橋本美咲1
体が痛い。昨日は頑張り過ぎた。
走ったり、大声出したり。
まあいい。もうすぐ夏休みだ。
存分にこの傷を癒してやる。
というかこうして毎日椅子に座って講義を受け続け、存分に癒され過ぎているのが体力の衰えの原因なのではないだろうか、と。
「おつかれ悠真くん。お食事でもいかが?」
結月ちゃんではないか!俺の肉体に活力がみなぎる。
「おつかれです。この講義出てたんですね。しかし、さすがナイスなタイミングです! ちょうど小腹が空いてきたもので!」
軽くお茶するにはいい時間である。それ以上に楽しい時間を過ごせそうであるのは内緒である。
「よし! 決まりね! 行きましょ!」
素敵な笑顔である。生きてて良かった。
ごった返すほどではないが、それでもなかなかの人数が学食に集っている。それぞれが自分達の空間に夢中になっている。
俺はコーラを注文。自販機よりも安くてとてもお得である。
結月ちゃんはカレーを注文したようだ。こんなクソ暑い日によく食べられるもんだ。またいつもの激辛だろうか。
「今日は七味ちゃん、一緒じゃないんだ?」
なんで七味ちゃんなんだ。
「多分パチンコ頑張ってると思うよ」
「ふふ、今を生きてるのね」
「そんなカッコいい感じとはかけ離れてると思いますけど。」
「まぁまぁ悠真くん。趣味も大事なことじゃない?今日を充実してくれるもの」
あの堕落した空間にいて充実感を得られるものなのだろうか?と言おうとしたが、心にしまった。
「でもよく講義も出ないのに単位取れてるものね。あの子は天才なのかしら?」
「違う。俺がこうして頑張ってるおかげです。あいつは俺が必死に書き留めた90分の努力をたった5分コピー機の前にいるだけで済ましているんです」
「なによ、運命共同体じゃない。素敵!」
結月ちゃんは両手で顔を隠し、隙間からこちらを覗いている。
なんかおかしいぞ?この子の頭の中はどうなってるんだ?
「ふふ、君はやっぱり優しい人だね!」
七味ちゃん。感謝する。俺の好感度を上げるのに一役買ってくれたのは素晴らしい功績だ。
「ありがとう。だけどね、俺はもっとキリッと強い人間でもありたいんです」
ただの情けない男に思われないためのカモフラージュである。情けない。
「キリッとねぇ。そうだ! ちょうどそうな一真くんにいい刺激を与えてくれそうなものがあるよ!」
刺激。俺は妙な期待に胸が膨らむ。