17話 レイドとルーナ
竜の国付近でテイムした大型の魔物は、最終的には二十体ほどだった。
テイムした魔物であるフォンたちが存在する限り、他の魔物が竜の国に近寄ることもないだろう。
万が一外部から魔物が来れば、テイムしたフォンたちが縄張りを侵されたものとして応戦するので、魔物の脅威は退いたに等しかった。
『そう言えばレイド。あなたは帝国のドラゴンテイマーでしたが、帝国中のドラゴン全てをテイムしていたのですか? 今日見たレイドの技量なら、それも可能かと思いますが』
猫精族の集落にある、ロアナの家にて。
ベッドで休んでいると、一緒に泊まるルーナがそう聞いてきた。
「いや、百体以上もいるドラゴン全てをテイムするのは難しい。それに俺の魔力にも限りがあるから、無理なくテイム可能なのはせいぜい五十体だ」
「五十体って……。それ下手をすると、国一つを落とせる戦力じゃない?」
『確かにやろうと思えば、レイド一人で落とせるかもしれませんね』
「それはテイムするドラゴンたち次第だし、そんなのやらせたくないけどな」
しかしながら、死んだ父さんもドラゴン五十体のテイムくらいなら軽くやってのけていた。
両親以外のドラゴンテイマーは見たことがないが、それでも五十体程度では俺もまだまだだと思う。
「とは言え、俺が帝国でずっとテイムしていたドラゴンはいない。テイムしてもあくまで一時的に、暴れた時とかに落ち着けるくらいだったな」
『そうだったのですか? てっきりわたしのように、ずっとテイムしっぱなしなのかと……』
「いや、それはルーナだけなんだ。本当に悪かったな」
『構いませんよ。レイドにテイムされたからこそ、わたしの命は助かったのですから』
向けられたルーナの笑顔に、若い男としては少しドギマギする。
実際彼女は人間の姿だと大層な美人さんなのだ。
ひとまず「ルーナは古竜で相棒」と何度も心の中で唱えて落ち着いた。
『ただ、三年も放置されて悲しかったのは事実ですね。正直、テイムしっぱなしということでそのうち迎えに来てくれるのではと少し期待していたのですよ? 帝国の若き有能なドラゴンテイマーが、命を救っただけでなくわたしを相棒にしてくれるのでは、と』
「何だか妙に期待されてたみたいだな……?」
「それはもちろん! だって姫さま、三年前に竜の国に戻ってからしばらくはレイドが優しく腕利きだったって話ばかりで……もがっ!?」
寝そべりつつ当時のことを語り出したロアナの口を、ルーナが恥ずかしそうに赤面しながら塞いだ。
『と、ともかく! 今はこうしてわたしを相棒として認めてくれているからよいのです。わたしが困っているレイドを迎えに行った形にはなりましたが、結果オーライというやつです! 何より古竜にとって、強き騎乗者を迎えて己の戦力を高めるのは、ある種の誉れのでもありますから』
「俺もルーナの相棒として、恥ずかしくないようにしなきゃだな」
竜騎士と言えば戦闘技術がものを言う職業だ。
俺もその一部を修めてはいるが……独学面が多いし、現状ではどこまで役に立つのやら。
今は得意の封印術を中心に立ち回る他ないだろう。
……そんなふうに三人で話し込んでいると、次第に夜も更けてゆき。
こうして誰かと楽しく会話をしながら寝落ちするのは子供の時以来だなと、俺は不思議と温かく懐かしい気持ちを抱いていた。
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