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僕らは異世界で尸(しかばね)を越える  作者: 不二 充
第1部 少年期編
5/17

仕事の内容

 とても受け入れられない話を聞かされ、僕は理解が追いつかなかった。


「えっ?・・・殺害って殺すって事だよね・・・?狩猟とかそういう事?そうだよね、そうに決まってる!」


 口調が戻ってしまっているのも気づかないほど僕は現実逃避に勤しんでいた。そんなことある訳がない、そんな訳ーー


「ーーいや、恐らく君が危惧している通り"人"だよ。対象人物を調査し場合によっては手を下す。これが君に課せられた義務だよ」


 くそ、やっぱりそうなのかよ・・・なんで僕はこんな家にーー


 もしかしてこれが前世からの罰なのか?確かにこの話を聞くまでこの世界や環境が罰になるとは思えなかった。だけど・・・だとしても前世で人を"殺してしまった"ことを後悔している人間に次は人を"殺さなければ"ならないなんて・・・それは流石に重すぎるだろ?


「ぼくは・・・俺は嫌だ、やらない!」


「先程君にも逆らう事は出来ないと教えたはずだが?動揺して聞いていなかったかね?」


「ーーそうだよ、それはなんでだ?改造とか洗脳でもされてるのかよ?」


「いや、そうではないよ。もしそうであれば今君とこうして話などする必要すらない。私が君達に掛けたのは魔法だよ」


 魔法?この世界には相手を従わせる魔法があるのか?


「魔法といっても洗脳魔法などではない。どちらかというと令呪かな?命令した内容に違反した者の脳を破壊するように設定してある」


 ーー脳を破壊?嘘だろ・・・?


「そんなことしたら死んでしまうじゃないか?なんでそこまでーー」


「安心したまえ、破壊とは言ったが少しずつだよ。一回の違反ではさして影響はない。せいぜい軽く握られる程度のものだよ、3回程違反しないと廃人にはならない」


 だめだ、逃げないとーーじゃないと他人を殺すかこいつに殺される!そんな極端な択選んじゃいけない!


 父親に背を向け逃げ去ろうとした時、僕の目の前にイーストさんが立ち塞がった。


「フィア・・・いけませんよ、逃しません。」


「どいてくれ!こんな所に居られない居ちゃいけない!」


「・・・・・・だめなんですよ!」


 イーストさんは目の前から急に消えたかと思えば気がついたら僕は取り押さえられていた。


「イ・・・おい、やめやがれ!」


 僕が振り解こうと足掻いていると、イーストさんは耳元で小さく囁いた。


「取り敢えず今は私に従いなさい!説明は後でしますから反抗せず黙っていて下さい」


 どういうことだ?僕に危害を加えたい訳では無さそうだけど・・・どう足掻いても振り払えそうにないし今は従うしかないのか・・・


「・・・・・・わかったよ」


「もう良いかな?私としても早く終わりたいのでね」

 --------------------

 そこからは仕事の具体的な内容が話された。


 僕の標的は同じ年に学園に入学する"フラーク・ミスタル"君らしい。なんとこの世界では珍しく平民にも関わらず魔力が発現したらしい。


 依頼をしてきたのはいくつかの貴族らしく、貴族ではない平民が魔力が発現する筈がない、どこかの貴族の隠し子なのではないかという話が出ているらしい。


 もし本当に隠し子であった場合、その貴族を蹴落とせるからとかなんとか・・・勿論全部じゃないんだろうけど貴族って本当にこんな汚い奴らばかりなのかな?


 とにかくその子が隠し子なのかどうかの調査が僕に依頼された内容らしい。


 ーーしかしこれには一つ問題がある。それはこのままの名前では調査ができないという点だ。何故か?それはこの家がスパイをしているというのは貴族の中では暗黙の常識だからである。その為ドロフォニアのままで入学すれば巡り巡って標的の耳に入る可能性は否定できない。


 ならばどうするかーー


「君には今回の依頼者の一人である"ブラーガン家"に養子として入ってもらう。あそこは丁度子供がいないみたいでね、双方にとって都合が良いということになった。」


 ーー本人の確認なしに養子に出すとか本当に勝手な奴らだな。


「それと、標的は元々強い魔力を持っているのと同時に鍛錬も欠かしていないそうでね・・・だから君にも残りの2年間魔力と身体能力の強化に当てて貰う。実力差がありすぎると近づくことも出来ないかも知れないからね。」


 すごい才能に加えて努力もしてるなんてすごい人なんだなそのフラーク君って。そんな子に並び立たないといけないなんて僕なんかに出来るのか?


 そんなことを考えているとイーストさんが口を開いた。


「ではお父様、私が魔力の、ディアが身体能力及び戦闘能力の強化をさせるというのはどうでしょうか?外部から依頼すると、まずフィアの扱い方から学ばなくてはいかなくてなりますからね」


「ちょっとまて、なんで俺まで駆り出されないといけねぇんだよ?んな面倒いこと誰がーー」


「ディア!・・・お願いします。」


 イーストさんとディアさんが師匠に?確かにそれは頼もしいけど、なんでイーストさんはここまで僕をカバーしようとしてくれるんだろう?


「ではイースト君、ディア君、君達にお願いすることにするよ。あぁそれとフィア君。1年後の今日にブラーガン家が迎えに来るそうだからしっかり準備をしておきたまえ。以上、追加に情報などがあればこちらから伝えることにするよ。ではさようなら」

 --------------------

 部屋を出て自室に戻る道すがら、ディアさんが口を開いた。


「ーーおいイースト、なんでフィアの育成なんて話持ちかけた?俺たちがあいつの手伝いなんてしてやる義理なんてねえだろうが」


「そうですね・・・それも含め話があります。フィアも一緒に来てください、貴方にも話があるんです」


 イーストさんの話もものすごく興味があるし僕自身も聞きたいことがある。ここで行かないという選択肢は無い。


「あぁ、行くよ」


 こうして僕らはイーストさんの部屋に入り、互いの疑問をぶつけ合うことになった。


 まず口火を切ったのは案の定ディアさんだった。


「俺が聞きてえ事は2点。まずはさっきも言ったがあいつの手助けをする理由、そして2点目はやけにフィアのやつに肩入れしている理由だ。お前、なんかフィアのことを庇いながら話してやがったろ?」

 

 ディアさんの質問を聞いた後、イーストさんは少し考え込むように視線を落とし、そして神妙な面持ちでこちらに目を向けーー


「そうですね。ではその質問に答える前に私の意見を言わせて貰います。私は・・・お父様を、あの男を失脚させたいと思っています」












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