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僕らは異世界で尸(しかばね)を越える  作者: 不二 充
第2部 学園編
16/17

必殺の一撃

「では早速君達にこの学園でのルールを説明しよう」


 それにしてもこの学年主任すごい厳ついな。歴戦の猛者みたいだ。


「まず、この学園では貴族階級というものは存在しない。親の立場を利用して幅を利かせるなどという言動は処罰の対象とする。今年は貴族以外の者も居るが、そこも例外なくだ。平民だからという理由で不条理を働くことは許さん」


 そう言われ、1部生徒がざわつき始めた。まぁ今までしてきた当たり前のことを今日からするなって言われてもってことなんだろうな。


「そして2点目、学園内での無闇な戦闘行為を禁ずる。3点目、諸先生方への敬意を忘れぬこと。まぁこれは"まともな"貴族の子であれば、大丈夫であろう。以上3点だ。もっとも、この他にも守るべきものはあるがそこは各々の判断に任せよう。家の顔に泥を塗りたいものは好きにすれば良い」


 そう言われ、騒がしかった生徒も一斉に静まり返った。


「ではこれより属性の確認、及び実力テストを行う」


「実力テスト・・・?なんで?」


「魔力操作が出来ぬものはそれでもいい。ここにいる30人のうち誰が出来るか出来ないか、そして出来るのであればどこまでなのかを知る為のテストだ。これの結果でどうこうするものではないから気軽に挑みたまえ」


 ーーあれ?もしかして聞こえてた?結構小さな声で言った筈だけど・・・


 その後、魔障石が運ばれてきた。


「では初めてもらうが、最初にやりたいものはいるか?」


「はい!私がやります!」


 最初に名乗りを挙げたのは・・・シルフィさん?!えっ、貴方魔力操作出来ないんじゃ・・・


「では、名前を言って始めたまえ」


「グラス・シルフィです!お願いします!」


 シルフィさんが魔力操作を始めた。しかし案の定うまく出来なかったみたいで、魔障石は一向に光を灯すことはなかった。


「あー、やっぱり駄目だったか。まぁ分かってたし良いけどね」


 少し悲しそうな顔をして何故か僕の方を指差しーー


「よし!じゃぁ次はナオキ君!君が行こう!」


「・・・ふぁい?僕?」


「どうせやらなきゃいけないんだし、流れで行っちゃおう!」


 ーーもしかしてシルフィさん、その流れを作るために最初に?・・・だとしたらその行為には報いないと。


「分かりました。やります!」


「・・・名前を」


「ナオキ・ブラーガンです。宜しくお願いします!」


 僕は魔障石に魔力を流し込み、光を灯した。


 すると先生は驚いた表情でーー


「ほう、君は魔力操作が出来るのか。なかなか優秀だな。ではこれを持って待っていたまえ」


 渡されたのは"可"と書かれた紙だった。シルフィさんが渡されなかったことを考えると、これを持っている者は実力テストを行うってことなのだろう。


「すごいね!全く疑ってた訳じゃないけど本当に魔力操作出来るなんて。すごい綺麗だったよ緑の光!」


 シルフィさんは笑いながらそう言ってくれた。悔しい気持ちもあるだろうに。


「大丈夫!僕だって半年くらい掛けてようやく出来たからさ!ほら、シルフィさんすごい明るいし優しいから光属性かも知れないよ!」


 僕は今思いつく限りのフォローをした。要らぬお世話だったかもしれないが、さっきの悲しそうな表情を見たら言わずにはいられなかった。


「ーーそうだね、ありがとう!でも別に私落ち込んでないよ?やっぱりかーって思っただけ」


「そう?・・・なら良いんだけど」


 そうこう言っているうちに、何人か終わったらしく、こちらに向かって何か喋りながら歩いてきた。紙を持っていなかったことから、この人たちもまだ出来ないんだろう。


 そんなことを思いながら残りの人達に目を向けた時、魔障石が光り出した。しかもその色は[金]つまり光属性ということだ。


 光属性!ものすごくレアな属性、割合で言えば10万人に1人くらいのレベルだ。そんな人が同級生なんてなんだかこっちまで誇らしくなる。


 どんな人が光だったのか気になり顔を見てみると、茶髪で高身長の超絶イケメンだった。特別な属性持ちで[貴族・高身長・カッコいい]の3Kとか凄すぎて怒りすら湧かない。


「あっ!あの人だよ!平民出身の男の子」


 1K消えた。ーーじゃなくて、あの人が標的の・・・確か名前はフラーク・ミスタル。平民出身でありながら魔力を発現・・・しかも光属性。元々の高い魔力に加え努力を欠かさないらしい。平民ということ以外は容姿内面どれを取っても非の打ち所が無い完璧超人だ。


 ミスタル君は先生から紙を貰い、こちらへやってきた。


「こんにちは。フラーク・ミスタルと申します。平民出身故、至らぬ点がございますでしょうがご教授お願いします」


 めちゃめちゃ丁寧だなこの人・・・!


