20話 レイドの行方
「陛下、西のローグル平原から魔物の群れが押し寄せて来ます! 戦線維持をしようにもドラゴンたちが命令を無視し、既に防衛網の端々が魔物に食い破られております!」
「さらにドラゴンを癒すポーションも不足し、これでは従来通りの出撃もままならなくなります!」
神竜帝国レーザリアの離宮にて各方面からの報告を聞く皇帝は、その場にいた者たちへと怒声交じりに問いかけた。
「ドラゴンたちの命令無視は相変わらずか。しかしなぜポーションが足りぬのだ! 薬草など素材の貯蓄は十分であっただろう、それがなぜ!」
「陛下。ポーション作成のために雇った錬金術師どもが、レイドの残したポーションを見てこう申しております。『ここまでドラゴンに特化したポーションは神がかり的だ。こんな高度な代物を作れるとしたら、それはドラゴンを知り尽くし研究し尽した人物に他ならない』……と」
「つまり何か? レイドごときが作成したポーションが再現できぬと申すのか!?」
怒鳴り散らす皇帝に、萎縮するアゾレア宰相や貴族たち。
皇帝は癇癪を起こしながら罵るように言った。
「ドラゴンの世話どころか、傷を癒すポーションすら生成できぬとは何事か! 貴様らはあの給料泥棒以下か!! ……ヒィッ!?」
『グルルルル……!』
皇帝が怒鳴り散らした直後、外からドラゴンの唸り声が聞こえてきた。
ここ最近ずっとそうだ、どこからかドラゴンが自分を睨みつけているようだと皇帝は玉座で震え上がっていた。
あの唸り声は皇帝がレイドを「給料泥棒」などと罵るたびに発される、ドラゴンたちの怒りの声だ。
しかしドラゴンを単なる知性なきオオトカゲとしか見ていない皇帝には、それが一切理解できていなかった。
「……陛下、報告いたします!」
皇帝の前に、息を切らせて一人の兵士が駆けてきた。
兵士は跪いて皇帝に報告を始めた。
「旅の者の証言ですが、先日ウォーレンス大樹海から古竜と共に飛び立った者がいたそうです。そしてその人物の特徴がレイドと合致していたらしく、秘境方面へ向かったとのことです」
その報告を聞いた皇帝は「遂に手がかりを得たか」と呟き、ニヤリと下卑た笑みを浮かべて立ち上がった。
これまでの震えが嘘のようであった。
「皆の者! あの給料泥棒、レイドの行方を追うのだ! 秘境方面を捜索し、草の根分けても探し出せ!」
──レイドさえ捕まえることができれば、この帝国は元通りだ。
そして今度は奴からドラゴンを御する術やポーションの作成方法などの全てを聞き出し、こき使ってやろう。
疲労で使えなくなれば、他国に情報を渡す前に今度こそ適当な理由をつけて処刑してしまえばよい。
「所詮、奴は給料泥棒。我が手から逃れられると思うな、レイド!」
その後、皇帝は意気揚々と秘境への出撃命令を下した。
……しかしその会話も全て、離宮の周囲に潜んでいたドラゴンたちには筒抜けだった。
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