13話 レイドの捜索
「皇帝陛下! 帝国全土のドラゴンたちは今や、竜騎士の操竜をまるで受け付けません! このままでは他国の侵攻を防ぐどころか、近年活発化している魔物の脅威からも民を守れなくなります!」
「加えてドラゴンたちは先日の暴走から竜舎へ入れることすらままならず、ここ最近は野外での放し飼い状態にございます! このままでは危険なのではと不安の声も上がっております」
「ええい、分かっておるわその程度! 全く、なぜこのような事態に……!」
衛兵の助けで命からがら崩れた宮廷から逃れた皇帝は、離宮にて兵士からの報告を受け苛立っていた。
さらにいつ自室にドラゴンが押し寄せてくるのか知れない恐怖から、ここ最近皇帝は不眠症に陥っていた。
青ざめてくまの深くなった顔で、皇帝は癇癪気味にアゾレア宰相や貴族の面々へとわめいた。
「貴様ら! それでも誇り高き帝国臣民か! 我がこれほど頭を悩ませているのだ、少しは打開策を語らぬか!」
「……畏れながら申し上げます、皇帝陛下。レイドはまだ、死体で見つかってはおりませぬ」
恭しく頭を下げたアゾレア宰相に、皇帝は憤るような声をあげた。
「その通り。暗殺者共め、高い金を払った割にしくじりおったか! して、レイドの死体の有無が事態の収拾に何の関係がある?」
「ここはひとつ、レイドが生きている前提で動いてみてはと。帝国を出奔したあの者を連れ帰り、ドラゴンたちを黙らせるのです」
「レイドに? まさか貴様、レイドはドラゴンと会話ができるなどと言う与太話を信じるのか?」
アゾレア宰相はため息交じりに告げた。
「此の期に及んでは信じざるを得ないかと。現にドラゴンが暴れ出したのは、【ドラゴンテイマー】スキルを持つレイドが帝国より去ってからです。ドラゴン共、よほどあの男が気に入っていたと見えてなりませぬ」
「つまり何か? 貴様はレイドを追放処分とした件は非を認め、詫びを入れて連れ戻せと申すのか!」
皇帝は顔を怒のあまり、玉座を叩く。
広大なる神竜帝国を統べ、神の血を引く者として生まれた時からもてはやされてきたこの皇帝には、他者への謝罪などという屈辱は到底受け入れがたいものであった。
しかし周囲の貴族たちはアゾレア宰相と同様に、この若き皇帝の癇癪に耐えかねたのかため息をついている始末だった。
……なお、彼らもレイド追放の一端を担っていただろうと言えるほどの恐れ知らずもまた、当然ながらこの場に居合わせるはずもなかった。
「非を認めるフリだけでもよいのです。そしてドラゴンたちを黙らせ、改めてレイド抜きでドラゴンを飼育し操れる環境が整い次第……」
「ほう、今度こそ奴を亡き者にできると。フリとはいえ、我に頭を下げさせるのだ。対価としてあやつの首程度は貰わねばなぁ」
「レイドは所詮、給料泥棒と罵られても反論しなかった臆病者。陛下の威光があれば、いくらでも言うことを聞かせられるかと」
進言した貴族に、皇帝は鷹揚に頷いた。
「よい。では皆の者、レイドを捜索せよ! 何としてもあの給料泥棒を連れ帰り、今まで給料を払ってやった分の仕事をさせるのだ!」
こうして皇帝はレイド捜索の命令を各方面に下すこととなったが、この会話は既に離宮付近に潜伏していたドラゴンたちに筒抜けになっていた。
この後数日間、皇帝は怒れるドラゴンたちの咆哮を四六時中聞くこととなり、さらに精神を疲弊させることとなった。
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