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僕らは異世界で尸(しかばね)を越える  作者: 不二 充
第1部 少年期編
9/17

半年の成果

 授業を始め半年が過ぎようかという頃、イーストさんが魔障石を持ってやって来た。


「フィア。約半年が経過し、貴方は大方の知識と魔力操作も身に付けました。当初私が想像していたよりだいぶ優秀でしたよ。お疲れ様です」


「ありがとうございます」


 そう。僕はイーストさんが立てたメニュー通り、魔力を自在に動かすこともできるようになった。初めは全く上手くいかず失敗ばかりだったが、5カ月目にしてようやく出来るようになってきた。あまり意識せずにも出来る様になったのは最近なのだが。


 そして今日は楽しみにしていた属性の確認である。僕自身中身は既に30のおっさんな訳だがどうしたものか、こういうなにが出るか分からないみたいなものはワクワクしてしまう。


 そうこう考えているとーー


「ではまず私が手本をお見せしましょう。しっかり見ていてくださいね」


 イーストさんが石に手をかざし、魔障石に魔力を放出した。すると、先程まで真っ黒のただの石が青く光り輝いた。


 ーー綺麗だ・・・声が出なかった。感嘆というのはこういうものなのかも知れない。


 イーストさんが手を離し、少しすると綺麗な光りは消え、ただの石塊に戻った。


「ーーと、このように行います。因みに青く光ったということは私の属性は[水]ということです。因みにディアは赤い[火]です。ここまででなにが分からない点はありましたか?」


「いや、大丈夫です!早くやらせて下さい!」


 自分の属性知りたさに興奮が抑えられず悔い気味に答えた。


 いよいよだ!正直この半年はこの為に頑張ったと言ってもいい。それくらい楽しみにしてたんだ!


「そうですか。これが成功すれば晴れて次の段階へ進むことができます。・・・では、どうぞ」


「・・・じゃあ、行きます!!」


 僕は先ほどのイーストさんの通り、魔力を手のひらに集中させ、注ぎ込んだ。


 そして石からはーー緑色の光が放出された。


 緑?!えーっと緑って確か・・・


「おめでとうございます!見事属性の確認まで出来ましたね。緑の光りは[雷]の証です。つまり貴方は雷属性という訳ですね!」


 ーー雷属性!これってアニメとかだと強キャラが使うやつだよね?!正直光とかの方が嬉しかったけどこれでも充分過ぎるほど嬉しいよ!光んなかったらどうしようとか一瞬思ったけど杞憂で済んで本当良かったー!


 あぁ、ずっとこの光を眺めていたい。前世も含め初めての成功体験をもっと噛み締めたい。


「フィ、フィア?もうそろそろやめないと魔力がきれて倒れてしまいますよ!授業で教えたでしょう!」


 もう少し!もう少しでいいから余韻に浸らせーー


「いい加減にしなさい。そろそろ本気で怒りますよ」


 本気の殺気を感じ、すぐさま両手を空に掲げた。うわ、この人怒ったらこんな感じなんだ・・・気をつけよう。


「・・・すいませんでした。つい」


「はぁ、はしゃぐ気持ちは分からなくはないですが、貴方ディアとの修行のこと忘れてましたよね。調子に乗って目先に捕われない、これも授業です。覚えておきなさい」


 言う通りだな。あのまま倒れていたらディアさんにも迷惑を掛けていた。"目先に捕われない"今日の日記にも書いておこう。


 いずれにしても自分の属性が分かったのは喜ばしいことだ。この調子で午後も頑張って行こう!

 --------------------

 時は跨ぎ午後。ここからはディアさんの授業だ。


「よぉフィア!お前属性が分かったんだってな?なんだったんだ?」


「ふふーん!なんだと思います?」


「そこまで興味はねえよめんどくせえな。さっさと教えろ」


「ぐっ・・・雷ですよ、雷属性」


「ほぅ、雷か。光ほどでは無いにしろめちゃめちゃ早いスピードで動けるいい属性だな。枝分かれした中でいいもの引けりゃ、更に強い武器となる」


 そういえば枝分かれとか言ってたな。明日教えて貰おう。


「そういえばディアさんは火なんですよね?どういう能力なんですか?」


「ん?俺のは体や持ってる武器なんかに火を纏える纏火(てんか)ってのだ。使用した本人は全く熱くないのに相手に当てると大火傷っていう結構便利な力だぜ!」


 おお!かっこいい!火を纏えるとかすごいディアさん向きの能力だな。纏火か・・・じゃあ僕のは纏雷(てんらい)かな。


「んにしても見事に全員属性ばらけたもんだな。イーストが水、俺が火、そしてお前が雷ったぁ」


「あの人は?」


「・・・[闇]だよ。ほんとあいつらしい属性だ」


 なんていうか家族全員それぞれがそれっぽい属性なんだな。僕の雷はよく分からないけど・・・もしかすると属性ってのは性格に起因するのかも知れない。そういえば家族で思い出したーー


「あの?これ前々から気にはなっていたんですが、3男って今どうしてるんですか?見たことないどころか話にすら上がらないんですけど」


「・・・!・・・お前は気にしなくていい。まぁでもいずれ話してやるよ。ーーんじゃあ気を取り直して始めんぞ!」


「えっ?あ、はい!」


 聞けば大体なんでも答えてくれるディアさんが答えたくないという明確な意思表示をした。恐らくなにか知られたくないようなことがあったんだろう。だけどいずれ話すと言った。その時を待っていよう。それでも遅くはないはずだ。


「今日でほぼ半年が経過した。つまりそろそろ最初に与えたメニューをすべてこなしてもらうことになる訳だが、取り敢えず今日は次に進むべきかのチェックをしたい。昨日までのメニューを目の前でやって見せてくれ。それで判断する」


「はい!頑張ります!」


 この半年本当に死にそうな思いをしながら耐えてきた。最初の2カ月間は毎日吐きそうになりながらやっていたのだが、3カ月目にして段々と体が慣れ始めてきた。


 そこからは割ととんとん拍子に進み、今となっては半分の回数ならば余裕を持ってこなすことが出来るようになっていた。直気としての体で有ればこう上手くはいかなかったかもしれないが、流石はほぼ毎日喧嘩をしていた者の体だ。センスはあったんだろう。


 その後僕はディアさんのテストをこなし、ささやかな談笑を楽しんだ。


「お前半年前とは見違えたな。最初は3分の1程度でぶっ倒れてたのに」


「まぁ半年もほぼ毎日続けてればね。でも以前とは違うってのは自分でも分かるよ」


「はは!そこまで成長してて自覚ねぇとしたらそりゃバカだよ。そんくらい見違えた。頑張ったな」


 ーー頑張った・・・か。前世だと母さん以外に言われたことのなかった台詞だけど、こっちじゃ2人も行ってくれる人がいる。努力を認めてくれる人がいるってのは幸せだな。


「よし、明日からは完全版メニューで行くことになる。単純に倍だ。備として今日はしっかり休んどけ。んじゃあお疲れ!」


 こうして、僕の半年の集大成を見せた1日が終わった。

 --------------------

 着々と僕は成長してる。頭も体も。残りの1年半でどこまで成長出来るかは分からないけど、出来ることが増えるってのはなんだか楽しいし、最初ほど苦ではなくなってきた。


 イーストさんの授業で属性についてもっと学びたいし、ディアさんのメニューを完全にこなせるように明日からも頑張らないとーー


 日記の最後にーー常に冷静に。目先の事に捕われるなーー


 こう記し僕は床についた。


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