16話 グリフォンのテイム
『レイド、本当にやるのですか? 少々危険なのでは』
「大丈夫だ、早急にカタをつける」
俺はルーナやロアナと竜の国を出て、近くの山奥へ来ていた。
そして魔物であるグリフォンを見つけ、草木の影に隠れて様子を窺っていた。
「お兄ちゃん、魔物のテイムは普通の獣と違うって聞いたよ? 特にグリフォンみたいな強い魔力を持つ魔物は、テイムの魔術を跳ね返しちゃうって」
不安げなロアナの言うことも一理ある。
テイムはあくまで魔力を使った魔術なので、術者以上の魔力を持つ魔物であれば、テイムを跳ね返されてしまう可能性もある。
それがテイムのネックだとは、ロアナをテイムする際にも思ったものである。
「でも、今回なら問題にもならない。グリフォンくらい、修行をしていた時に何度もテイムしてきた。行ってくる!」
『グリフォンを何度も……!? ドラゴンでさえ手を焼く魔物を相手に、なんて無茶な修行なのでしょうか……』
ルーナはどこか呆れた表情だが、それが一族に代々伝わる修行の一環なのだから仕方がない。
ドラゴンをテイムする者が、他の魔物程度、テイムできなければどうするのかと。
俺は木の陰より飛び出し、グリフォンの背後から素早く近寄る。
グリフォンは振り向き、ようやく俺の存在に気づいたようだが、此の期に及んではもう遅い。
「封印術・竜縛鎖!」
魔力を消費して魔法陣を展開し、そこから放った鎖でグリフォンの動きを封じ込める。
封印術は魔物の動きだけでなく、鎖で拘束した対象の魔力も封じ込める。
俺の本職はドラゴンのテイムだが、竜縛鎖で魔力の低くなった魔物なら容易にテイム可能だ。
「我、汝との縁を欲する者なり。汝の血を我が血とし、汝の権能を我が権能とする者なり。消えぬ契約を今ここに!」
テイムの魔術を起動し、魔法陣がグリフォンを包み込む。
そのままロアナと同じ要領でテイムを完了させれば、グリフォンの首にテイムの証である文様が浮かび上がった。
「成功だ。二人とも、出てきていいぞ」
ルーナとロアナを呼ぶと、ルーナは大人しくなったグリフォンに触れて言った。
『グリフォンを本当にあっさり手懐けてしまいましたか。これではまるで、伝承に出てくるレベルのドラゴンテイマーですが……。しかしこれからどうするのですか? 遠くへ逃がすなどの措置を講じるのでしょうか』
首を傾げたルーナに、俺は答えた。
「竜の国に敵対しないよう指示を飛ばして、放置だ」
「えっ。お兄ちゃん、それじゃテイムした意味なくない?」
ロアナも俺の意図が分かっていない様子だったので、軽く説明していく。
「実はグリフォンみたいな大型の魔物はそれぞれ縄張りを持っていて、他の魔物は警戒してその縄張りに入って来ないんだ。だからこのグリフォンを仲間にしておけば、この辺一帯を守ってくれるって寸法だ」
『言われてみれば、同じ土地に現れるグリフォンは同一個体だった気がします。レイドは魔物の生態についても詳しいのですね』
「これも経験則だからな」
ちなみにこれは昔、樹海で父さんと修行をしていた時にふと気が付いたことだ。
ドラゴンをテイムする練習として魔物をテイムしていたのだが、その時に大型の魔物は縄張りに一体しかいないと知った。
「ともかく、このグリフォンにはこれからこの辺りで暮らしてもらう。グリフォン、これからよろしくな。えーと名前は……そう、フォンだ!」
『フォーン!』
首筋を撫でてやると、フォンは気持ちよさそうに目を細めた。
テイムには心を落ち着かせる作用もあり、互いに心を通じ合わせる力もある。
俺がフォンを傷つける意図はないと、フォンも理解してくれているのだろう。
「……」
フォンを撫でていると、ロアナがじーっと俺を見つめていた。
「ロアナ、気になることでもあるのか?」
「うん。やっぱりお兄ちゃんは凄腕のテイマーだと思うよ。でもだからこそ、なんで帝国から追い出されちゃったのか不思議なの」
「不思議、か……」
ロアナはこう言ってくれているが、俺が無能だと言われ追放されたのは事実だ。
とはいえもう後悔はしていない、こうしてルーナやロアナのような良い理解者に巡り会えたから。
「まあ、俺が追い出された話は今更蒸し返しても仕方ない。ひとまずこの調子で竜の国近辺にいる大型の魔物を全部、テイムしていこうか」
『「おー!」』
それから俺とロアナはドラゴンの姿になったルーナの背に乗り、魔物を探して竜の国付近を巡っていった。
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