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僕らは異世界で尸(しかばね)を越える  作者: 不二 充
第1部 少年期編
3/17

侵食

 薄暗い森の中で2人の青年とその足元に転がっている1人の少年。


 どういう訳かその少年は左手に木刀を持ち、額から血を流していた。


「どうしました"フィア"?まさかあれだけ大口を叩いておきながらこれで終わりですか?」


「いい加減諦めろよな・・・どうせ勝てやしねんだからよ」


 眼鏡を掛けた細身の男と格闘家のような体格の男も木刀片手に少年にそう言った。


(・・・クソ!コイツら本気でやってきやがって・・・頭いてぇし血も出てやがる)


 少年は一方的にやられているにも関わらず心の中で2人に悪態を吐きながら睨み続けていた。


「はぁ、よくこれだけやられておいてそんな目を向けられるものですね?もはや呆れを通り越して感心しますよ」


「まじですげえ目つきだな。コイツの辞書に反省という言葉はなんじゃねか?」


「これ以上この猛犬に構っていても無意味ですしそろそろ帰りましょう。」


(コイツら、オレが動けねぇからって好き勝手言いやがって・・・大体オレはやられて・・・なんか・・・)


 その時、少年の頭の中に見たことの無い映像が流れ込んできた。


(・・・なんだコレ?気持ちワリィ・・・どこだコレ?・・・視界が回る・・・)


「ーん?フィア?どうしました?」


「おいおいなんか痙攣してんぞ!大丈夫なのか?」


(ーーやめろ・・・もうこれ以上入ってくんな・・・オレがオレじゃなくなって・・・オレは・・・僕は・・・)


 頭部に強い衝撃が加わったことにより、蘇ったのだ・・・


 山野直気という存在が・・・

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーー目を覚ました時、最初に映ったのは見知らぬ天井だった。


 いや、知らなかった天井というべきか?

 

 上体を起こし部屋を見渡した僕は右手で額を抑え頭を抱えた。


「・・・頭を打った衝撃で記憶が戻るなんて。そんな簡単に戻ったら駄目だと思うんだけど・・・」


 あぁ、なんでこんなことになったんだ?それにこの体の記憶が休みなく流れてくる・・・くそ・・・気持ちが悪いし頭が痛い。


 1時間程経過した頃、ようやく記憶の流れが止まった。そこからしばらくは気持ち悪さで動けなかったが、ようやく落ち着いてきたことにより考えを纏める余裕が出来た。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 ーー流れ込んできた記憶とそこから推測される事をノートに纏めてみた。


 まず、記憶を取り戻した時に前世と現世の記憶が統合されるようだ。その為先程現世の記憶が流れ込んできたのだろう。


 ーーしかし、何故今この体にいるのは僕なんだ?意味が分からないしおかしいだろう。残るのであれば元の人格であるべきなのに


 ・・・と色々考えはしたが結局のところ今すぐ答えなんて出るものでは無い。


「ーー今これを考えても答えなんて出やしないな・・・仕方ない一旦保留だ」


 もやもやする気持ちを押さえつけ、僕は記憶の整理を再開した。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 この世界は僕の元いた世界とは違い、魔法が発展している世界らしい。


 そんな世界の中央に位置する国が、今いる"エンザム"だ。ここは中央ということもあり、様々な物資や情報、人材などが一同に集まるらしい。その為、貴族などは"エンザム"に腰を据えることが多いそうだ。


 そんな貴族達の中の1つが転生先である"ドロフォニア家"である。


 そしてそこの4男として生を受けたのがこの体の本来の主"フィア"という少年だ。


 僕になる前のフィアは乱暴な性格であり、同い年で彼に敵うものは居なかった。その為か、妙な自信と高すぎるプライドを兼ね備えており、その性格から年上と揉めることも少なくはなかったようだ。


 フィアに転生する前にのしてきた2人は兄弟であり、長男の"イースト"と次男の"ディア"だそうだ。


 年上にも連勝していたこの子はおそらく勘違いをしていたんだろう。2人に木刀での勝負を吹っかけただけではなく「オマエら程度2人掛かりでもオレの相手になんねえだろうよ」となんの根拠があったのかわからない言葉を並べて、結果があれである。


 この傷は自業自得だったのかよ・・・中学生の時に居たなぁこんな奴。同級生の中だけで幅利かせてればいいのに自分が偉くなったと勘違いして上級生にも舐めた態度で向かって行って・・・馬鹿だなぁ・・・


 余計なことを感想を思いつつ、記憶探りを再開した。


 先程魔法がある世界とはあったがすべての者が使うことができる訳ではなく、発現するのは殆どが貴族であり、魔力が発現した者は、16になる年に一つの学園に集められるそうだ。


 つい最近14歳になったフィアは2年後に学園"メンゼンリフト"に入学することとなる。因みに13歳の頃に魔力が発現している為、フィアもこの学園に入学が決まっている。


 魔法という唆られる要素になんだか少しわくわくしているとーー扉の開く音が聞こえ、兄達が入ってきた。


「ようやく目覚めましたか。急に痙攣し始めたもので驚きましたよ・・・全く、少しは貴族の4男としての自覚を持ったらどうですか?あと2年で学園に入学だというのにこれでは・・・」


「フィア。今なら許してやらんこともねえぞ!ただししっかりと反省の色が見えるような謝罪をするのならーー」


「すいませんでした!!」


「・・・・・・え?」


「・・・・・・はぁ?」


 謝ったら許してくれるなんて凄い優しい人だ!反省の色が見える謝罪だろ?ならば土下座しか無い!


 ・・・とすぐさま土下座をしたのだが、どうにも2人の反応が悪い。


 これ以上の反省って・・・お金?


 幾ら払えば許してくれるのだろうか?というかディアさんはともかくなんでイーストさんまでこんなに驚いてーー


 ・・・あ、そうか・・・やってしまった。


「・・・フィアが素直に謝った?嘘でしょう?それと何ですかそのポーズは?」


「んだよ今日は隕石でも降んのか?つかなんだよそれ祈祷か?」


 よくよく考えれば、いやよく考えずともフィアはこんな風に謝ったりするような人物じゃないんだ。そりゃくそ生意気な弟がいきなり謝り始めたらこんな反応にもなる。


 それにこの世界には土下座というものは無いらしく、急に祈祷をして奇妙に奇妙を重ねることになってしまった。


 ーーしかし言動には気をつけないとな。


 事情を説明した所で信じてもらえる訳無いし余計な心配をかけてしまうだけだ。


 僕は出来るだけフィアの真似をするよう心がけることにした。


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