「あの、そんなに固くしなくて良いですよ。先生も身分の違いはこの学園では無しっていってましたし」


「そうそう!私()もタメ口でいくからさ、フラーク君も気軽に行こうよ!あっ!私グラス・シルフィ、グラスって呼んでね!」


「えっと・・・宜しくお願いしますグラスさん!それと・・・」


「あぁごめんなさい。ナオキ・ブラーガンです!宜しくお願いします!」


「ーーナオキ・・・ナオキさんですか、宜しくお願いします!」


「2人ともかったーい!タメ口でいいのに・・・。まぁゆっくりでいっか」


 そうこう話している間に、どうやら30人分確かめ終わったようだ。30人の内属性が確認できたのはどうやら僕とミスタル君だけだったようだ。本当に入学時点で魔力操作が出来る人は少ないんだな。改めてイースト兄さんに英才教育をしてもらったのだと実感した。


「これで全員終わりだな。ではこれから2人の実力テストを行う」


 そういえばテストって何をするんだろう?何かと戦わされるのか?


 先生が指示をし、何やら的のような立て札を運んできた。


「この的は魔力をぶつけることで数値が刻印されるようになっている。因みに例年10〜15程度だな」


「あの、魔力をぶつけるってどうすれば・・・?」


 ミスタル君が質問した。


「やり方は自由だ。先程魔障石に魔力を流し込むのでも良い。もし出来るのであれば属性を使った魔法攻撃でも構わん」


「ーーなる程、分かりました。僕からで良いですか?」


「あぁ、ではフラーク・ミスタル君、始めたまえ」


 ミスタル君が的の前に立ち、魔力を込め始めた。そして的に刻印された数値はーー"32"つまり例年の新入生と比べ2倍以上の魔力ということだ。


「ふぅ、終わりました。次はナオキさんの番ですよ、お願いします」


 正直先にやっておきたかったんだけど、しょうがないか。ーーよし!目立つ為にも1つ魔法でも使ってみるか!


「ではナオキ・ブラーガン、始めたまえ」


 僕は深呼吸をし、気持ちを落ち着けた。雷を手元で渦状に変化させ、的に向かって打ち放つ一撃ーー「雷撃の渦(フールミネ)!!」


 魔法は的に直撃し、数値が刻印された。結果はーー


「馬鹿な・・・!"48"だと!しかも属性を使った魔法攻撃など入学時点で出来るはずが・・・」


 やはり魔法を使える人はいなかったらしく、その場にいた全員が驚愕、というかドン引きしてた。目立つということで言えば掴みはバッチリだろう。ただこれでは友情とか絆ってよりも畏怖って感じになりそうだな、どうしよう。


 そうやって困っていると、いつものあの子ともう1人だけが近づいてきてくれた。


「ねえねえ!今の何、どうやったの?!本当に凄かった私感動しちゃった!!」


 すっごい早口!


「ええ、本当に凄かったですよ!今のが魔法ってやつなんですね。初めて見ました!」


 2人ともこんな空気の中僕に喋り掛けてくれるなんてほんといい人達だな・・・!


「まぁ2年くらい掛けて特訓したので、そう言ってもらえるとすごい嬉しいですよ!ありがとうございます!」


 2人には素直な気持ちをぶつけ、その後少し談笑しあった。初めて友達が出来たかもしれない。


「魔法習得済みの者、そして光属性持ち、今年は優秀なのが多いな。私達としては喜ばしいことだが・・・他の奴らにとっては面白く無いだろうな」


 先生の予想通り、僕ら3人以外の生徒からは口々に不満が漏れ出していた。


「何よあれ、あんなの居たら私らいらないじゃん」


「クソが!所詮ブラーガン家のくせによ!」


「・・・見てろよ、ナオキ・ブラーガン」


 僕は談笑に夢中で聞こえていなかった。いや、聞こうとしなかった・・・同級生の不満の声をーー






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