24話 レイドの要求
「レイド、貴様は自分が何をしているのか理解しているのか!? これはれっきとした謀反であるぞ!?」
「謀反? 帝国を追い出された俺はもう帝国臣民ではありませんので、適切な言い方ではありませんね」
「減らず口を……!」
皇帝は歯ぎしりしながら俺に掴みかかろうとしたが、ルーナが地面に尻尾を打ち付けた途端にすくみ上がってしまった。
「ルーナ、俺は大丈夫だから落ち着いてくれ」
『……レイドがそう言うのであればいいでしょう』
落ち着いたルーナを見て、皇帝は呆然とした様子で言った。
「そうか。ここにいる古竜も帝国の空竜も、やはり貴様が従えているのか……! よもやここに来て、貴様がドラゴンと話せるなどと言う世迷言を信じる羽目になるとはな!」
「帝国にいた時から言っていたのに、信じなかったのは皇帝陛下の方ですがね」
「ならばレイド、今すぐこの場にいるドラゴン全てに言い聞かせよ! 竜騎士の指示を聞き、我が帝国に仕えよと! ドラゴンが竜騎士の指示を受け付けなければ、帝国臣民は活発化しつつある魔物に食い散らかされてしまうのだ!」
皇帝は相変わらず身勝手な物言いだったが、一応は民を気遣う程度の心は残っているらしいと感心させられた。
……その心を少しでも俺に向けて欲しかったが、今はさておき。
俺はフェイたちの方を向き、尋ねる。
「フェイたちは今の話を聞いてどう思う?」
『ううむ、人間を守るのは構わない。今までそうやって生きてきたのだし、対価として寝床や食事も提供されている』
『しかし皇帝の言葉に従うのはもう我慢ならん』
『レイドの頼みなら話は別だがな』
人間を守るのは構わないと言ってくれるあたり、フェイたち帝国のドラゴンはかなり寛容だった。
しかしこれまでと同じ待遇では、また竜騎士たちに無茶をさせられて体を壊すのが関の山だ。
「では皇帝陛下、こうしましょう。帝国のドラゴンたちの待遇改善案を俺が出すので、あなたにはそれを全て飲んでもらいます。加えて俺を二度と狙わないと約束してください。それで手打ちにしましょう」
「手打ちだと? 誰が給料泥棒の指図など……ぐっ!?」
次の瞬間、皇帝は自身の真横に着弾したブレスを見て尻餅をついた。
竜王が皇帝に向かい、ブレスを放ったのだ。
そのブレスの着弾点は大きく抉れ、人間が食らえば跡形もなく消し飛ぶのは明白だった。
竜王は人間の姿に変身し、皇帝へと告げた。
『ワシは竜王アルバーン、竜の国を治める者なり。遠い昔、神竜帝国の皇帝とは盟約を結んだが、お主はそれを破りこの地へ兵を差し向けた。許されざる過ちであるぞ。……あらかじめレイドに止められていなければ、今頃その体は塵と化していると知れ』
「人間の姿になれる白銀の古竜とは、本物の竜王か!? まさか、我が一族に伝わる言い伝えは真実であったのか……」
竜王の尋常ならざる圧力に気圧されたのか、皇帝は首を垂れた。
そして体に負担をかけるブレスの発射回数の制限や、食事の増量など、俺の提示した帝国のドラゴンたちの待遇改善案に対し、皇帝はただ青ざめた顔で頷くだけになっていた。
帝国全てのドラゴンの待遇を向上させるためには膨大な金がかかるが、この皇帝が本来ドラゴンの世話に使うための血税の多くを、趣味のドラゴン購入に使っていることは知っている。
それらの血税を本来の使い道に戻すだけで済むのだから、別段問題もないと思われた。
「くうぅ……。あの時レイドを追放さえしていなければ、こんな、こんなことには…………」
最後にぼそりと呟いた皇帝の後悔の一言は、何とも陳腐であった。
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