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僕らは異世界で尸(しかばね)を越える  作者: 不二 充
第1部 少年期編
6/17

揃い踏みの決意

 イーストさんからの衝撃の告白を聞き、僕は動揺を隠せなかった。


 ーーえ?そんな素振り全く見せなかったのにそんなことを考えてたのか?これ・・・ディアさんは知ってたのか?


 そう思いディアさんの方を向くと、口を開けながら表情筋が痙攣していた。


「・・・・・・おい、なんだよそれ?そんなん聞いてねえぞ?イースト、流石に説明はあんだよな?」


「えぇ。いずれ貴方達にはお話しして協力してもらうつもりでしたから、寧ろ今回のことは都合がよかった。」


「どういう・・・」


「当初の私の計画ではまずディアに事情を説明し、その後フィアをどうにか説得させるつもりでした。正直このフィアの説得が一番難航するかと思っていたのですが、何か人が変わったように素直になったのでね、スムーズに進んで助かります!」


 ーーまぁ実際人が変わってるんですけどね・・・それは置いといてーー


「・・・兄貴、1個良いか?」


「はい、なんでしょうか?」


「なんで俺を誘いたかったんだ?あんまり強く無いし戦力になんねえと思うんだが」


「それは・・・貴方がこの家で唯一令呪が掛けられていないからです」


 え?!令呪がないって事はこの仕事を受けなくても別になんのペナルティも発生しない、廃人にもなる事はないってことか?・・・でもなんで?


「その理由を説明するにはまず令呪の仕組みから説明しなくてはいけません」


「仕組み・・・?」


「ええ、まず令呪というのは掛ける際に多少脳に負荷がかかってしまいます。命令を違反したら罰が下るものを脳に刻んでいるのですから当然です。その為脳が8割方完成する6歳以上に掛けるのがセオリーです。そうでないと掛けた時点で廃人になってしまう可能性が高い」


 イーストさんのこの説明に僕は1つ疑問が生じた。それは何故廃人にさせないのかである。僕達を命令をこなす道具くらいにしか考えてなさそうな奴だし、絶対に反抗しない廃人にしてしまった方が楽そうだと思うんだけど・・・


「あのさ・・・なんでわざわざそのセオリーに従ったんだ?壊れたら壊れたで別に・・・って感じの人間に見えたんだが」


「ん?それは簡単なことですよ。私達の仕事は潜入調査がメインですからね。人格がしっかりしていないと標的を調査することも予定と違う展開になった時アドリブで乗り切るなんてことも出来なくなりますからね」


 あぁ・・・なる程、確かに言われてみればその通りだ。最終的に殺すかもってところが印象的すぎて本来の仕事内容忘れてた。


「宜しいですかね?では話を戻します。6歳が令呪の掛け始め時と言いましたが、ではどうして貴方はそれが無かったか・・・それは、貴方の脳の発達が一般的な6歳児に比べて遅かったからです」


 つまり僕は・・・というかフィアは6歳になっても脳が完成していなかったから免れたってこと?でもこの遅延発達だって大体の場合成長するに連れ他の人と同じ、場合によってはそれ以上の知能になるって聞いたことあるんだけど。その時に改めて掛けなおせばいいんじゃないのか?


「なぁ、それって後から掛けなおすとかって出来なかったのか?でもさっき6歳以上って言ってたから出来るんだろ?」


「ええ、勿論それは出来ます。ですが今回に限ってはそれが出来なかった。何故か、それは令呪を掛けるのを依頼させていた人物が亡くなってしまわれたからです」


「え?!そんな理由?だって他にも令呪使える人だっているだろうしその人と同じ組合?にいた人とかもいるだろ?その人1人死んだだけで何も出来なくなるってなんだよそれ」


「まぁ疑問は尤もですよ。しかしまだ学園に通っていない貴方が知らないのは当然ですが令呪というのは禁術であり、そしてとても高度なものなんですよ。考えてもみてください。他人をノーリスクで操れるものが広く一般的で安易なものだと思いますか?そんなはずがありません」


 ぐっ!・・・確かに、その通りかも。そんな危ないチート術少なくとも表向きに流行るわけがないし、そんなばんばん使える人が出てくる訳がない


「それに、その方は弟子が居たそうですが伝授する前に亡くなったそうなので。こうして貴方に令呪を掛けられないと知ったあの人は貴方に仕事を振るのをやめました。今回のは偶然標的が同級生になる人物だったからという理由があり貴方に仕事が振られたのでしょう」


「貴方が7歳になるよりも前に亡くなってしまい、そこからあの人は貴方に7年以上会っていませんからね。恐らく今回この依頼が来るまで貴方のことを忘れていたと思いますよ。あの人は興味のなくなったものは綺麗さっぱり記憶から消える人間ですから。その為今日も貴方には令呪がかかっている前提で話していたんですよ」


