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僕らは異世界で尸(しかばね)を越える  作者: 不二 充
第1部 少年期編
10/17

自責の念

 先日、2人から出されていた目標をクリアした僕は、今日から第2段階に進むことになった。


 自分の属性を知れたこと、体も大分完成して来たこともすごく嬉しいのだが、それよりも今は目標を達成出来たことの喜びが僕の中で渦巻いている。


 前世ではまともに何かを成し遂げられたことがない僕からすればこの成功体験というのはとても貴重な物だ。


 しばらくしてイーストさんが授業の為にやってきた。


「おはようございます、フィア!今日も頑張りましょう。」


 いつも通り挨拶をし、席に着く。そしてイーストさんの授業が始まった。


「先日貴方が魔障石に光を灯せたことにより、次の単元に進むこととなりました。以前にも言いましたが今度はもう半年掛けて魔力量のアップに努めます。質問はありますか?」


 魔力量のアップってのも気になるけどそれはその単元中に説明されそうだから置いておこう。であれば前から気になってたーー


「あの、各属性ごとにも枝分かれするって以前おっしゃってましたけど、それってどのように調べられるんですか?」


「そうですね。それは最後の1年で纏めて話そうかとも思っていましたが、まぁ今でもいいでしょう。」


「まず枝分かれについてですが、要するに同じ属性でも出来ることは微妙に違うということです。この違いを"能力と言います」


 前ディアさんに能力って言った時、属性って意味で言ってたんだけど、なんかうまいこと話が成立しちゃってたんだな。それでなにもつっこまれることもなく話が進んじゃったのか。


「例えば火属性。この属性は文字通り火に関するものですが、火を吐けるようになる能力であったり、物を触れることなく燃やす能力、そしてディアのように火を纏う能力などがあります。どれも近いようで微妙に違うでしょう?」


「・・・なる程、」


「そしてこの能力ですが、魔力を高め体に循環させることで脳と体がその魔力の特徴を覚え、自然とどんな能力かが分かるんですよ」


 それで次の単元は魔力量の向上だったんだな。にしても魔力を循環させることで能力が分かるって、魔障石以上にファンタジーだ。


「ありがとうございます!よく分かりました」


「はい!ーーでは、本題に戻りましょう。まず私も学生時代1番疑問だった箇所の説明をしましょうか」


 先輩が疑問に感じていたら箇所を説明してくれるのはとてもありがたい!解決しているのならなおのことだ。


「それは、魔力量の向上の仕方です。例えば筋肉なんかは筋トレをすれば良い。これは誰でも知っていることですし、結果が目に見えてわかりやすいです」


「しかし魔力は違います。属性に変換させるまで目には見えませんし、成長も感じづらいです。そして最大の難点は上げ方が分からない所ですね。筋トレは大体でやっても一応筋肉は付きますが、魔力はそうもいかないのです」


 分かってはいたけど結構ややこしいんだな魔法って。転生するまでは魔法って杖1つでなんでも簡単に出来るんだと思ってた。やっぱり簡単に習得できるものなんてそうそうないもんなんだな、どこの世界でも。


「じゃあどうやって魔力を上げるんですか?」


「それはですね、魔力が切れるまで放出と循環を同時に行うんです。どちらも既に使えますよね。放出は魔障石に使いましたし、循環は魔力操作をして放出も安定もさせないようにしたバージョンです」


「あの・・・同時ってどうやるんですか?やり方教わって無いんですが。それと交互とかじゃダメなんですか?」


「いうは易しと言いますか、やり方は至ってシンプルです。手に一定量魔力を移動させ、放出させます。そして減った分だけ供給するんです。そしてそれと同時に循環させるんですよ。例えば、流れる1本の川をある地点、今の場合だと腕の辺りで分割し、もう1つの流れる場所を作ってやるイメージですね。」


 ほぉ、難しいことをすごくシンプル言ったな。確かにそれだけ聞くとなんか簡単そうに感じるけども実際にやるってなったらめちゃめちゃ難しいと思う。


「これが同時のやり方です。そして理由ですが、このやり方が1番精神と魔力に負担が掛かり、酷使出来るからです。筋トレも痛めつけて筋肉をつけているでしょう?それと近しい考え方ですかね」


「まぁ理屈は分かりましたけど凄い難しそうですね」


「まぁ確かにそうですね。しかし魔力を別々の場所に操作するというのは実戦でも必要になってくるスキルです。武器と足を同時に、とかです。なので出来るようになって損は1つも無いんですよ」


 ーーすごく難しい技能なんだろう。すぐに出来るイメージはできない。でも、最初は魔力操作だってうまく出来なかったけど、今は出来るようになった。


 前世では、ものすごく頑張っていても、どこか頭の隅で"どうせ無理だ"という考えが浮かんでしまっていたが、今の僕には成功体験がある。例えそれが他人の力だったとしても自信は貰えた。そのおかげで、どんな難題でも乗り越えてやろうって気になれたんだ。


「ーー頑張ります!イーストさん達をびっくりさせられるくらい魔力を高めて高めて、高めまくってやりますよ!」 


「はい、一緒に頑張りましょう!・・・ほんと、この半年で貴方は変わりましたね。心身共に殆ど別人ですよ」


 ・・・殆ど別人か、実際外見以外は別人なのだがーー


 今までにも何回か考えたことはあったけど、2人にはちゃんと説明した方がいいのかな?でもなんて?"実は僕貴方達の弟の体をのっとって半年過ごしてました"って言うの?信じるかそれ?仮に信じたら信じたでどんな反応を示すか分からない。


 もし糾弾されたら?・・・いや、本来されて然るべきなんだよ。勝手に自分の弟の体を取られている訳だし、騙してもいる。この人達に優しい目を向けられる度に嬉しさと後ろめたさが両立してしまう。


 ならばいっそのこと全て告白して楽になる?・・・だめだ。そんなの自分勝手すぎるし、大体今それを言ってしまうとイーストさんの目的はどうなる?それに協力しているディアさんの想いは?やはり今言うべきじゃ無い。せめて目的を完遂するまではこのままでいよう。


 ーーそういえばイーストさんはなんであの父親を失脚させたいんだろう?あんな人は当主にしておけない!とか?本の話だと自分が当主になる為とかはよくあるけどイーストさんに限ってそんな感じはしないし・・・


「あの・・・流れ的に全く関係ないんですが1つ良いですか?」


「ん?はい、別に構いませんが?」


「イーストさんが父親(あの人)を失脚させたい理由ってなんなんですか?何かきっかけとか?」


 その質問をした瞬間イーストさんの表情が強張った。


「ッ!・・・・・・話せません。というのは、協力をお願いしている立場としていけませんよね」


「質問しといてなんですけどそんな無理に答えなくても良いですよ?」


「いえ、答えますよ。貴方にもそろそろ知って置いて欲しい。私の怒りを。あの子の無念を」


 そしてその後、イーストさんの口から、耳を塞ぎたくなるような話が続くこととなるーー







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