23話 レイドと皇帝
上空にて、崖下へと転落した馬車をルーナの背から見つめながら、俺は閃光のブレスを放った彼女に尋ねる。
「皇帝たち、流石に殺してないよな?」
『直撃させるのはやめましたので。レイドに命まで取るなと言われましたから。とは言えレイドの話を聞く限りでは、この程度で済ませてよい手合いとも思えませんが』
「そこは任せてくれ。ルーナ、俺を馬車の前に」
指示に従い、ルーナは降下して俺を降ろしてくれた。
するとちょうど、気絶しているアゾレア宰相を放置した皇帝が馬車から這い出ているところだった。
ちなみに無関係の馬や御者は、落下する前にテイムしたグリフォンたちが受け止めたので無傷である。
「レイド、貴様こんなところに……!? ええい、しかしちょうどいい! 一度しか言わぬからよく聞くがいい!」
馬車から出た皇帝は立ち上がり、仁王立ちして俺を見下すようにして言った。
「貴様がいなくなった途端に帝国全土のドラゴンたちが言うことを聞かなくなった! き、貴様には……わ、詫びを入れたい! 共に帝国へ戻るがいい!」
誠意など微塵も感じさせない、明らかに言いたくなさげな雰囲気で、皇帝は謝罪の言葉を口にした。
……これが謝罪になっているのかは不明だが。
「いや、遠慮しときます。それに俺が帝国に戻ってドラゴンたちを落ち着かせたら、最終的に俺を殺そうと考えていることも知っているので」
「なっ、貴様!?」
図星を突かれて皇帝は固まり、弁解すらしない。
言ってしまえば、全て筒抜けなのだ。
皇帝の考えは全て、帝国にいる俺が世話をしてきた空竜たちが聞き取り、咆哮に乗せてルーナに報告してくれたのだから。
「皇帝陛下、この際だからはっきり言ってやりますよ」
俺は一呼吸し、肺に空気を溜め、万感の思いと共に放った。
「──此の期に及んでいくら体の良いことを言っても、こっちは竜姫と楽しくやってるから今更遅い! 俺があんたに仕えることは、金輪際ないと知れ!!」
「レイド、貴様ァ……!」
きっぱり断られたのがよほど癪だったのか、皇帝の顔が怒りで真っ赤に染まってゆく。
さらに皇帝は愚かにも、次のように命令を下した。
「ええい、竜騎士たちよ、あの不心得者を殺せっ! 我の意向に反するとは即ち、帝国への反逆である!」
「し、しかし陛下! 空竜たちが突然、護衛の竜騎士たちの指示を受け付けなく……ぐっ!?」
いくら竜騎士たちが操竜術で言うことを聞かせようとしても、ドラゴンたちは強引に無視を決め込んでいる。
それもそのはず、何せ竜騎士たちを乗せている空竜とは俺の家族同然の連中なのだから。
「すまないフェイ、すぐに終わらせるからもう少しこらえてくれ」
『気にするなレイド。この場は好きなようにやりなさい』
竜騎士の指示に逆らうフェイたちが体を木々に打ち付け、強引に竜騎士たちを背から放り出していく。
「そ、そんな馬鹿な……!? ひぃっ、古竜までもが!!」
護衛を失い狼狽する皇帝を帝国の空竜たちが唸り声を上げて囲んだ直後、待機していた古竜までもが現れて皇帝を睨みつける。
『さて、これで話ができますね』
ルーナは軽やかな声音でそう言ったが、ドラゴンの姿のままでは俺以外の人間に言葉は通じず、単なる唸り声にしか聞こえない。
震え上がって漏らしている皇帝からしてみれば、ルーナの言葉はきっと脅し代わりの唸り声に聞こえたことだろう。
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