていた。


『……すみません、屋台から香ばしい匂いがしたもので』


「ああ、串焼きとか売っているもんな」


 ファルカは物流が盛んな分、各地から様々な食べ物も集まってくる。

 この街の観光は食べ歩きも名物の一つになっていたりする。

 俺は屋台の一つに近づき、店主に銅貨を数枚渡した。


「猪肉のタレ串焼きを三つお願いします」


「はいよ……おっ! あんた、綺麗な嬢ちゃんを二人も連れてるね。眼福だし、ちょっとおまけしとくよ」


 店主のおじさんは串に刺す肉を少し多めにして、俺たちに渡してくれた。


「ありがとうございます。ほら、ルーナにロアナ」


 二人に串焼きを渡すと、ルーナは小さな口でぱくりと齧った。

 その直後に頬を弛緩させ、幸せそうな表情になった。


『美味ですね、まさかこれほどとは。人間の食べ物は味付けが濃くて好みです』


「……」


 感想を言うルーナの傍、ロアナは食べることに夢中で無言になっていた。

 よほど美味しいのだろう。

 俺も湯気の立ち上る串焼きを一口食べると、タレの甘みと肉汁が口いっぱいに広がった。


「うん、濃い味付けの屋台もイグル王国らしくていいな」


『レイドのいた帝国では違ったのですか?』


「帝国の料理は少し薄味だったからな。それに寒い場所の料理は味付けが濃い傾向にあるらしい。……さて、食べ終わったら買い物に出よう。早めに買い物を終えれば日が沈む前に竜の国に帰れるはずだ」


 金串を店主に返して歩き出し、そのまま近くの露店を物色してゆく。

 この辺りは市のようになっており、吐息が白くなるほどの気温ながら、人々の温かな賑わいがある。

 そこで竜の国に自生していない薬草を買い付けたり、乾物になっている外国の果物などを買ってゆく。

 他には衣服なども買い込み、ルーナやロアナに小物を贈ってみたりなどなど。

 

「結構買えたな。これ以上は持てないや」


「うん! いっぱいお買い物できてあたしも楽しかった!」


 両手に荷物を抱え、そろそろ引き上げようかと考える。

 この辺りの気候は変わりやすいし、吹雪いたら帰りに支障が出るかもしれない。

 そう思いつつ王都の外へと向かっていると、横の路地から誰かが飛び出してきた。


「……きゃっ!?」


「おっと」


 とっさに受け止めると、飛び出してきた人物の正体は小柄な少女だった。

 外套に付いているフードを深く被っているが、顔が近かったので目鼻立ちなどがよく分かった。

 真っ白な肌に、流れる清流のような青髪。

 何より軽く尖った小さな耳と可愛らしい顔立ちから、多分エルフではないかと察せられた。

 ただ、外界を嫌いどの一族も森の奥で引き篭もっていると聞くエルフが、なぜこんな街中にと思ったが……。


「……隷属の首輪か」


 少女の首には、奴隷の証とされる隷属の首輪が嵌っていた。

 この首輪を嵌められた者は、首輪の主に逆らえなくなってしまう。

 イグル王国では大罪を犯した者は奴隷に堕とされるが、この子は一体何をしたのか。

 そう思っていた時、少女がひしっとすがりついてきた。


「……お願い、匿って……!」

《作者からの大切なお願い》


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