26話 イグル王国へ
「ルーナ、明日は買い出しにイグル王国まで行こうと思うんだ。ここから帝国に行くよりも近いからさ」
ロアナの家で食事をしながら、俺はルーナにそう切り出した。
イグル王国は竜の国から見て北にあり、その王都ファルカは物流も盛んな都市でもある。
皇帝とのいざこざも終わって暗殺者に狙われる心配もなくなったし、そろそろ竜の国を出て買い出しくらいなら行ってもいい頃合いだと考えた次第だった。
『それならわたしもついて行っても構わないでしょうか? 実はあの王国には一度、行ってみたいと思っていたのです』
「あたしも行きたーい! ちゃんと耳は隠していくから、安心して?」
ロアナはどこからかニット帽を取り出し、すっぽりと頭の猫耳を覆った。
猫精族だと分かれば悪目立ちするかもしれないと、ロアナもよく分かっているのだろう。
「二人が来てくれるなら、俺も心強いよ。明日はよろしくな」
「うんっ! あたし、人間の国に行くのは久しぶりだからとっても楽しみー!」
『ロアナ、あまりはしゃぎすぎてはいけませんよ?』
勢いよく立ち上がりかけたロアナが、その勢いで「ひゃっ!?」とテーブルをひっくり返しかけた。
テーブルを両手で押さえつつ、明日は賑やかになりそうだなと苦笑した。
それから翌朝、ドラゴンの姿になったルーナの背に乗った俺やロアナはイグル王国に出発した。
金銭の方は帝国から持ってきたものがある程度残っていたのと、前にもらった財宝の一部を換金しようと考えている。
これである程度自由に買い物できるし、ルーナやロアナが欲しがったものも購入できるだろう。
『ずっと竜の国にいて、レイドも少し窮屈な思いをしているのではと心配をしていた頃合いでした。この外出も気分転換にはいい機会かもしれませんね』
「気分を変えるほど悪い思いはしていなかったけどな」
ルーナの気遣いはありがたいが、竜の国での生活は帝国に比べたら天国みたいなものなので、別段不自由もしていなかった。
「でもたまには人間の街で食べ歩いたりもしたいし、ドラゴンたちの世話に使う道具も揃えたかったから。いい機会なのは間違いない。それに二人と一緒に出かけられて、俺も楽しみだ」
「そりゃあたしたち、お兄ちゃんにテイムされている身だもん。テイムされた側はテイマーの身を守るために四六時中一緒にいるって聞いたよ?」
『何よりレイドと一緒にいる時間が長いほど、テイムされたわたしたちの力が増すのもはっきりと分かるようになってきました。ですからこうして共に遠出をするのも、十分必要な行為なのです。……決して遊びたいだけではありませんよ?』
生真面目なルーナは素直に遊びたいとは言いづらいのだろう。
その辺りに微笑ましさを感じていると、山脈を越えてイグル王国が見えてきた。
「もう少し飛ぶと王都ファルカが見えてくる頃だ。ある程度近づいたら人目につかない場所に降りよう。あまり目立たないようにな」
『了解です、レイド』
俺がルーナたち古竜に慣れているからと言っても、世間では古竜は幻の存在だ。
希少な猫精族のロアナもいるし、あまり目立たない方が王都でも活動しやすいだろう。
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