 ああ、それでどうせ僕は逆らう事は出来ないみたいな事言ってたのか。しかしーー


 自分の父親から忘れられた子供フィア・・・最初は生意気なだけで嫌いだったけどなんだか可愛そうになってきたな。転生した時、思い出や自身の発した言葉なんかは流れてきたけど心の中までは分からなかった。父親に忘れられた7年間、この子は何を考えて生きていたんだろう?乱暴な言動ももしかしたら淋しさを紛らわすためのものだったんじゃ・・・


 ーーなどと考えているうちに話は次へと進んだ。

 ----------------------ー

「令呪についての説明はこれで終わりです。では次ですが、フィアの最初の質問に答えるとしますか」


 最初の質問?そういえばなんで僕が必要なんだって質問してたっけ。


「まずは先程貴方には令呪が掛けられていないというのは説明しました。ではそれによって何が都合がいいのか・・・それは標的を味方につけることが出来る可能性があることです」


「なぁイースト、なんでそれが必要なんだ?」


 久々に口を開いたディアさんがイーストさんに疑問を投げかけた。


 するとイーストさんは少しテンションが上がったように答えた。


「いつも私達が標的にしている人物は基本的に戦闘能力がさして高くない人物ばかりでした。もしその貴族を懐柔できたとしてもあまり意味は無かったでしょう。しかし今回は違います!フィアの標的は高い魔力に加えそれを高める努力をしている人物です。これは味方につけることが出来れば大きな戦力となる可能性が高いです!」


「偉く雑な計画じゃねえかそれ?」


「勿論それだけではありません。今回の仕事場は学園です。同級生等と関係性を深め、そこも懐柔することが出来ればーー」


 ーーディアさんもさっき言ってたけど、なんか雑というか詰めが甘いというか・・・というかなんでちょっと声のトーン上がったんだろ?ちょっと面白い人なんだな。


「イーストよぉ、お前は昔から最後の最後で詰めが甘くなるのが悪いとこだぞ・・・てかその作戦だと結局俺ら別にやる事ねえじゃねえかよ。弟にやらせて兄貴達は見学か?んなもんフィアだってやりたがんねえだろ」


「甘っ?!・・・うん、まぁそこはあとで詰めるとして、私達もやる事はありますよ」


「んだよ?」


「あの人の部屋でも言ったでしょう、フィアの能力向上です。この集まりの最初の方で都合が良かったと言いましたがこの事です。動機や前兆も無しに僕ら2人が教育を始めていたら不審がられますし、あの人の目の前で宣言する事でこの2年の間に私達が大きな仕事を入れられる心配も大きく減りました」


「なるほどな。大体は分かったが1つ問題があんだろ?フィアの感情が入ってねえ。これだと結局フィアが断りゃ全部吹いて飛ぶ作戦だぞ。こいつのことしっかり考えてんのか?」


「確かにそうです。なので昨日まではどうやって説明すべきか、納得して貰えるかということをずっと考えていました。ですが今日の素直さやあの人の冷たい対応に怒りをあらわにしていた様子を見て、この子は分かってくれるんじゃないか・・・そう思ってしまいまし・・・いや、やっぱり私は詰めが甘いですね、すいません考えて直しーー」


 この2人はフィアのことをしっかり見てくれている。道具ではなく1人の人間として。そう感じた時、僕はイーストさんの話を遮り心の声を漏らしていた。


「・・・・・・るよ」


「ん?フィア何が言いました?」


「ーーやってやるって言ってんだ!」


 僕は前世で罪を犯した。正直こんな人間に、第2の人生を歩む資格は無いのかも知れない。


 ーーだけどこんな奴でも頼ってくれる人が居る。頼ってくれた人を助けたいって思いは罪ではないだろう。


 勿論こんなことをして生前の罪が精算出来るだなんて思っちゃいない。だけど・・・前世で出来なかった分、僕は人の役に立ちたい!


「ほんとにやってくれるんですか?私が言うのもなんですが貴方に大したメリットはありませんよ?」


「そうだぞフィア。俺もあのゴミ親父に痛い目を見せてはやりてえが、その場の勢いで決めてんだったらやめとけ。少なくともいい事はない」


 この2人ほんと弟思いなんだな・・・誰にも愛されていなかった訳ではないと知り、本人でもないのになんだか救われた気がした。


「はん!デメリットとか知らねえよ!個人的に気に食わないからやる、それだけだ!」


「なんだかあの子に似てきましたねフィアは」


「だな!フィア!こうなったら全力で教え込んでやるから覚悟しとけよ」


「ーーおう!やってやんよ!」


 こうして僕達は新たな決意を胸に進み出した。















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