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ノットギルティ  作者: 雨寄乃至
9/9

橋本美咲7

 美咲ちゃんの華麗な舞は呆気なく終幕を迎えた。


 それから30分ほど練習に励み、各々が帰り支度を終えた。そして美咲ちゃんは俺の元にやってきた。


「えへへ、負けちゃった」

 情けない、といった笑みを浮かべながら続けた。


「一真くんの前でカッコつけるつもりだったのに」

 あぁ、俺を意識してくれたのかと顔が綻ぶ。


「あんな異様な……いや、神業にはマジでびびったよ。というか危ないって。見てるこっちがヒヤヒヤしたよ」

「心配ご無用! 私は死なないわ!」

 ガッツポーズを掲げた腕は華奢であった。体の一部のように竹刀を振り回しているのが信じがたい。


「今日も疲れたぁ。なんだかお腹すいちゃったなぁ」

 こ、これはもしかしてチャンスだろうか。心臓の音が大きくなる。


「じ、じゃあさ、どうです? ご飯」

「ガッテン承知の助よ!」

 わかってんじゃん、といった具合で秒で反応してきた。俺の緊張を返してくれ。


 ということで美咲ちゃんが好きだという、大学を出てすぐの中華料理屋に入った。片言のウェイターが忙しそうにあっちこっちを駆け巡っている。


 ラーメン、餃子、炒飯、ニラレバ炒め。細い割にずいぶん食べる子である。それらを飢えた獣の如くあっという間に平らげてしまった。


 俺はそんなに食べたら戻してしまうだろう。情けないが、俺はご飯と野菜は注文しなかった。


 残りの餃子と格闘していると、

 「そんなんじゃすぐまた何か食べたくなっちゃうじゃないの。いっぱい食べないと大きくなれないわよ」

 おばあちゃんみたいなこと言うなよ。正直もう何も入らない。


「むしろよくそんなに食べられるもんだね、スラッとしてるから驚きです」

「やだぁ、セクハラー!」

 冗談まじりの声で答えたが、しかしその表情はだんだんと曇っていった。

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