橋本美咲6
講義は上の空であった。七味ちゃんに怒られないようにちゃんとノートだけはとっているが。
あれから1週間ほど、俺は足繁く武道館へ通っていた。練習後の美咲ちゃんを褒めて舞い上がってる姿を見るのが日課になっていた。
今日も俺はせっせと武道場に向かい、2階のギャラリーでひっそりと美咲ちゃんの応援をしている。そろそろ不審者に思われないだろうかと不安がよぎる。
美咲ちゃんは応援してね、なんて言っていたが今日もストイックに脇目も振らず練習に励んでいた。
ただの社交辞令だったんじゃないかと悲しくなってきた。
そして、美咲ちゃんはやっぱり今日も強い。
試合形式の練習をしているようだ。遠目から見ても分かるが、明らかに相手の行動を読んでいるかのように一手早く動く。
ひょっとして超能力者だからあんなに強いのではないだろうか。それじゃあ相手は為す術もないじゃないか、などと想像を巡らしていると、こちらの存在に気付いて手を振ってくれた。
すると先輩部員に寄って行き、何かを話している。
始まったのは練習試合であった。しかし異様な光景である。
美咲ちゃんは中央におり、四隅に部員が位置している。
「初めっ!」
妙な試合が開始した。
四隅から一斉に襲いかかっている。
がしかし、美咲ちゃんは避ける、受け流す。
四方からの攻撃を華麗に見切っている。
そして、「ツキィッ!」一人仕留める。「テェッ!」また一人と仕留めていく。
どうなってんだ。漫画か何かか?
目まぐるしいスピードで三人倒してしまった。
最後の一人。両者は密着している。
すると、押し負けた美咲ちゃんは体勢を崩す。
「メッエェェェェンッ!」
あっ、負けた。